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幸せの一ッ葉  作者: 春子
6/8

第五話

恐れ入ります説明会です。



「君に偽装の恋人になって欲しい」


あまりに唐突な提案に四葉は頭が真っ白になる。

対する桂木の表情からは何も読み取れない。

沈黙が続く二人の間にすっかり秋めいた風が吹き抜け,四葉は思わず身震いした。


「…少し、座ろうか」

四葉の手を解いた桂木に促され,池から少し離れた所に建つ,茶室の脇の長椅子に二人並んで腰かける。

茶室の周りを囲む竹垣のおかげで,日は柔らかく入るがさほど風は気にならない。



「実はあの夜君を見かけてから、君のことを調べていたんだよ。

僕は今親族から持ち掛けられる見合い話に悩んでいて、上手く見合いを回避する方法を探していた」


桂木はやや上体を曲げ,両手を膝の上で竹垣の向こうを睨むようにして話を始めた。


「今の桂木の家のトップは、ただの分家筋だった桂木の家を急成長させた桂木 容子(かつらぎ ようこ)という僕の祖母なんだけど、祖母には二人の娘がいる。まあ僕の母とその妹の叔母だね。

この二人は直接経営に関わってはいないが,桂木の家に婿として入った叔父がグループ本社の常務を務めている」


一旦言葉を切って,「寒くないかい?」と桂木は四葉に聞いた。

フルフルと頭を振って,ようやく少し冷静になった四葉は叔父と玲から聞かされた「()()桂木家」の話を思い出していた。


桂木家はKホテルグループの創業者一族で,その所有するホテルはビジネス用からセレブ向けまで幅広く展開され,また日本国内のみならず海外にも複数存在する。さらにグループを母体とした業種は不動産やリゾート開発,IT関連など多岐にわたり…云々。



「本社の黒木社長は現場からの叩き上げ。祖母は実力主義でね。でもこの黒木社長が近々退任するという噂がある。そこで新社長として有力視されているのが副社長と常務なんだ。

つまり後々のことを考えて早めに僕を囲っておきたいんだろうね。叔父は以前は僕の弟の方に自分の娘との結婚を打診していたんだが,弟は僕より先に婚約してしまって…こっちにお鉢が回ってきた」


「この娘がまた問題児で…寄付金を積んでなんとか入った大学も何度も留年してるし、男性関係もだらしがない。外見は美しいけれどね。それだけさ。でも僕は彼女を自分の妻になんて全く想像出来ない。それとなく叔父には断る姿勢を見せているんだが、それならこちらはどうだなんて自分の息のかかった見合い話を次々に勧めてくる。…うんざりするよ。叔父のことも社内の派閥のことも。しかも今は仕事が大詰めで正直そっちに割くリソースがないんだ」


「ただ僕も今年三十になるし,弟のこともあって…あんまり断り続けていると今度は自分の立場が悪くなる。桂木家の後継者になるつもりがないと。だから…」


ここでようやく四葉に向き直り,桂木は先ほどの言葉を繰り返した。


「本社とも桂木家ともあまり関係の深くない家柄の女性で,期間限定で偽装の恋人になってくれる人を探していたんだ」





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