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プロローグ
初めての投稿です。稚拙な部分多々あるかと思いますが,どうぞ大目に見てください。
…カンッ
古い日本家屋の寒い台所に音が響く。
手狭な調理台に無造作に置いたお玉が小皿から落っこちたのだ。
「あ~あ…」
週末の疲れもあって、その出来事で遠藤 四葉は何もかもどうでもよくなってしまった。無造作に冷たい台所の床に座り込む。
玉ねぎを入れた味噌汁が甘くて好きだと子供のように笑ったあの人も、もうこの家に来ることはないだろう。なのに今日の夕飯もまた二人分作ってしまった。
継ぎのある座布団や低いちゃぶ台が全然似合わなかったあの人。でも、二人で囲む食卓はいつも温かくて,ずっとこうしていられたらと何度も思った。
期限付きの恋人役は降ろされ,短い期間に芽生えた恋心だけが残された。時間が経てば忘れられるだろうか。四葉は組んだ腕に額を乗せ、目を閉じた。あの夜のあの人、桂木 慧人の笑顔が瞼の裏に蘇る―…。