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13話 笑顔を守りたい

 「ビバル。ユグルの町にはどのくらいの食糧があると思う?」

 「さあ。けどここら辺一帯はハースタンの穀物庫だからな。腐るほどあると思うぜ」


 確かにビバルの言うように、ユグルの周りには広大な畑が広がっている。


 「何考えてるんですか、グラルド様……あんたまさか……」

 「ユグルを占領する。それで家も食糧も解決だ!」


 実に単純明快だ。

 無いなら有るところに行けばいいのだ。

 あまりにもクレバーな思い付きなので思わず笑みがこぼれてしまった。


 「ちょっと待ちなさいグラルド。そりゃあまりにも身勝手よ。ユグルにだって普通に生活してる人たちがいるのよ」


 様子を見ていたアイシャが話に割り込んできた。

 アイシャは眉間に皺を寄せて怒っている。

 さらにシエラまで話に加わってきた。


 なんだろうこの感じは。

 何か懐かしい感じがする。

 そうだ。これは学級会でクラスの女子に糾弾された時と同じ空気だ。

 否定も反論も謝罪すらも許されない、魔の時間だ。


 「あの、グラルド。わたしは、あなたに感謝しているけど、これ以上わたしと同じような人を増やして欲しくない……」

 「……シエラ、お前の希望を言ってみろ。どうしたい」

 「普通に生きている人達の生活を壊さないで欲しい……」

 「わかった。お前の言う通りにしよう」


 「おい、ただでさえ不利な状況だってのにそんな約束しちまうのか?戦争は綺麗ごとじゃ勝てないぜ」

 「一般市民や建造物への攻撃は禁止。勿論奴隷狩りや略奪も禁止。俺たちが獲るのは領地の支配権のみだ」

 「グラルド様、それはなんと崇高な戦いでしょうか。しかし、我々に未来はありませんな!はっはっ……はぁ……」

 「心配するな、へライオス。どうせ戦うのは俺だけだ」


 皆絶望に打ちひしがれた顔をしてる中、シエラだけは嬉しそうな笑顔を見せた。

 こんな笑顔を向けられたのは二回産まれて初めてだった。

 この子は、自分の命が危険に晒されることよりも、他人の命が救われることを喜ぶというのか。

 この笑顔だけは守らなければいけない。

 それが、俺がこの世界に産まれた理由なのだ。


 なんてことはないだろうけど、笑顔が可愛かったからやる気が出たのは事実だ。

 二回目の人生なんてどうせおまけのようなものだ。

 それなら、シエラの笑顔のためにがんばるというのも悪くないだろう。


 さて、どうしたものか。

 やると決めたら早くやりたくなるから不思議なものだ。


 早速明日ユグルに行ってみよう。

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