6 夕食にて
食堂へ向かう途中の交差する廊下をレオーニが通っていくのを見かけた。
歩いていく向きを考えると、どうやら食べ終えて部屋に戻る途中のようだ。
今まで一人で食べるのが当たり前だったので、時間も決めずに、食事はバラバラに取っていた。
つい先程レオーニのことを考えていたので、会えたことに嬉しくなって、令嬢には端ないといわれる行為ではあるけれど、駆け寄ってしまった。だって、普通に歩いていたら追いつかないもの。
ある程度近づいたところで名前で呼びかけると、一瞬後ずさるような、迷う仕草を見せたものの、その場に留まってくれた。
「さっきは、エナを呼んで来てくれてありがとう!明日から食事は一緒にしない…?」
「……はい」
まだ、普通に話しかけられることに慣れないのかしら。嫌われてはいないと信じたい…。
戸惑いの表情ではあったもの、頷きながら答えてくれたので、その返事に満足した私は自然に口角が上がりつつ、「明日の朝、食堂でね!」っと言い残して食堂へと足を進めた。
食堂に着き、いつもの席に座るとメイド達が食事の準備を始めてくれた。
あっという間に整えてくれ、目の前にお皿が置かれる。緑色をしている、とてもじゃないが美味しそうには見えないスープから、湯気が立っている。
(うーん、美味しくなさそう……)
スプーンを持ったまま、スープから視線を動かさずしばらく葛藤する。
「あの…、料理長が倒れたお嬢様を考えて、体に良いスープを作ってくれたみたいです……」
緑色のスープが出された理由を、エナがそっと教えたくれた。
栄養バランスを考えながら、いつも料理を作ってくれているのに、知らなかったのか気にしなかったのか、嫌いな食べ物が並ぶと料理長達に対して、当たり散らしていた事を思い出した。
料理をひっくり返したり、機嫌次第では被せたりもしていたのに、それでもずっと私の事を考えて作ってくれていたことに、本当に感謝しかない。
意を決し、手を動かしてスープを掬い、口に運ぶ。
一口食べてみると、ビックリして目を見開いた。
美味しい!子供でも食べやすいような味付けにしてある。緑色の見た目からは想像できないような美味しさだった。
お腹が空いていたこともあり、あっという間に飲み終えてしまった。
今朝までのリリーアなら緑色のスープを見ただけで食べもせず、暴れていただろう。
そんな状況を想像してか、メイド達は少し離れたところに待機していたけれど、食べ始めてから、ぽかんとした表情でリリーアから視線を外せないでいるのがわかった。
お皿が空になったことに気がついた一人のメイドが、慌てて次の料理を取りに行く。
そのまま体に良さそうな料理が次々とテーブルに並べられて、今までであれば絶対手を付けないでいたであろう料理もすべて完食したのだった。
料理長達にも今までのことを謝り、お礼を言いたかったけれど、タイミングを逃してしまった。
一先ずと、料理を運んで来てくれていたメイド達にはテーブルにお皿が置かれる際に、「ありがとう」と伝えてはいたけれど、みんな一瞬動作が止まり、「いえ」と返してくれるだけだった。
すべて食べ終えた私は部屋に向かいつつ、関係改善のためにどうすればいいのか考えるのだった。




