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力を増す国、窮地の国

じい、例の件どうなっておる?もう召還要請から三日は経っておるぞ?」


本人は涼しげに凛とした表情で努めて冷静に話しているつもりでも、

声に少々の怒気が混じり焦りから無意識に漏れ出る霊圧は

ピリピリと張詰めた空気を周りに放っている。

彼女に付き従う女中や家臣達は、不興を買うまいと

内心冷や汗をかきながら畳の一点を見つめ事の顛末を見守る。


あれから三か月─

彼女の権能によって一時は敵国を退けたものの未だ一触即発の緊張状態にある。

の国は近年急速に力をつけ

強大な軍事力で近隣諸国を次々と飲み込み、今まで共和国だった国は

『聖ヴァレンタイン大帝国』と名乗り、資源に富んだこの国を

虎視眈々と狙っていた。


過去三度に渡る帝国の猛攻にも耐えてきたのはひとえに彼女の権能である

氷陣縛鎖ひょうじんばくさの瞳術」によって成し得て来たものである。

視界に映った全ての物質を凍結し破壊せしめる彼女の一族に伝わる最強の瞳。

だがそんな最強の瞳術も万能ではない。

一生に使用できるのは3度まで、それ以上使用すれば命を落とす諸刃の剣なのだ。

それをすでに三度使い果たしてしまっていた。


そして今またこの国を攻略しようと四度目の派兵に備えて大軍勢が

集結しつつあると情報が入っていた。

まさに絶体絶命の窮地に立たされていた。

その対策として姫はあるとある人物二名を召還していたのだ。


爺と呼ばれた大蝦蟇オオガマ族の家老である”天元”は胃をキリキリと

痛ませていた。

国の行く末を案じ二名の召還を彼女に進言したのは彼であったがその肝心の

二名の消息がつかめずにいたのだ。

彼女の怒りを一心に受け手拭いで額の油汗を拭きながら口を開く。


「はい、恐れながら申し上げます。現在両名は消息不明ですが仙國に捜索

を依頼しておりますのですぐに・・・」


「情報屋の仙國か・・・、ふん。それですぐ見つかればいいがのう。

どこで何をしているのやら、あの馬鹿者は」


彼女はふーーっと鼻で大きくため息を吐くと、ひじ掛けに乗せていた

手をすっと返し指でクイクイと合図をする。

すると彼女の後ろの陰に控えていた側仕えの若い小姓が

雅な細工が施されている鮮やかな朱色の桐箱から、

豪奢な金色の装飾のある煙管キセルを取り出し彼女の陶器のような

美しい指にそっと乗せ、滑らかな造作で火を点ける。


彼女は手慣れた様子で目を細めながら、煙管の吸い口から煙をスーっと

口に含むと優雅な動作で天井めがけてふぅーーと煙を吐き出した。

彼女が数度その動作を繰り返すと、大座敷の中は彼女の吐き出す煙の

独特の甘ったるい香りに包まれていく。


煙を吸い終わった彼女が煙管を逆にし灰を落とす為に金属製の灰皿に、

煙管を打ち付けるとカーーンと甲高い音が室内に響いた。

息を殺していた家臣や女中達はその音に思わずビクリと肩を揺らす。

そのタイミングで大座敷の奥の襖の方から慌ただしい足音が謁見の間に

近づいてくる。


「失礼致します!殿下に火急にお知らせしたい事が御座います!お目通りを」


その声を受けて女中2人が速やかにその襖の前に移動し主人の声を待つ。

高座に鎮座している姫は、女中らの方を一瞥しコクリと軽く頷いてから

「良い。通せ」と声を掛けた。

女中が襖を開けるとそこには白い狐の面を付けた黒装束の男が一人。

─諜報部『久世一門』の一人”風間秋水”だ。


「風間か・・・。火急の件とはなんだ?申せ」

「はい・・・ビザンツが・・・落ちました」


不意の報告に謁見の間にざわめきが広がる。

ビザンツ公国、この東鳳八岐台神聖国の一番の友好国。

その友好国まで敵国に落ちたとなればこの国とって大きな損失になる。


「まさかビザンツまで落ちたか・・・もう一刻の猶予も無いな」

「はい、ビザンツ公国が落ちたとなれば、そこを足掛かりに我が国に再度

侵攻を開始するまで時間の問題となりましょう」


「このまま二人を待っていては後手に回るか・・・・。今すぐ腕の立つ

将達を集めておけ。打って出るぞ」

「承知いたしました」


「爺、天帝に謁見許可の申請を」

「てっ!?・・・ぎ、御意」


姫はそう指示を出すと立ち上がり謁見の間を後にする。

彼女は強大な敵国を相手にこの劣勢を覆す手段をこの三か月間ずっと

考えていた。だが何度考えても未だ答えは見いだせないでいた。

覆せるとしたら帝国が想像もしなかったイレギュラー・・・。

それしかない。

そのイレギュラーになりえるのが召還している二名なのだが・・・。

未だ見つからないでいた。

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