3 オールディル国
「図書室に行ってくるわね」
行き先を告げると、私の姿を見たエナは、またしても瞬きを忘れて固まってしまった。
今まで一人で着替えたことなんてなかったのだから、驚くのも仕方ないと思う…。それだけではなく、図書室に行くというのも驚いたことの一つだろう。本に興味を持ったことも今までなかったのだから。あれ?そういえば、まだ教育を受けていないようだけれど、文字は読めるのかしら?
これからのことを考えると、少しでも今いる国のことを知っておきたい。それには図書室に行って本を読むのが一番だと考えたのだ。
固まっているエナには申し訳ないけれど、きっと動き出すのには時間がかかるだろうと予想し、横を通りすぎて図書室へ向かった。
「確かここが図書室だったはずだわ」
大きな扉を開けると、さすが公爵家というだけあり、本が広い部屋の壁一面に広がっていた。高い天井付近の届かないであろう、本を取るための梯子も付いている。日焼け防止のためか本の近くに窓はなく、部屋の一番奥に窓と大きなテーブルがあり、椅子が綺麗に並んでいる。
扉を閉めて、この国について書かれた本を探そうと歩きだした。
本が多すぎて探すのに時間が掛かったが、何冊か手に取り窓側の机に向かう。椅子に座り本を開き始めると扉が開く音がした後、少し離れたところでエナが控えてくれているのがわかった。
「えーと、《オールディル国》ね」
手に取った本の表紙に書かれている国の名前だ。文字は前世で使っていた一般語と同じらしく、普通に読むことができた。文字を覚えることから始めることにならなくて良かったわと、安堵しつつ本を開いて読み進めていく。
どうやらこの国はオールディル国というらしい。約百五十年前に建国し、なんと私が前世で暮らしていたパーノトキア国が二分されてできた国だった。
本に載っている地図を見ると、ひし形に近い形だったパーノトキア国が、東西に2つに分かれ、西がそのままの国名でパーノトキア国、東がこの国であるオールディル国と記されている。
私が大魔法士として暮らしていた時は、オールディル国は存在しなかったため、転生するまでに百五十年以上経っていることがわかった。
二分される前の当時のパーノトキア国の公爵家当主が、オールディル国を興したと記載されているけれど、理由についてなど詳しくは書かれていない。
「反乱でもあったのかしら」
思わず自分にしか聞こえないぐらい小さな声で呟いてしまう。
あまり分厚くない本を読み進めていくと、建国されてからの歴史が記されていた。歴史といっても王族の名前や貴族の家系図、法律の制定時期、政策などである。
一般常識のような情報が多数記載されていて、全くこの国について知識がなかった私としては、とても助かる本だった。




