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【第1話】異世界?結構です!~俺はただ大学生活を楽しみたいだけなんだ~

こんにちは、このシリーズは普通の異世界ものとは少し違います。シリーズを通して、突飛な出来事や壮大な戦いがあなたを待っています。もちろん、それだけではありません…



こんにちは、俺の名前は黒沢蓮くろさわ れんだ。 大学生活は順調で、社交的な性格のおかげで女の子たちの間でも人気がある。 でも、どれだけ充実した人生を送っていても、土曜の夜に部屋にこもって一晩中ゲームをするのが俺にとって最高の癒しだった。 それは、画面の中にいるはずの女神――豊満な体つきで、金髪をなびかせ、ウェディングドレスのようなふわふわした衣装をまとい、ベールで顔が見えない――その「ヘナリア」という名の女神が、目の前に現れるまでは。



黒沢は足元を見下ろした。そこには青いチョークで描かれた幾重にも重なる魔法陣があった。心臓は興奮と緊張で胸から飛び出しそうなほど激しく脈打っている。左右を見渡すと、四本の白い柱に支えられた壁のない建物の中にいることに気づいた。 「ここは……どこだ?」



二十メートルを超える巨体を持つ女神ヘナリアは、ベールの下で微笑んでいた。 「ようこそ、勇者よ。私は守護と繁栄、そして力を与える女神ヘナリア。だが、君はもう私のことを知っているはずだ。私の試練を、私の期待以上に達成した数少ない者の一人なのだから。」



黒沢はできる限り首を上げ、目を細めて遠くを見ようとしたが、ベールの下の唇の色すら判別できなかった。ただ一つ、確信していたことがある。 「ちょっと待って! そのありがちな展開は置いといて。言ってることは理解できるし、でも断る。元の場所に戻してくれ!」



ヘナリアはベールの下で微笑みを保っていたが、少し苛立ったように片眉を上げた。 「まずは話を聞いてもらえるかしら?」



黒沢は怒りに拳を握りしめ、全力で叫んだ。 「素敵な伴侶、高給な仕事、健康な生活――そのために必死で努力してきたんだよ! やっと夢だった大学生活を手に入れたっていうのに、なんで俺をここに連れてきたんだ!? お前の世界とか、いつもの魔王がどうのこうのなんてどうでもいい! ここで時間を無駄にしたくないんだよ!」



女神ヘナリアの声には、礼儀正しさと静けさしかなかった。 「その不安、わかるわ。でも安心して。ここでは、時間の流れが君の想像以上に違うの。こう考えてみて。君の前にも勇者たちはやってきた。でも、あなたたちの世界で、私たちがどれほどの年月存在していたか、わかる?」

黒沢は眉をひそめ、「七年」と答えた。



「そう。君の前にも一人の勇者が来た。そして、あなたたちの世界と繋がってから二百年後に、彼はこの世界へ召喚された。つまり、あなたたちの世界の一年は、こちらの世界で百年ということになる。君も勇者として魔王を倒し、望む願いを一つ手に入れることができるわ。さあ、これ以上長話は無用。祝福の儀を始めるわね。」



黒沢はここで百年――それ以上の時を過ごす可能性があると知った瞬間、瞳孔が縮まり、両手で頭を抱え、髪を引っ張った。目は飛び出しそうなくらいに見開かれた。 「なに!? 百年だと!? ここでそんなに長く何をしろって言うんだ!? ふざけんな! 俺は黒沢蓮! 今すぐ自分の世界に戻る! わかったか!?」



ヘナリアは何も言わなかった。そして黒沢の体が金色の光を放ち始めた。手を見ると、自分の身体が細かい光の粒となって空に溶けていくのがわかった。 「おい! やめろ! 何をしてるんだ!? おいっ!」

返事はなかった。すでに足は消えており、上半身も空中に漂っていた。そして、自分が裸であることに気づいた。慌てて手で股間を隠し、顔を真っ赤にした。 「裸って……なんで教えてくれなかったんだよ?」

黒沢はヘナリアのベールの下から、彼女が微笑んでいるのをはっきりと見た。女神の唇は淡い桃色だった。 「もう消えたものに、恥じる必要があるのかしら?」



黒沢の顔色が青ざめ、言葉を失った。腕も肘まで消えており、股間もすでに粒子となって消えていた。 「え……?戻るよね?」



ヘナリアはいたずらっぽく明るい声で言った。 「さあ、どうかしらね。」

黒沢に残っていたのは顔だけだった。そして、それも消える瞬間、彼の虚ろな視線だけが残っていた。 「……え?」



二メートルを超える赤褐色の肌を持つ獣のような巨体が、十万人の兵士が待ち構える戦場に飛び込み、両手に握った巨大な斧を振り回して人間の身体を次々と切り裂いていた。頭の両側には五十センチほどの黒い角が突き出ており、下顎の牙は口からはみ出していた。目は真っ黒な背景に赤い点のような瞳孔が浮かび、肩幅は大人二人分の頭の幅ほどもあった。頭頂部には髪がなく、複数の新しい剣傷が走っていた。短剣の一本が頭皮に突き刺さったまま揺れている。



兵士たちは勇敢に立ち向かいながらも、時折恐怖に駆られて叫んだ。 「やれ!あの騎士の首を取れ!」 「くたばれ、化け物!」



獣のようなその怪物は、腰から膝まで動物の皮でできた布を巻き、そこには金髪の女性の生首がぶら下がっていた。兵士たちが剣をその背中に突き刺すと、怪物は振り向いて斧で十数人の首を一気にはねた。

その顔には感情がなかったが、点のような赤い瞳は兵士たちを震え上がらせるには十分だった。戦はもはや戦ではなく、一体の怪物による虐殺と化していた。



だが、彼の脳裏には一つの命令だけが反響していた。 「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ……」



その命令に従いながらも、全員を殺しきれないことは分かっていた。呼吸は荒くなり、斧の柄は血にまみれ、滑って握りづらくなっていた。それでも命令は頭の中で繰り返されていた。



そのとき、戦場を見渡す騎馬の将軍や兵士たちの目を、突然の閃光が襲った。みな目を手や腕で覆いながら何が起きたのかを確かめようとしたが、光は視界を焼き、怪物の皮膚すら焼いていった。

怪物は苦痛の叫び声を上げて数歩後退し、その前面と腕には火傷の痕が残った。煙が皮膚から立ち上っていた。そして、死体の上に、身長178センチの裸の若者が現れた。

全員が驚愕の表情でその裸の男を見つめる中、黒沢は冷静に股間を見下ろした。戦場は一瞬で静まり返った。



黒沢は股間に手を当て、数秒間自分のナスを確認した。 「よかった……ちゃんとある。失くしてたらどうしてたんだ。」



黒沢が股間に手を当て、自分のナスを確認していると、戦場の兵士たちは呆然と立ち尽くしていた。沈黙を破って、怪物が低い声で問う。 「お前……誰だ?」



「ん? ああ、俺? 黒沢蓮っていうんだ。そして……君がレドン・クーだろ? 『軍隊喰らい』の異名を持つやつ。実際、お前マジで伝説級の化け物だな。こんなサイズになるまで何年生きたんだ?」

怪物は斧を強く握り直し、体を前傾させた。 「俺のことを知っているだと……。ならば、俺の後ろにどれだけの孤児が残ったかも知っているのだろうな……」


咆哮と共にレドン・クーは突進した。両手を大きく引き、黒沢の首を刎ねようとした。黒沢は未だに落ち着いたまま、その突進を見つめていた。



そのとき、彼の左側にいた兵士の恐怖に歪んだ顔を見て、ようやく自分の状況の深刻さに気付いた。

「う、うわっ……やばいっ……これ……無理……」



心の中で必死に叫ぶ。 『動け、動け! このまま終わるのか? せっかく手に入れた大学生活、ここで終わるなんて馬鹿げてる! 神様……今から信じても遅くないかな……?』



レドン・クーの斧が首元に迫る。その瞬間、黒沢の中で時間が止まったかのようだった。

『死ねば、元の世界に戻れる……はずだよな? あ、そうだ、たぶん! 絶対そう!』

黒沢は顔を上げ、両腕を大きく広げ、灰色の空を見上げた。



「さあ、来い……」



レドン・クーの斧が彼に振り下ろされる。だが、その斧は粉々に砕けた。



「……なに?」



怪物の身体は黒沢の両腕の下から、そして頭上から三つに裂けていった。切断された肉体は後方の兵士たちに降り注いだ。



黒沢は、流れ込んだ血で視界が真っ赤になる中、手で目をこすった。

兵士たちは全員、膝をついた。



黒沢の頭上には金色の光を放つ白鳥のシルエットが現れていた。輝く銀の鎧を身にまとい、金髪をなびかせた青い瞳のエルフの男が、そっと囁いた。



「女神ヘナリア様の紋章だ……」



その声は誰にも聞こえなかった。兵士たちはただその光景を見つめていた。

総司令官が剣を抜き、天へと掲げる。



「見よ! これは女神が授けた新たなる勇者! 万歳、女神ヘナリア様!」

兵士たちは歓喜し、剣を掲げ、涙を流しながら叫んだ。



「女神ヘナリア様、万歳! 女神ヘナリア様、万歳! 女神ヘナリア様、万歳!」

その喧騒の中、黒沢は小さな声で呟いていた。



「へさりあ、へすたりあ……ケツでかい馬鹿女へすたりあ……ブタ面へすたりあ……太っちょへすたりあ……くたばれ、へすたりあ……」



近くにいた兵士がそれを聞き、唖然として別の兵士に目配せした。あっという間に、その場の全員が彼の呟きを聞き取り始めた。



勇者の呟きに耐えかねた一人の兵士が、黒沢の肩に手を置いた。


「おい!」


突如として、重苦しい空気が辺りを包み、その兵士は地面に顔を伏せて倒れた。エルフの指揮官が眉をひそめるも、その圧力は一瞬で消え去った。


黒沢は膝をつき、涙を流しながら叫んだ。


「大学に行きたいんだよぉぉぉぉ!!!」


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― 新着の感想 ―
大学生の黒沢蓮が女神ヘナリアに召喚されて望まない異世界での勇者としての生活を強いられる展開に引き込まれました。現代の価値観と異世界の常識のギャップがコミカルに描かれていて彼の叫びや内心のツッコミに思わ…
悪くはないと思う。しかしWebで文章が詰まってると、行を見失ったりしがちなので、空白行とか入れた方が良いと思います。
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