9 予言本①
宝物が増えた日のことを思い出して温かい気持ちに包まれた私は、あの日のノートを感じさせるテーブルの上に置かれた本を手に取った。
「この本には、どんなことが書かれているのかしら」
最初のページを開いてみたけれど、何も印字されていなくて真っ白だった。
本ではなかったのかなと不思議に思いながらもタイトルに古代語が使われていたことから、魔法関係の珍しい本なのかもしれないとわくわくした気持ちになりつつ少し期待をして数ページめくってみる。
「うーん、何も書かれてしないわね」
見たページすべて何も書かれていなくて真っ白なページが続いていたので、段々と諦めの気持ちが強くなってきた。
ただのノートかもしれないと思い始めて後もう数ページだけをめくって確認したら止めようと決めて次のページに移ったとき、「何か書いてあるわ!」と思わず立ちながらはしゃいでしまった。
一人ではしゃいでしまった自分に気付いて恥ずかしくなりながらソファに座り直して、やっと見つけた文字が書かれているページを観察する。
そこには何語かわからない古代語でも一般語でもない全く見たことのない文字が書いてあるページがあった。全く見たことがなくて読めないはずなのに、なぜかその文字に違和感というか知っているというか、自分でも分からない不思議なものを感じて、理由がわからずもやもやした気持ちのままに指でその文字をなぞった瞬間、
キュィーーーーーーーン
本から音がなるというあり得ないことに驚いた瞬間、文字が空中に浮かび上がりパンッと文字の形をなくし霧状になった後、本に降りかかる。
その文字が霧状になったものが、真っ白なページに雪のように溶けたと思ったら今度はその本が空中に浮かび上がった。
唖然とその光景を眺めていると、空中で一度閉じてから再び開き、パラパラと一枚一枚早い速度で勝手にページがめくられ、ページが進むのに比例して本から光が発せられている。半分以上進んだかと思われる頃には光が強すぎて目を開けているのもやっとになってきた。そして、ひときわ強く光が発せられた瞬間、目を開けていられなくなり瞼を強く閉じる。
目を瞑ってから光が瞼越しに感じられなくなってから、そろそろ開けても大丈夫そうだとゆっくりと開いて周囲を確認しようとしたけれど、目の前の光景に頭が真っ白になった。
「ここはどこ………」
先程まで確かに自室のソファに座っていたはずなのにと、理解できない光景に不安が募り口元に両手を当ててしまいながら今の状況を考える。どう考えてもあの本のせいだろうと思う。座っていたはずなのに立っている今の状況もおかしいし、こんな場所は知らない。どれぐらいの広さがある空間なのだろうか、本当に先が見えない。陽が出ていなくて暗い夜とも違う四方が真っ黒な空間が広がっていて、黒いからこそどこまでが壁なのかもわからない。ただなぜか灯りになるようなものは見当たらないのに数歩先程度の足元は、しっかりと確認できるのが不思議すぎるし、ギリギリ見える先には幾重にも道が別れているのが分かる。この道から逸れると何かが起こるのか元いた自室に帰れるのか、最悪の場合は……と考えてとりあえず道なりに進むことを決める。
少し進んだ先にある幾重にも別れている道の前に立ち、どの方向に進めばいいのか分からず立ち尽くしていると、チリンッというがした。
「ネコ?」
四つ足の首に鈴をつけた真っ白なネコが少し先のギリギリ見える範囲の別れた道の一つに、先程までは絶対いなかった場所へどこからか現れたのだ。
顔だけで振り返り、尻尾を左右に振って何かをこちらに訴えかけているように感じる。
「ついて来いってこと?」
そう尋ねると、前を向き歩き出した。少し迷ったけれど、他に選択する方法もないことだしと先導してくれるネコが見えなくなる前について行くことを決めて歩き出した。
キョロキョロ周りを観察するけれど本当に何もない。体感ではそんなに進んでいないと思う距離を歩いたところでネコが足を止めてニャアと鳴いた。
景色は全く変わっていないので、ここに何があるのかとネコを注意深く観察していると、本が強く光を発していた時と同じ強さの光がネコから広がってきて、反射で目を閉じた。
自室に戻っていることを期待してゆっくりと瞼を上げるけれど、目の前の光景は、自室でもあの黒い空間でもない、日常的には絶対にあり得ない位置からの視点から見ている。
まるで、神であればこうして世界を覗いているのではないだろうかと思わずにはいられない。視線の位置的にこの場にはいないことは確かだけれど、
見覚えのある馬車の内装だった。




