不機嫌な姫殿下
「また凝りもせずよぅ集まったものじゃのぅ、卑劣な侵略者ども。反吐が出るわ」
巨大な城の天守閣よりは眼窩に無数に集まった敵の大軍勢、その数三万。
大船団を率いてこの国の海岸付近まで押し寄せ今にも上陸しそうだった。
緋色の瞳にて望むその軍勢を前に姫は肩にかけた上着を翻かせ
袖から長尺の煙管を取り出すと火が立ち昇る。
彼女は煙管を口に含むとプカリと煙を吸い込み不機嫌そうに紫煙を燻らせる。
「爺、戦況はどうなっておる?」
そう姫が声を掛けると後ろに控えていた側仕え達を押しのけて長い白髭を蓄えた
蛙の顔をした老人が前に出てくる。
大蝦蟇族の大家老である”天元和左之助”だ。
「少々厳しいかと。水戦は奴らの得意とする所故」
「はっだろうね・・・私がやる。射線上の兵は全て下がらせよ!」
「よろしいのですか?これ以上御力を揮えば・・・・」
「二度は言わんぞ」
「・・・・御意」
姫は城下の兵が安全圏に撤退したのを確認するとフーっと深く息を吐く。
彼女は仁王立ちしながら目を閉じ集中する。
霊気の高まりと同時に場の空気が震える。
カッっと眼を見開くと彼女の瞳は金色に輝き出し
凄まじい衝撃波が生まれ船上にいた敵兵達は全員漏れなく凍結し
粉々に砕け散った。
これにより敵の大船団は退けられ極東の島国である『東鳳八岐大神聖国』は
ひと時の平和を手に入れることになる。彼女の代償と引き換えに。




