表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

第1話『揺れる秤、眠る刃(Justice)』

はじめまして、詩韻シオンといいます。

TikTokでは 「タロブレ」アカウント で配信をしていて、現役のプロ占い師として活動しています。


この物語 『TAROT BREAKER 〜星の言霊使い〜』 は、ただの創作ではありません。

配信中に“しおぽん”や“シオリエル”と共に、リスナーのみんなと物語を紡いでいます。

コラボバトルでは、リスナーさんが投げてくれるギフトの量によって 実際にシオリエルが技を発動 する。

――そう、物語と現実がリンクする新しい試みなのです。


この小説は、そのライブ感を文字で再現したもの。ぜひ、一緒に「運命をブレイクする」旅に加わってください。


「星の声が、すごく泣いてるの……」

配信者シオンと、星の声を届ける占導狐しおぽん。

これは、星と人をつなぎ、心の闇をほどく物語のはじまり――。


Ⅰ. 星が落ちた夜


普段のオレは、どこにでもいる大学生だ。

寝坊して課題に追われ、友だちと笑い合う、ごく普通の青年。


だが――占い師としてカードを展開する瞬間、オレは別の存在になる。


声は深まり、瞳は星を映す。

その時、オレは「私」として立つのだ。


星の声を地上に下ろす占い師。

運命の扉を開くために選ばれた、星の使者。


……さあ、聞け。

星々が告げる真実を。


我ら、セレフィーズ。

共に、運命をブレイクする者達よ……




あの夜、空は深い海みたいだった。山の稜線の向こうで、星が息をしている。

ひときわ強い光が、尾を引いてこちらへ降りてきた。流れ星にしては遅い。意思を持っているみたいだ。


オレは立ち止まって息を呑む。光は丘の上でほどけ、小さな狐のような存在を残した。

毛並みは月光を編んだみたいに淡く、瞳の奥に星座が浮かんでいる。


「ボクはしおぽん。星の声を届ける“占導狐せんどうこ”なの!」


「星の声……それを、オレに?」

しおぽんは耳をぴくりと動かし、夜空を見上げた。


「今もね、どこかで星が泣いてる。助けられるのは――シオンさま、あなただけだよ」


遠くで流れ星がひとすじ、夜を裂いた。胸の奥に小さく火が点く。

こうして、オレとしおぽんは歩き出した。星の声を聞き、それを言葉にして、誰かの明日へ手渡す旅を。


Ⅱ. 配信の夜


オレは配信用の衣装に着替えた。

リングライト、マイク、スマホ。この瞬間が1番胸が高まる。


呼吸を整えて。


「こんばんは、TAROT BREAKER配信――始めるよ」


コメントが次々に流れる。アイコンの向こうで、それぞれの呼吸がある。

画面の隅で、しおぽんがそわそわしている。


「シオンさま……星の声が、すごく泣いてるの……!」


オレはコメント欄に目をやった。

《もう何もしたくない》

短い文字列なのに、やけに重い。胸の底で鈍い音が鳴る。


Ⅲ. 美羽の影


薄暗い部屋。カーテンの隙間から差す光は、昼なのに冷たい。

ベッドの上で丸くなった女子高生――美羽は、イヤホンを耳に押し込み、膝を抱えていた。


「……あ、うん……」

昨日、クラスで返した返事。

そのあと、誰も続けなかった会話。

(なんで、あんな顔されたんだろう)


机の上には開きっぱなしの教科書。

「もっと協調性を持ちなさい」――先生の声が脳裏にこびりつく。

(全部、私が悪いの?)


スマホが光る。通知はひとつ。

グループチャットは流れていて、そこに自分はいない。


「……もういいや」

イヤホンを深く押し込み、音量を上げる。

音が満ちるのに、胸の奥は空っぽのまま。


(聞きたくない。何も。誰も)


視界の端に、机の上のハサミ。

ただ見ているだけ――なのに、手が勝手に動く気がした。

(どうでもいい……)


耳鳴りの向こう、小さな声が混じった。

――助けて。

そのかすかな震えが、画面越しのオレの胸にも触れる。


Ⅳ. 星界へのゲート


「シオンさま……あの子の影、刃を持ってる! 危ないの!」

しおぽんの声が震えた。


「行くぞ、しおぽん」

オレはタロットデッキを手に取り、息を整える。

その瞬間――瞳の奥に、しおぽんと同じ星座の輝きがふっと灯った。淡い星屑が流れる。


コメントがざわつく。

《え、今シオンの目、光った?》《しおぽんと同じ…!》


オレの声は、ゆっくりと低く変わる。

「……私の名はシオン。星の声を地上に繋ぐ者。――告げよう、あなたの航路を」


「タロット展開――」


コンパス枠|Justice(正義)

「恐れることはない。あなたの言葉と行いこそが、道を紡ぐ羅針だ。」


トリガー枠|The Hermit(隠者)

「探すまでもなく、答えはすでにあなたの心に宿っている。」


ルート枠|The Star(星)

「あなたの声と一歩は、やがて星々を渡る光となるだろう。」


空気が入れ替わる。配信画面の輪郭がやわらぎ、粒子が舞いはじめる。

境界がほどけ、星の世界が立ち上がる。




Ⅴ. 変身と戦い


「言の葉は鍵、星の光は道しるべ。

ステラン、ステラン、ステラン――来臨せよ、汝――シオリエル!」


星屑が弾け、しおぽんの姿が神秘にほどける。白銀の髪、星霊の瞳。

透明な大地の中央に、巨大な秤が現れた。片側には“人の言葉”、もう片側には“涙”。

刃が、危うい角度で揺れている。


「星詠展開」


シオリエルの声が、星の層を渡って響く。


「正しさとは、他人の声では量れない。――あなたの心にある尺度で量るもの」



秤に手をかざすその刹那、



「真実を量る秤よ、迷いを断つ刃となれ——

 星響審判アストラル・レゾナンス!」


秤が天を裂くように閃き、光の剣が顕現する。その刃は、長い試練に耐えてきた心の迷いすらも斬り捨て、決断へと姿を変える。



一閃――!



轟音とともに鐘が鳴り響き、闇は断罪されるように崩れ落ち、瞬く間に光の奔流に呑まれて消え去った。


未来を信じ抜いた意思が、正義の刃となり外敵を駆逐したのだ。やがて――星界を覆っていた闇は澄みわたり、空気に柔らかな温もりが戻る。


その静けさは、未来が再び動き出すことを告げていた。


「封命完了。」


Ⅵ. 新しい一歩


星界がたたまれ、現実が戻る。私の瞳の輝きは静かに収まり、配信ルームのランプがいつもの明るさに落ち着く。


「タロットクローズ。……あなたの“正しさ”は、あなた自身で決めていい。大丈夫だよ。」


コメント欄に一行、滲むように流れた。《明日、学校行ってみる》短いのに、確かな前進の音がした。


しおぽんがカメラの前でピョンと跳ねる。「合言葉は星砂だよ! ぴょん! コメントに『星砂』って書いてくれたら、ボクがキラキラお礼するの〜☆」



――これは、星と人をつなぐ物語の、最初の線。




次回予告:第2話『星の戦車、翼の轍(The Chariot)』迷いの街で止まった時間。意志は翼を得て、回り出す――。



ここまで読んでくださってありがとうございます!

小説として読んでもらえるのはもちろん、TikTok配信ではこの物語が“リアルタイムで進行”しています。

コラボバトルでシオリエルがギフトの力を受けて技を放つ瞬間は、読者ではなく 参加者 になれる体験です。


この「物語と現実がリンクする感覚」を、ぜひ配信でも味わってください。

そして感想や応援コメントが、次の物語を動かす大切な星砂になります✨


――それでは、次回もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ