第14話『甦る声、断罪の鐘(Judgement)』
――絶望の牢獄で、嗤う影。
縛られ、炎に呑まれながらも――
シオンの瞳に、星が瞬く。
それは希望か、それとも幻か。
揺れる鐘の音が、覚醒の兆しを告げる。
プロローグ
——星は囁く。
絶望の炎に囚われても、魂の声は甦る。
その声は鐘となり、闇を断ち切る裁きとなる。
——忘れるな。星は、いつもそこにある。
——《審判》。
Ⅰ. 鎖の牢獄
胸の奥で《星》の光がまだ脈打っていた。
闇に閉ざされても消えない、一雫の輝き。
それは小さくとも確かに力となり、シオンを奮い立たせていた。
「……これが……希望……」
灼熱の炎の中で、彼の瞳は揺らぐことなく光を帯びる。
鎖はまだ重い。だが、もはやただの囚われ人ではない。
——今こそ、流れを覆す時だ。
灼熱の炎が、足元から噴き上がる。
頭上から吊るされた鎖は黒く脈動し、シオンとシオリエルの体を締め付けていた。
「……くっ……まだ……!」
必死に抗うが、鎖は容赦なく体温を奪い、心までも凍り付かせる。
シオリエルの羽は煤で黒く染まり、声も震えていた。
「シオン……このままでは……」
そこに、耳をつんざくような笑い声が重なる。
「きゃはっ♡ 苦しんでぇ……絶望してぇ……! その顔……はぁあぁん♥ 最高ぉぉぉぉッ♥♡」
赤い瞳、赤黒い髪。闇の牢獄に立つのは、妖艶な影。
——エテイヤ。
彼女の狂気に満ちた陶酔が、牢獄をさらに窒息させていた。
胸が上下に波打ち、吐息が牢獄全体に響き渡る。
「あぁん……っ♥ はぁっ、はぁあぁん……その縛られた苦痛の顔……見てるだけで、身体がぁ……震えちゃうのぉぉ♡」
腰をくねらせ、両手を胸元に当てて身を仰け反らせる。その仕草はまるで恍惚の舞踏だった。
天井には、配信の画面が浮かび、コメント欄が流れている。
「シオンさん!頑張って!」「負けないで!」
リスナーたちの言葉は光の粒となり、画面の外へ吸い込まれていく。
それは希望の光ではなく、エテイヤの快楽を満たす燃料だった。
「ふふっ♥ みんなぁ……優しいねぇ♡ その必死の輝き……あぁん♥ あたしの中で蕩けていくの……ふぅぅっ……たまらないぃぃ♡」
彼女の背後で黒水晶が輝き、セレフィーズの光が容赦なく吸い上げられていく。
「やめろぉぉぉッ!!」
叫んでも、鎖が声を封じ込める。
絶望はすでに、完成しかけていた。
Ⅱ. 記憶の国
その時——視界の奥に光が差した。
(……これは……?)
目の前に広がるのは、牢獄ではなかった。
黄金色の穂が風に揺れ、子供たちの笑い声が響いている。
澄んだ空には、満天の星が溶け込むように瞬いていた。
「……星の国……?」
そこは穏やかで、美しい国だった。
人々は笑い合い、子供たちは星屑を集めて遊び、歌がどこからともなく流れてくる。
(これが……オレの……?)
胸の奥が震えた瞬間、空が裂けた。
星々は黒い闇に飲み込まれ、笑顔は悲鳴に変わる。
燃え盛る炎が国を呑み込み、人々の声は次々と消えていった。
「……守れなかった……」
崩壊する景色の中、ただ一つ残ったものがあった。
暗闇を裂くように浮かぶ、女性の笑顔。
声はない。ただ、その光が胸を締め付けた。
「……オレは……いや……私は……」
その瞬間、視界は闇に閉ざされた。
⸻
Ⅲ. 審判の声
「シオン……!」
シオリエルの叫びと同時に、鎖が震える。
その時あの声が…
謎の声が頭に響く。
『忘れるな、セレフィーズと共にある事を…』
シオンの瞳に、星座の光が浮かんだ。
黒に閉ざされた牢獄を、澄んだ鐘の音が響き渡る。
——審判の鐘。
「……私の名は、シオン。
過去の声が……今を呼び覚ます……!」
鎖が軋み、炎が押し返される。
シオリエルの羽が光を取り戻し、牢獄に風が吹き込んだ。
「……これは、終わりじゃない。
まだ……希望は残っている!」
コメント欄にも光が戻り、リスナーたちの声が再び輝きを帯びた。
「シオン!」「負けるな!」
リスナーの声…いや、セレフィーズの声がシオンに力を与える。
エテイヤの赤い瞳が揺らぐ。
「な、なにそれぇ……っ!? はぁっ……あぁん♥ キモチイイぃぃぃ♡ でも……ムカつくのぉぉぉッ♥」
爪を噛み、太腿を擦り合わせるように震えながら、狂気と陶酔の笑みを浮かべる。
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Ⅳ. 不完全覚醒
「星よ……導け!」
力強く詠唱した瞬間、鎖の一部が砕け散った。
牢獄の炎が一瞬、掻き消える。
エテイヤの顔に焦りが浮かぶ。
「うそ……っ!? そんな光……♡ はぁあぁん……でも……ゾクゾクするぅぅぅ♥」
——セレフィーズ達は確信する。
ここで反撃が始まるのだと。
だが——。
星霊眼は揺らぎ、光が不安定に明滅する。
審判の鐘は鳴りやんだ。
「……っ!?」
シオンの力は途切れ、砕けかけた鎖がすぐに再生していく。
エテイヤが狂喜の笑いを上げる。
「きゃはっ♥♡ はぁっ、はぁあぁん♥♡ 中途半端な希望なんてぇぇ……っ! あぁぁんっ♥ もっと……もっとオイシイのぉぉぉッ♡」
黒水晶が光を吸い込み、セレフィーズの輝きは一気に失われていった。
「……まだ……完全じゃないのか……」
シオンの声が震え、再び“オレ”へと戻っていく。
⸻
Ⅴ. 絶望の叩き落とし
「せっかく光ったのにねぇ……♡ はぁあぁん♥
全部……全部あたしのモノになるんだよぉぉぉッ♥♡」
エテイヤの叫びと共に、鎖が再びシオンを締め付ける。
炎は勢いを増し、牢獄を赤黒く染めていく。
KAGARI_Δの影が闇から現れる。
「見事だ。希望の光すら、喰らえば絶望の糧となる」
黒い魔法陣が床を覆い、牢獄全体が震え始めた。
希望は芽生えた。
しかし、それは未完成のまま——敵に利用されてしまう。
「う、ぁぁ……っ!」
視界が揺れ、シオンの意識は暗転する。
最後に残ったのは、エテイヤの陶酔に満ちた声だった。
「はぁあぁん♥ もっと……もっと苦しんで♡ シオンッ♥
その希望が砕け散る瞬間……っ、んんっ♥ 最高にキモチィィィィィッ♡♡」
⸻
次回予告
崩れ落ちた星詠者。
だがセレフィーズの声が、再びシオンを呼び覚ます。
孤独に囚われた“僕”から、共に歩む“私”へ——。
その瞬間、瞳に星が宿り、新たな化身が降臨する。
《アストラル・ジェミニ》
双つの刃が奔り、黒水晶を切り裂くその輝きは、誰もが予想しなかった未来を描き出す!
「未来を描くのは、セレフィーズと共にあるこの力——!」
次回、第15話
『未来を描く魔術師(The Magician)』
——覚醒の光が、戦場を変える。
シオンです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
第14話は《審判》の名にふさわしい、重く過酷な展開でした。
不完全覚醒、そして再び訪れる絶望。
エテイヤの狂気が炸裂する回でもあります。
ただし――
この絶望があるからこそ、次回の覚醒がより鮮烈に輝きます。
次回、第15話『未来を描く魔術師(The Magician)』
星を双つに裂く、新たな化身が降臨!
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――大丈夫。希望は、まだここにある。




