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秘密の出会い.1

本編開始します

01




コードネームE-100は非常に興味深い青年だった。

100人いる私の部下の中でも、彼ほど目に止まる人間はいない。

容姿が目立つわけではない。

茶髪マッシュに丸メガネという、それだけだったらすれ違っても顔は覚えられないだろう。

至って普通だ。

その目を除けば。


彼の目は明らかに異質だ。

最初にそのことに気がついたのは、部下たちの前で行った集会だった。


100人もいたら、部下はよく変わる。

定期的に考え方を統一させるためには、集会をやることは必要不可欠だ。

どうせこいつらもすぐ死んで別のやつになるだろうなぁという考えで集会に望んだ俺の気は引き締まった。


壇上にたち、全身を黒に染めた部下たちを見渡す。

秘密結社に入るやつなんて信念がない奴らしかいない。

holdersが気に入らないとか、国立能力病院で治療を受けれなかったとか、そもそも犯罪者とか。

ゴミばっかだ。

つまらない目をしている。


彼以外は。


コードネームE-100。

彼の目は、目的を持った強い目をしていた。

そのメガネの奥に映る瞳は、僕を見ていなかった。


僕のその先、それこそコードネームA、いや、そういう次元じゃないのか?

秘密結社じゃない。

何か、その先の大きな。



こいつだ。

確信した。



こういう人間を求めていたんだ。



こいつを使って、秘密結社の秘密を暴こう。

天使代理戦争を終わらせよう。






(これで、holdersのスパイとかだったらどうしよ)


02



コードネームE-100に接触するのは困難だった。


僕は100人の部下を束ねる幹部なのだ。


秘密結社は、コードネームAを含めた26人の幹部によって形成されている。

そこから、それぞれの幹部が複数の部下をもち、莫大な人数が集まっている。

僕、つまりコードネームEもその幹部だ。


部下の人数が偉さを表すわけではないが、100人は中規模だ。

コードネームWが率いるのは1000人を超えているらしい。

そこまで行くと、わけがわからなくなるだろうと思うが、そこはいい。


100人でも十分多い。

僕が管理できるわけがない。


この中でもさらに10チームに分けて管理している。

僕はその10チームの中でのリーダー、中間管理職の奴らに指示をして生きている。


つまり、E-100程度の平社員と会話する機会はない。

というか、会うことすらない。

26人の幹部クラスになると、現場に行く必要すらないのだ。

彼と出会ってから1週間が経った。

最初の集会以降、彼をみていない。



(ずっと本社に引きこもってるから何も進まないのかな)




「報告は以上になります。情報部の奴らは、我々に情報をよこすことがないので、佐々木ショウの死についてはこれ以上調べることは難しいと思います」

「チッ。あいつらちょっとくらい知ってること教えろよな。結局こっちでも調べたら二度手間じゃないか」

「E様は幹部同士じゃないですか。なんとかしてくださいよ」

「幹部は幹部でいろいろあるんだよ」

「えー」


僕は10人の中間管理職の奴らを見た。

和気藹々と会議に参加していて、雰囲気は良好だ。

せめて、部下と会話するときは楽しくいたいという僕の考えがしっかり反映されている。


秘密結社で幹部同士の横のつながりはほぼない。

たまにくる命令にある程度従う必要はあるが、面識のある人の方が少ない。

というか、秘密結社のトップであるコードネームAやコードネームBは顔すら見たことがない。

僕らは誰だかわからない奴らについていっているのだ。





そこが、気に食わない。






「E様、佐々木ショウについては諦めませんか?情報部の奴らを超える知識を集めることはできないです。優位に立つことはできませんよ」

「そうですそうです。みんな浮かれてますけど、通常業務に戻りません?holdersには近づけないですもの」

「戻りましょう!」


「あー、わかったわかった。まあ、僕も浮かれてたよ。情報部に任せよう。どうせobserverがなんかしたんだし」


(秘密結社は関わって、ないんだよな?)


僕自身も幹部ではあるが、秘密結社全体を知っているわけではない。

佐々木ショウを殺したのに関わっていないという確信は持てない。

上層部は何を考えている?

なぜ情報をここまで規制しているのか?


(ちょっとくらい教えろや)


ため息もつきたくなる。



「E様。実は、面白い話があったんですよ」

「ほう?」

「Zについてです」



Z。

26幹部のうちのひとり。

そして、佐々木ショウが死ぬ前はZの話題で持ちきりだった。



Z-1とZはかなり強力な能力者だったらしい。

大学生をターゲットとして、金銭を騙し取っていた。

洗脳に近い能力を有していたようで、その力は大勢に影響を与えた。

宗教染みた集会を行い、1週間で数千万の金を騙し取った。


部下のE-1は、holdersに捕まったらしい。

Z本人は部下を切り捨て、全額コードネームAに献上したという話は秘密結社の中では有名な話だ。

Aへの忠誠心は関心を通り越して不気味だ。


「そういえば、金を献上して以降の話は聞いてなかったな。大金を何に使うかわかったのか?」

「いや、A様の行動については何もつかめていないのですが…。私の部下に、Z様を見たという物がいまして」


秘密結社に所属している人間は全てコードネームで呼び合い、本名を知っているものなどいない。

役員表などあるわけもなく、僕もZの顔は知らない。

というか、顔を知っているのも部下と知り合いの幹部が複数人程度だ。


会議に参加している中間管理職はともかく、その部下ともなるともっと顔を知らないはずだ。


「そんなの嘘に決まってるだろ?Zであると確信できる根拠がない」

「最初は宗教の信者なのかなと思ったんですけど、どうやら違うようでして」

「ふーむ?」



「Zが殺されたところを見た、といっているのです」

「はぁ?もっとましな嘘をつけよ。そんなことあったら、秘密結社中、大騒ぎになってるはずだぜ」


「そ、そうですよね。すみません。変な話しちゃって」

「いや、まあ気にするな。あー、話がそれたな。本日の議題へ移ろう」


発言した部下は、謝罪をしたのちにすぐに会議に戻った。

軽いアイスブレイクは終わり、我々の通常業務の話題へと移った。

こうして、僕たちは今日も秘密結社の歯車として働くのだ。




幹部にまで上り詰めたといっても、秘密結社の神髄に触れることはなかった。


(つまんねえ)


佐々木ショウが死ぬというとんでもない事が起きたが、それもすぐに風化するだろう。

holdersも一枚岩じゃない。

彼は人類最強の能力者とは言われてはいたが、いなくてもholdersは機能する。

observerと秘密結社の3団体の三つ巴は続くだろう。


そんなことを考えているうちに会議は終了し、解散となった。


「お疲れ様でした」

「ういー。お疲れー」

「E様、佐々木ショウの情報分かったら教えてくださいね?気になってるんで」

「わかったわかった」

「E様まで情報規制しないでくださいよ」

「あいつらと一緒にするなよー」

「ふふ」

「はははは。あ、そういえばさっきいってたはなしなんだけどさ」

「はい?」



何気ない疑問だった。

別にその話に興味があったわけでもないし、ただ話の流れで聞いただけだった。

その軽はずみで、今後の人生を大きく左右することになるなんて誰も想像することはできない。


そこそこの役職について、金をもらって、そこそこの幸せを謳歌する。

まあ、そういう人生も悪くなかったかもしれない。

結果的に、どっちのほうが幸せなのかはわからないが。


「Zの話してたのって、誰だったの?」

「あー。そんな話をしましたね。たしか、私の部下の、E-100だったと思います」




天使代理戦争は、始まったばかりだった。


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