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6話 大魔法使いエリザ

 「その……グラルド様。あなたはもしかすると高名な魔法使いですか?」


 へライオスが話しかけてきた。


 「いいや?なぜだ?」

 「素手で木をなぎ倒すなんて、そんな人は見たことも聞いたこともないですから……」

 「生まれつきだ。人の特徴を悪く言うな。失礼だろ」

 「は、はあ。悪くは言っていませんが……すみません」


 ヘライオスは謝った。

 べつにどうでもいいのだが、力について聞かれても困る。

 なぜこんな力があるのか俺にだって分からない。


 「ヘライオス。魔法使いってのは本当にいるのか?」

 「ええ。どこの町でも一人や二人いるでしょうね。大した力は持っていませんが」


 なんと、この世界は魔法が使える世界だったのか。

 素晴らしい。

 誰だって一度は魔法に憧れるものだが、この世界には実在するというのだ。

 俺も前世で何度破滅の呪文を唱えたかわからないくらいだ。


 「おーい!この中に魔法使えるやついるか?」


 ヘライオスが皆に向かって声をかけた。

 アイシャの隣にいた女が手を挙げた。


 「わたし使えます。治癒魔法だけですけど」

 「治癒魔法!?ちょっとやってみてくれ!お前、名前は?」

 「わ、わたし、エリザ・カミユです。やるってどこにですか?どこか怪我したんですか?」

 「どこでもいい!強いて言えば腰が痛いな!」


 エリザの指示通りに、うつぶせで横になる。

 エリザは腰に手をかざしてぶつぶつと呪文を唱えはじめた。

 エリザはそこそこ美人だったので、こう近寄られるとちょっと照れてしまう。


 腰が、なんだか温かな感覚に包まれてきた。

 だんだんぽかぽかしてきて、至福としか言いようがない時間が訪れた。

 こんな、こんな大魔法使いが目の前にいるなんて。


 「はぁ……はぁ……エリザ……お前は凄いやつだな。尊敬に値する」

 「そ、そうですか……初歩的な魔法ですけど……」

 「謙遜するな。お前は大魔法使いだ……」

 「はあ……ありがとうございます……」


 誉めたと言うのに、エリザの声には気味悪がるような響きがあった。

 こっちの世界でも、乙女心は難しいようだ。


 治癒魔法の効果なのか、まるでコタツにでも入っているかのような眠気がやってきた。

 気が付けばあたりは薄暗い。

 日が沈めば家に帰って寝る。

 それがこの世界だ。


 「さて、俺は寝る。俺の領地には入るなよ。おやすみ」

 「と、突然ですね……おやすみなさい」


 家に戻り、干し草の中に潜り込んだ。

 今日はよく眠れそうだ。

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