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9話 建国宣言してみました

 「さて、これより裁判をはじめる。ゴボル傭兵団の頭領ビバル。お前は領地侵入罪と集団暴行罪と誘拐未遂罪に問われている。弁明はあるか?」

 「ふざけやがって。犯罪者はお前だろ……」

 「無いってことだな。それではこれよりシエラがお前に審判を下す。シエラ前に出ろ!」


 シエラは身体を震わせながら立ち上がった。


 「お前がしたいようにしていい。どうする?」

 「……」


 シエラは何も言わなかった。

 手に傭兵から奪った剣を持ち、ゆっくりとビバルに歩み寄る。


 「お、おい。俺達はお前に何もしてねえだろ……剣を置けよ、なあ……」


 ビバルは丸太に縛り上げられ動けないというのに、足を必死に前後させて後ずさろうとしている。

 シエラは剣を抜いてビバルの胸に押し当てた。剣先が震えていた。


 「おい、やめろ!ちょっと刺さってるって!ほんとに!あ痛っ!」


 シエラは一度グッと剣に力を込めて、そのまま剣を落とした。

 それから、拳を握りしめて、ビバルの顔面を殴り付けた。


 「あんた達みたいなやつがいるから!お父さんとお母さんを返して!私の人生を返して!」


 シエラは泣きながら何度もビバルを殴り付けた。

 女の拳とはいえ、マトモにうけたビバルの顔は真っ赤に腫れ上がった。

 やがてシエラはその場に泣き崩れた。


 「ビバル、これがお前の犯した罪だ。ユートリアス王国は人の幸せな生活を奪うことを許さない」

 「わ、わかった。俺が悪かった……」

 「判決だな。ゴボル傭兵団の武具は全て没収!今後奴隷売買に関わらない事を条件に解放してやる!」


 ゴボル傭兵団はまさかといった顔で、仲間達と顔を見合わせた。


 「そ、そんな生かしておいていいんですか?また復讐しに来ますよこいつら」


 ドミニトが言った。

 俺はちょっと引いた。

 ずいぶん物騒な考え方をするやつだ。

 人の命をなんだと思ってるんだ。


 「シエラがそう決めたからそれでいい。それにお前達が欲しがっていた刃物と弓がいっぱい手にはいっただろ」

 「それは嬉しいけど……」


 ゴボル傭兵団の数人はこれ幸いにと走って逃げていった。

 しかし、他の傭兵達は座ったまま動かなかった。


 「グラルドとやらよ。俺達傭兵の利益の殆どは捕まえた奴隷の売買だ。奴隷売買を禁止されたら食っていけねえ」

 「だからなんだ?畑でも耕せ」

 「こいつらにそんなマメな事できるわけねえだろ……なあ、ユートリアス王国で俺達を雇ってくれねえか。頼むよ」

 「お前はバカなのか。適当に言い逃れして遠くの土地で商売すればいいだろ。俺の目の届かない範囲まで追いはしない」

 「傭兵は契約第一だ。奴隷売買をやらねえと約束したからにはやらねえ。しかし、それじゃ食っていけねえんだ。俺は頭領としてこいつらの面倒を見なくちゃならねえ」

 「お前さっき一人で逃げようとしただろ」


 俺とビバルのやり取りを見ていたへライオスが口を挟んできた。


 「私は、悪くない提案だと思いますな」

 「お前はそれでいいのか?こいつに恨みがあるだろ」

 「ゴボル傭兵団が規律正しいというのは、実際に捕まっていたから分かります。彼らは奴隷に手をださなかった。それに、確かにこいつの言っていたことは事実です。奴隷売買は犯罪じゃない」

 「犯罪じゃないから許せると言いたいのか?」

 「いいえ、捕まってしまったら諦めて奴隷になるしかない。そんな世の中を変えたいのです。このヘライオス、グラルド様の心意気に感服いたしました!ユートリアス王国一員として奴隷制の廃止を世界に訴えたい!」


 へライオスは真っすぐな目でそう宣言した。


 「お、俺もだ!」

 「私もよ!」


 他の者も同調してきた。


 しまった。

 半分その場のノリで言っただけなのに、皆が盛り上がっている。

 嘘だなんて言い出せる雰囲気じゃない。


 「これは引き返せねえな。どうするんだ?グラルド王よ」


 ビバルがニチャリと笑って囁いた。

 こいつなんかムカつくな。


 「いいだろう。ここにユートリアス王国の建国を宣言する!俺たちの戦いはこれからだ!」


 あれ、この台詞大丈夫か?


 こうしてグラルド王国は建国された。

 総勢百人くらいで男だらけの汗臭い小国だ。

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