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TAROT BREAKER【原案・初期構想アーカイブ】  作者: 詩韻


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第23話『光の巫女 ― Rebirth of the Star ―』

Ⅰ. 覚醒の瞬間


アマトは深呼吸をした。


透き通った目が自信を表している。

「もう、迷わない」


鏡の奥で何かがかすかに微笑んだ。


アマトは、それに応えるかのように、

——鏡に向かって。


「汝、美しいあたしを映しなさい。

 これが、あたしよ。」


「グラマライズ・アップ。」


紅の光が弾け、鏡が砕け散る。

その破片が宙を舞い、星屑へと変わる。

金と紅の粒子が渦を描きながら、彼女の肌を撫で、髪を照らす。


髪が波打ち、瞳の奥で宇宙が瞬いた。

唇には夜明けの紅、頬には黎明の光。


「——美神ヴァーミラ。どう? 美しいでしょ?」

彼女は鏡の残滓に微笑み、

片目を閉じて、少しだけ首を傾げた。


「惚れるなよ。」


指先で鼻をちょんと押す。その仕草が、太陽みたいに眩しかった。


風が鳴り、破片が弾け、

そこから溢れる光が、まるで太陽の息吹のように空間を染め上げた。


——彼女は、鏡を越えた。

そして、世界は「星界」へと移り変わる。



Ⅱ. 光陽の巫女、降臨


闇が蠢いていた。

黒い波が空間を裂き、稲妻のような速さで襲いかかる。

光すら飲み込む暗黒。

世界の輪郭が滲み、音が消える。


「タロット展開——!」


シオンが叫ぶより早く、闇が奔る。

その一撃が、地を割り、空を裂く。

紙片のように散った光が、空間の中で燃え尽きていった。


「くっ……早すぎる……!」


シオリエルが光の盾を展開し、

間一髪でシオンを包み込む。


しかし、その盾ごと吹き飛ばされた。

星の風が唸り、耳鳴りが世界を支配する。


「シオン……離れて……っ!」


彼女の声が掻き消える。

闇がうねり、ふたりを引き裂く。


音も、色も、熱も奪われた世界で——

ただひとつ、鼓動だけが生きていた。


(……終わるのか? ここで——)


黒の奔流が迫る。

シオンが目を閉じかけた、その瞬間。


——光が降った。


眩い閃光。

太陽の息吹が、闇の中心を貫く。

その光は暖かく、やわらかく、それでいて絶対的だった。


金と白の輝きが弾け、風が弾ける。

その中心に——立っていた。


まるで、星そのものが人の形をとったような女。


腰まで伸びる白金の髪が、二つの光の帯となって揺れる。

その髪が空気を撫でるたびに、微かな鈴音が響く。

香は甘く、しかし焦げた空気の中でもはっきりと漂う——

まるで朝陽に濡れた花の香りのように。


「……な、誰だ……?」


シオンの声が、震えた。


ヴァーミラはゆっくりと歩を進める。

一歩ごとに、足元に金の花弁が咲き、

その光が闇を焼き払う。


頬にあたる風は柔らかく、

けれど背後には、嵐にも似た熱が潜んでいた。


「我は光陽の巫女にして、美神ヴァーミラ。

 初めまして——“魂の導き手”くん。」


その声は、囁きのように優しく、

同時に、太陽のように力強かった。

その響きに、闇の波が一瞬たじろぐ。



Ⅲ. 背中で守る者


「私は戦わない。」

彼女は微笑んだ。

「ただ、この背で“光”を守る。」


両腕を広げると、背中に八重の光輪が咲いた。

それは翼でも花でもなく、

“太陽を抱く環”だった。


空気が熱を帯びる。

黄金の風が吹き抜け、

シオンの頬に触れた瞬間、

心の奥で何かが確かに燃えた。


闇の一撃が直撃する。

だがヴァーミラは動かない。


轟音が響き、衝撃が世界を揺らす。

焦げた空気の匂い、

焼けるような痛み。

それでも、彼女の瞳は穏やかだった。


「ねぇ、あなた。

 人はね、傷つくほど優しくなれるの。

 それが“強さ”よ。」


その声は、痛みの中で微笑んでいた。

光の粒が舞い、彼女の涙を照らす。

それは悲しみではなく、再誕の輝きだった。


「強さって……守ることなのか……?」

シオンの声が震える。


「いいえ、愛することよ。

 “自分を”も、“誰かを”も。」


彼女の瞳に、シオンの姿が映る。

そこには恐れも疑いもない。

ただ、まっすぐな光。


——そして、世界が光に包まれた。


ヴァーミラの背中から、金の花弁が咲き乱れる。

その輝きが闇を分解し、星屑の結晶へと変えていく。

音が戻り、風が息を吹き返す。


「私の光は、誰かを照らすためにある。

 でも今だけは……シオン、あなたを照らしたい。」


その一言で、シオンの時間が止まった。

呼吸も、鼓動も、世界の音も、すべてが止まる。


琥珀色の瞳が揺れ、

微笑みが溶けるように広がる。

その美しさは、痛みよりも強かった。



Ⅳ. 1人じゃない


「離れて、シオン。ここは——私が受け止める。」


「何言ってるんだ! 一人で——!」


「違うわ。」

微笑みながら、ヴァーミラはシオンを見つめた。


「一人じゃない。

 だってあなたの“光”が、私の中にあるもの。」


闇の奔流が再び爆ぜた。

轟音、閃光、そして静寂。


ヴァーミラの背中の魔法陣が広がり、

その中心から、太陽の輪が生まれる。

闇の波を受け止め、

そのエネルギーを光の粒に変換していく。


まるで——

夜空を逆流する流星群のように。


——世界が息を呑む。


粉雪のように舞う光片。

焦げた空気の匂い。

彼女の髪が揺れ、

金の花弁が風に溶けていく。


ヴァーミラは

シオンの目を見つめて、微笑んだ。


「あなたが信じた“光”は、間違ってなかったわ。

 だから、もう迷わないで。」


その瞳の奥で、星が爆ぜる。

渦巻く光が彼女を包み込み、

黄金の螺旋となって夜空を突き抜けた。



光陽天照ルクス・テラス


「——太陽よ、我を見よ。

この身、あなたの光に還す。


闇を受け、抱きしめ

——照らし、赦し


そして、


——永久とわに照らせ。」


星界が鳴動する。

風が唸り、光が呼吸する。

世界そのものが、ひとつの心臓のように脈打つ。


世界が、昼になる。


太陽の花弁が空一面に咲き、

無数の光柱が地を貫く。


闇はただ、美しく消えた。

敵の形も、悲鳴も、何も残さない。


静寂だけが広がる。


「ここからは、“二人の戦い”よ。

 あなたのカードで——この星を守って。」


「……ヴァーミラ。必ず、守る。」


闇が再び蠢く。

だが今度は違う。

シオンの瞳の奥で、光が確かに燃えていた。


ヴァーミラの髪が風に舞い、

その輪郭がゆっくりと輝きに溶けていく。


最後に——

少しだけ顔を赤らめながら、彼女は微笑んだ。


「惚れるなよ、シオン。

 戦いのあとでなら……少しだけ、考えてあげる。」


指先でシオンの鼻をちょんと押す。その仕草が、太陽みたいに眩しかった。


ヴァーミラの微笑みが、まぶたの裏で永遠に焼き付いた。


光の太陽が散り、金の粒が空に昇る。

世界は再び静寂を取り戻す。


けれど、その中心では——

ヴァーミラとシオンの光が、確かに燃えていた。



次回予告


——星は囁く。

光はもう、守るだけのものじゃない。


「ヴァーミラ……オレは行く。

 この光で、闇を斬り裂く。」


轟音。

闇を駆け抜ける閃光。

星界が震え、命が燃える。


走れ、光。

止まることのない“意志”となれ。


次回『駆光 ― The Chariot Rising』

——光、戦場へ。


「ねぇ、あなた。

 人はね、傷つくほど優しくなれるの。

 それが“強さ”よ。」


——光陽の巫女、ヴァーミラ。


この言葉が、今日の物語のすべてでした。

“戦う強さ”ではなく、“赦す強さ”。

ヴァーミラはその姿で、光の意味を教えてくれた気がします。


誰かを守るということは、

同時に、自分の弱さも受け入れるということ。

そして——その弱さの中から、

ほんとうの優しさが生まれるのだと思います。


彼女の背に咲いた八重の光輪は、

きっと「誰かを想う心」が形になったもの。

それが光であり、祈りであり、再誕の証。


次回からは、ヴァーミラの光を継いだシオンが

“守り”から“進撃”へと歩を進めます。

物語は、新しい段階へ。

——光は、もう止まらない。



セレフィーズのみんなへ


最後まで読んでくれて、本当にありがとう。

この章の光が、あなたの心にも少しでも届いたなら、

それはヴァーミラがそっと寄り添ってくれた証です。


「優しさを強さに変える」——それがこの章の願い。

その想いを胸に、次の物語へ進んでいきましょう。



ブクマ・感想のお願い


この物語が心に響いたなら、

ブクマ登録や感想で“光”を残してもらえると嬉しいです。


ブクマは、星界に灯るあなたの祈り。

感想は、星詠者たちの共鳴の証。


そのひとつひとつが、

次の章『駆光 ― The Chariot Rising』へと続く

新しい光の道になります。



「私の光は、誰かを照らすためにある。

 でも今だけは……あなたを照らしたい。」


「うふっ、惚れてもしーらない♪」


——ヴァーミラ


あなたの中にも、きっと光はある。

大丈夫。夜は、もう暗くない。


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