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第23話 あの日



 ――――9ヶ月前。




 朝起きると、リビングのテーブルの上には『がんばれ!さと美!』と書かれたお母さんの書き置きと朝ごはんがあった。

 


 「……いただきます」



 その日は、決して成績が優秀とは言えない私が、唯一最終まで残れた会社の面接の日だった。



 おにぎり屋さんのパートに向かう前に寒いキッチンで早朝からお母さんが作ってくれたゲン担ぎの朝食を、手を合わせてから一人有り難く頂いた。



 早めに起きて、時間に余裕はたっぷりとあった。食後には緊張で強張った心を落ち着かせるため、ハーブティーを飲んでリラックスをした。

 十分にゆったりとした時間を過ごした後、リクルートスーツに着替え、控えめにメイクをして、予定の時間ぴったりに気合いを入れて玄関へ向かい、そこで私はえらい事態を目撃した。



 前日の夜から準備して出していた、私が持ってるたった一つの革靴が、まるで野獣に食い荒らされたように無残な姿になって玄関の隅と隅にはじき飛ばされていたのだった。



「嘘でしょ……」



 犯人はすぐに分かった。一カ月前にわが家にやって来たばかりの生後4カ月の子犬、ポメラニアンのププだ。もしププじゃないならお父さんかお母さんが私の革靴を食いちぎったことになる。だから絶対にププしかいない。



 ツクツクツク……とフローリングをちっちゃな爪が小刻みに叩く音が聞こえて振り向くと、玄関で絶望して座り込む私の後ろで、ププは舌を出して嬉しそうに笑っていた。



「もぉー!!ププ!!」



 怒り口調で声を荒げたのに、そんな私に対して黒い瞳をキラキラ輝かせ、何か楽しいことでも期待してるように無垢な笑顔を向けてくる。私はイチコロでやられてしまった。



「……そうだね、ププは悪くない。出しといた私が悪いよね」



 結局、可愛いは無敵だ。

 人生を左右しかねないこんな事態すら、可愛いさですべて許される。

 


 とにかくゆっくりしてる時間はない。面接官の前に座ってるであろう2時間後までに、代わりの革靴を調達しなきゃいけないんだから。



 時間は余るほどあったはずなのに、突然に状況が変わった。ついさっきまでゆったりとハーブティー片手にくつろいでいた自分をタイムマシーンに乗ってハリセンではたきに行きたいと思った。



 私はいつもの履き慣れたスニーカーを手に取った。



「仕方ないか……」


 

 スーツにスニーカーは違和感が半端ないけど、色がオール黒なのがせめてもの救いだった。とりあえずこれで駅まで行って、駅にある靴屋さんで新しい革靴を買って履き替える……その作戦しかなかった。



 私の住む町は、周りに家か畑しかないような田舎町で、最寄りの駅まではバスで20分以上かかる。だけど、幸いバス停は家から徒歩3分。ちゃんとバスの時間は網羅してる。予定通りのバスに乗れば作戦通りに事が運ぶはず。



「行ってくるからね?いい子にしててね」



 玄関でいまだ笑い続けているププに手を振ってから扉を閉めた。しばらく歩いていると、あろうことか私が乗る予定のバスが右側の車道から私を追い抜いていった。



 えっ?!どうして!?

 まだ時間じゃないはずでしょ?!



 訳は分からないけどとにかく走るしかなかった。バス停まではあと200m弱。バスは停車のための減速を始めていた。

 大丈夫!この距離ならギリギリ間に合う!そう信じて一歩目を踏み出したその時、



 「わぁっ!!」



 この一年、一度もほどけたことのなかったスニーカーの靴ひもがほどけ、まんまと自分で踏んで転びそうになった。


 

 まだ大丈夫、焦らないで落ち着こう……

 こんなのフラグなんかじゃないから!



 すんでのところで無様な姿になるのを回避し、そう自分に言い聞かせながら急いで靴ひもを結んだ。きつくきつく結び、あきらめずにもう一度走り出したその瞬間、バスの扉は閉まり、呆然とする私を置きざりにして走り去っていった。



「どうして……」



 腕時計の針は発車時刻より5分も前を指している。まさか……と思い、スマホを取り出した。すると、数年前に自分で買ったお気に入りのヴィンテージの腕時計は、実際よりも7分遅い時刻をゆったりと刻んでいた。



 つい数日前にズレてたから電池交換したばっかりだったのに!……てことは、電池の問題じゃなくて、あの時からすでに壊れてたってこと?!



 革靴に続くトラブルに冷や汗が出始めた。

 比較的本数が多い午前とは言えやっぱり田舎。次のバスまではまた15分は待たなくちゃいけなかった。



「どうしよう……」



 私は、絶対に来るはずのない次のバスの姿を探して道の先を見つめていた。すると、バスではないけど、一台のタクシーが走ってくるのが見えた。



「タクシーだっ!」



 一瞬喜んだけど、この辺りでタクシーが目的もなく走っているわけがない。どうせどこかの誰かが呼んだ『迎車』だろうと目を凝らしてみると、表示は間違いなく『空車』になっていた。私はすかさずその場で飛び跳ねてそのタクシーを止めた。



 ほどなくして空いた後ろのドアから飛び込むように乗り込み、「すいません!駅まで急いでもらえますか?!」と運転席に向かって叫んだ。



「はーい!かしこまりましたー!」



 運転手さんは恰幅のいい年配の女の人だった。



「こんなところでお客さんが乗ってくると思わなかったわ〜」


「私も、こんなところでタクシーが捕まるなんて思わなかったです!ほんとよかった……」


「前のお客さんをちょうどこの先のお家の前で降ろしてね。お嬢ちゃんは就活かなんか?」


「はい、実は今日これから面接なんです……」


「そりゃ大変!そんなに焦って寝坊でもしちゃったの?」


「いえ、ちゃんと起きて時間に余裕はあったんですけど、用意してた革靴が飼い犬に噛まれてることに出る直前に気づいて……」



 私がそう言ったところで車はちょうど赤信号で止まり、運転手のやさしそうなおばさんが振り返って私のスニーカーを見た。



「あらら!それは困ったねぇ……靴、どうするの?」


「駅にある靴屋さんで買って履き替えるつもりです」


「駅の靴屋さん?!あそこは確か11時開店よ?まだ9時過ぎだしこの時間じゃシャッターも空いてないんじゃないかな」


「えーーーー!!!?」



 ……詰んだ。

 これが世に言う『詰み』というやつか……



 そりゃそうだ、考えてみればこんな朝早くから靴を買いに来る人なんてそういるもんじゃない……。



 ついに言葉をなくして現実逃避し、窓の外の遠くの山脈を眺めていた。



「靴のサイズはいくつ?」



 突然おばさんから、タクシーの運転手さんがまず乗客に聞くことのない質問をされた。



「23.5です」


「平均だね。じゃあきっと大丈夫じゃないかな!」


「え?」


「私、元々高校の教師やってたんだけどね、この先に元教え子の子が住んでるのよ。その子、今や4人姉妹のお母さんなんだわ。みんなちょうど年頃の子たちだから、一足くらいあなたに合う革靴があると思う。借りてくるからちょっと待っててよ!」


「えっ!!そんな悪いですよ!しかもこんな朝っぱらからお宅を訪ねるなんて……」


「大丈夫、大丈夫!その子、家の裏でおそば屋さんやってるの。この時間はもう店で開店準備してるから、そっち行ってみるから」



 見ず知らずの人に申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、もうそこにすがるしかないと思った。



「……あの、それじゃあ、ご迷惑は承知の上ですが、どうかよろしくお願いしますっ!!」


「ははは!お嬢ちゃん、素直でいい子だね!元気いっぱいだし、おばさんが社長さんだったら絶対採用するよ!あきらめないでがんばって!」


「……ありがとうございます」



 朝から怒涛の不運続きだったけど、地獄に仏とはこのことか。おばさんの優しい言葉が胸にじんわりと染みた。

 短い髪にきつめのパーマをかけたおばさんが、見れば見るほど神々しい大仏様に見えてきた。



 そうこうしてるうちにだいぶ駅へと近づき、広い車道の両側には一棟立ちの飲食店が目立ち始めていった。



「ここ!ここ!ちょっと待っててね!」



 唐突にタクシーが止まり、おばさんは運転席から出て行った。そしてお店の中へと消えてからわずか1分、おばさんと例の教え子さんと思われるもう一人の女の人が一緒に店から出てきた。

 いかにもそば職人らしい服を着たその人が急いでお店の裏へと回ると、おばさんもその後をたどたどしい足取りで追っていった。

 そこからまたほんの3分ほどですぐに二人は戻ってきた。軽く手を振り合って解散し、おばさんがこちらに向かって小走りをすると、私は自分で扉を開けてタクシーを降りた。



「あったよ!」



 そう言いながら、おばさんは右手に持ったシンプルなデザインの黒い革靴を私の足元に置いてくれた。



「履いてみて!」


「ありがとうございます!!」



 その場でスニーカーを雑に脱ぎ、数えるほどしか履いていないような新品さながらの革靴に足を差し込む。



「サイズどお?足痛くない?」


「はい!超絶ぴったりです!」


「よかった!よかった!」



 サイズの確認が終わると、私たちは再び急いでタクシーに乗り込んだ。



「本当に、本当に有り難うございます!!このご恩は一生忘れません……!!」


「大げさだよ〜!困った時はお互い様なんだから。ね!」


「本当に、お陰様で首の皮がつながりました……。そうだ!このお靴お返しする時はどうしたらいいですか?」


「そうだねぇ……お嬢ちゃんはお家近くなの?」


「はい。普段はバスでこのへんよく通ってます」


「だったらさ、さっきのお店に直接返しに行けるかな?急がなくていいって言ってたから、都合のいい時でいつでもいいから」


「分かりました!」




***




 おばさんと元教え子さんのおかげで、私は最大のピンチを乗り切った。

 無事に時間にも間に合い、何もなかったかのように面接を受けることが出来た。



 ……それなのに、最後の最後、面接官に『改めて、うちの会社で働きたい熱意を話して下さい』と聞かれた時、私は思いっきり言葉に詰まってしまった。



 ここを乗り切ればほぼ内定は確実だった。今までシュミレーションしてきたように答えればいいだけだったのに、どうしても声にならなかった。



 見ず知らずの私を無償で助けて下さったお二人には合わす顔がなかったし、両親にも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 だけど、今は一人になりたいと落ち込みながら、それでもなぜか、今すぐにこの靴を返しに行くべきだという強い衝動が内側から湧いてきて、私はその足でおそば屋さんに向かった。



 時間的にも今行けば、ちょうど昼と夜の間の休憩時間に当たりそうで、営業に迷惑がかからないと思った。



 つい数時間前、やる気に満ち満ちて出陣した駅へ舞い戻ると、皮肉にも駅前には待ち構えるようにバスが止まっていた。そこから3つ目のバス停が、おそば屋さんの真向かいだった。



 横断歩道を渡ってお店の目の前まで行く。 一見おそば屋さんには見えない、この町では浮いてしまうくらいにモダンな和の作りの建物。入口の扉の上には『野々屋(ののや)』という屋号の看板が掲げられていた。

 立てかけてあった『準備中』の札を横目で見ながら、人の気配を感じない店内へとお邪魔した。



「すみませーん!」



 高い天井の広々とした店の奥へ大きな声で呼びかけると、すぐにさっきの女の人が出てきた。



「あっ、ごめんなさい!今の時間は準備中なんですよ〜」


「あの!お忙しいところ申し訳ありません!私、今朝靴を借りた者で、伊吹さと美と言います!」



 私が頭を下げると、その人は接客モードから通常モードへとギアチェンジした。



「あ〜!今朝のね!どうも〜、野中晴美です。って、こんなに早く返しに来てくれたんだ?」



 顔を上げてよくよく対面してみてびっくりした。遠目からじゃ分からなかったけど、4人の年頃の娘さんがいるという野中さんは、想像以上に若かった。てっきり40代半ばくらいかと思っていたけど、どう見ても見た感じ30代後半だ。



 この若さで4人の娘を育て上げ、そばまで打つなんて……と内心、勝手に感銘を受けていた。



「お陰様で無事に面接を受けることが出来ました!本当に有り難うございました!それと、これつまらないものですが……」



 私は、靴と一緒に駅前で買ってきた菓子折りを差し出した。



「中古の革靴貸しただけでこんなことわざわざいいのにー!」


「いえ!むしろほとんど新品でした!履かせてもらうのためらうくらいで……。何かさせてもらわないと気持ちが収まらないので、どうか受け取って下さい」


「……本当にもらっちゃっていいの?」


「もちろんです!あのそれと、貸して下さった娘さまにも、くれぐれもお礼をお伝え下さい」


「伊吹ちゃん、若いのにかなりしっかりしてるね?うちの娘たちとは大違いだわ。こちらこそ本当にありがとう!お菓子までもらって、娘たちも喜ぶよ!」



 あのおばさんの教え子さんだけあって、野中さんからも同じくほっこりとするような人柄を感じた。



「それで面接はどうだった?上手くいった?」


「それが……ちょっとミスしちゃいました……」


「そっかぁ……」


「運転手さんと野中さんには本当に申し訳ないです……」


「なんでよ?!全然そんなことないよ?」


「でも……見ず知らずの私にここまで協力して下さったのに……」


「私なんか本当に何もしてないし、先生だってそう思ってるはずだから、私たちのことなんか気にしないで!」


「……そう言って下さって有り難うございます……」


「あ、ねぇ!伊吹さんておそば好き?」




***




「実は食べ物の中でおそばが一番好きです」と答えると、野中さんは感激して「菓子折りのお礼に食べてってよ!」と言ってくれた。

 温かいのと冷たいのどっちがいいかと聞かれ、いつもは冷たいおそばを選ぶけど、その時は敢えてあったかいおそばを選んだ。



「奥の席で待っててね!出来たら持ってくから!」


「……何から何まですみません」



 指示された通り、厨房を通り過ぎて店の奥へと進んだ。テーブルが数席だけ並ぶその空間は突き当たりがガラス張りになっていて、見慣れた山々の風景がまるで絵画のように映し出されていた。



 思わず目を奪われながら同時に、体の右半分では無視できない存在感を感じとっていた。視線をその出どころである店の角へと移すと、そこにはあの広大な自然にも負けないくらいに見事としか言いようのない大きな植物のオブジェがひっそりと佇んでいた。



 ずっしりとした陶器の壺の中からはいくつもの枝が力強くも儚げに多方へと凛々しく折れ曲がり、色とりどりの鮮やかな花々と若々しい緑たちが、どうにかして天に手を伸ばそうとする一本一本の枝を誇るようにして寄り添っていた。



 枝は本物の木だけど、その他は作り物だと分かった。でもそんなこと関係なかった。

 その繊細な美しさと心にそっと流れこんでくるような温かさに触れ、気づけば私の目からはそっと、一粒の涙がこぼれて落ちていた。



「おまたせー!」



 後ろから声がしてとっさに涙を拭って振り返ると、野中さんがあったかいおそばを二つ、テーブルの上に運んでくれていた。



「私もまかない、一緒にいい?」


「はい!もちろんです!」



 私たちは他に誰もいない店内で向かい合って座り、おそばを頂いた。



「美味しい……すごい美味しいです……」


「よかったぁ!おそばが一番好きって言うから緊張しちゃったよ!」


「お世辞抜きで、今まで食べたおそばの中で本当に一番美味しいです!」


「ほんとに?うれしい〜!!」



 ふと目が合うと、野中さんは「大丈夫?」と私に尋ねてきた。少し悲しそうに微笑むその顔を見て、泣いていたことに気づかれたと悟った。



「ごめんなさい……なんか分からないんですけど、さっきこのお花たち見てたら涙が出てきて……」



 私はあのオブジェを見上げながら言った。



「これね、開店当時に業者さんに作ってもらったんだ。ここのスペースだけ少し隔離されてるでしょ?だからちょっと特別な空間にしたくて。私の一番のオススメの席!」


「……とっても素敵です。言葉では上手く言い表せないですけど……。なんか久しぶりに小さい頃の夢を思い出しました。そう言えば私、ずっとお花屋さんになりたいなんて言ってたなぁって……」


「お花屋さんか〜、女の子らしくてかわいいね」


「いつのまにかそんなこと忘れてゴム会社への就職に必死になってましたけど……」


「伊吹ちゃん、ゴムに興味があるの?」


「……全然です。なんにも。そうゆうところが出ちゃったのかな。そこそこ安定した会社で、ただ就職さえ出来ればいいって気持ちだったから、それを面接官の人に見抜かれたのかもしれません」


「……でもそれは、伊吹ちゃん自身がその道に進むことを拒否した証じゃないかな。正しい道はそっちじゃないって、本当の伊吹ちゃんは分かってたのかもしれない」


「……でも、最終まで残った唯一の会社だったのに……」


「もし上手くいかなかったとしても、それはそこの会社と縁がなかったってことだよ、きっと」


「縁……」


「そう。そして逆に、今こうして知らない者同士向かい合っておそば食べてることも何かの縁かもしれないよ?」


「確かに、今日は朝からイレギュラーだらけな事が続きに続いてここにいます」



 すると、野中さんはにっこりと笑い「ちょっと待ってて」と言って席を立った。そして、店の入り口にあるレジのところまで行くと、何かを持った手を背中で隠しながら戻って来た。



「これ伊吹ちゃんにあげる」



 差し出されたのは、片手に乗るほど小さな鉢に飾られた、同じく造花で出来たお花の置き物だった。



「あっ……かわいい……」



 お店に飾られているオブジェとサイズは100倍くらい違うけど、見ていて感じるものは不思議と同じだった。



「あれ作ってくれた業者さんがおまけに作ってくれたの。レジに飾ってたもので悪いけど」


「え!そんな大事な物もらえません!」


「いいの!なんかね、伊吹ちゃんにはこの子が必要な気がするから」



 結局、お礼に行ったはずなのに逆におそばをごちそうになり、素敵なお花の置き物までもらって帰ってきてしまった。



 先に帰ってきていたお母さんに早速面接の出来を聞かれて、心苦しいながらも『悪くなかったと思う』と嘘をついた。

 素直に言葉にするのにはまだもう少し時間がかかりそうだった。



 部屋に入り、もらったお花を机の上に置いて一人ずっと眺めていた。



 あったかくて懐かしくて、なぜか見ているだけでまた泣けてきそうになってきた。



「これからどうしよう……」



 未来が不安でたまらなくなり、小さなお花にすがるように両手で持ち上げた。

 その時、鉢の下に白いシールが貼ってあることに気づいた。



「(株)GREEN&LIFE……」



 きっと、野中さんが言っていた業者さんの会社名だ……





***





 次の日の朝、今日も早朝からお母さんがパートへと出かけて行くと、私は家を出て昨日は乗り過ごしたバスに乗った。

 途中、バスの中から野々屋さんを眺めて駅へ着くと、東京行きの電車に乗った。
















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