第七話 ショッピング
「ライラちゃーん!!」
朝、いつものように登校すると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「スピカ……!」
朝はいつもスピカと顔を合わせるのが日課になっている。まあ、クラスが違う為、すぐに分かれてしまうのだが。
「アクタさんの調子はどう?」
「うん……! もう随分回復したみたい……!」
どうやら、【悪魔の贈物】は使用者にかなり重い後遺症を残すらしい。アクタはあの後退学処分となってしまったが、スピカはその後も彼女の家に通って看病していたらしい。
「それで……! 今日はライラちゃんにお礼しようと思うの!」
「お、お礼なんて……そんな……!」
「いいの! 私がやりたいんだから! それで、考えたんだけどね……」
スピカは俺の容姿を撫でるように見回す。
「服、買ってあげようと思って!!」
◆◆◆
放課後、俺たちは街に繰り出し、スピカに連れられたまま、可愛い感じの服屋に入っていった。
「あっ、これ可愛い! ああ〜でもこっちも捨て難いなぁ〜…………あっ! これも似合いそう!!」
スピカは店の中を早足で駆けながら、色々な服を物色している。
「よかったじゃないか。普通に生きてたら、女子に服を選んでもらうなんてなかなかしてもらえないぞ」
「い……いちいちうるさい……」
店の中にいるだけでも物凄く恥ずかしい……! 正直早く出て行きたいが、スピカの好意を無下にはできない……
「ごめん、お待たせ〜……色々迷っちゃって。さっ、試着しよ!」
スピカに押されるまま、俺は試着室に放り込まれる。
「って……なんでスピカも入ってきてるの!?」
「え? いや……ライラちゃん着方わからないかなと思って……男物しか着ないし……」
「そ、そんなこと……」
服なんてどれも一緒だろ。そう思ってスピカが持ってきた服を手に取る。
…………どうなってんだ? これ?
ニヤニヤとスピカが笑いかけてくる。俺の困惑を察されたのか……!?
「はいっ、じゃあまず服脱いで」
「はい……」
大人しく従うしかない。俺は女だ。同性に裸を見せて、なんの問題があるというのか。
「えっとまずは……って! ライラちゃんブラつけてないの!?」
ブラなんて一生つけたことねえよ……
「ちょっと待って……!」
スピカは一度試着室を出ると、新品のブラを購入して戻ってくる。
「はい、後ろ向いて。着けてあげる」
…………どういう状況……?
一体どういう人生を歩んだら、女子にプラジャーを着けてもらう経験なんか出来るんだ……?
「はい、出来た!」
うっ……女子はこんな窮屈なもの毎日着けているのか……?
「……ライラちゃん、細くて綺麗な身体してるよね……」
スピカの手が俺の生肌に触れる。
「ひゃんっ!!!」
「……?」
反射的に声が出てしまった。スピカは一瞬沈黙した後、俺の身体を後ろから弄るように触り始める。
「あっ……ちょっとやめっ……! いやっ……そこは……敏感だからあっ……!! んっ……はっ……やめっ……やめてぇ!!!!」
スピカの手が止まる。
「ご……ごめんごめん……! ついつい楽しくなっちゃって……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
女子はこんな遊びをいつもしているのか……!? いや……流石にないか……?
「はいっ、今度はちゃんと服着せてあげるから……!」
本当だろうな……?
そんな俺の心配をよそに、スピカは手際よく服を着せていく。
「よし! 完成!」
鏡の前には、自分でも驚くほど可憐な美少女が立っていた。
「ほら、猫ちゃんにも見せてあげて」
スピカがカーテンを開ける。
「にゃ〜ん」
その鳴き声はどういう意味なんだ……カマル……?
◆◆◆
翌朝、スピカに買ってもらった服を着て登校する。
……なぜかいつもよりも視線を感じる気が……
「ライラちゃん! おはよう!」
「あ……おはようスピカ……」
いつものように挨拶を交わす。
「すっごく可愛い! 似合ってるよ!」
スピカはキラキラした笑顔で褒めてくれる。
「うん……でもなんか……すごい視線を感じるっていうか……なんか変なとことか無い……? あっ、もしかして寝癖立ってる……!?」
彼女はキョトンとした顔でこっちを見つめた後、クスクスと笑い出した。
「フフッ……!! 違うよライラちゃん! みんな見惚れてるの!」
「見惚れてる……!? アタシに……!?」
「そ! あんまりにも可愛いから!」
「あんまりにも……可愛い……」
そう言われた瞬間、急に顔が熱くなる。
「みんなが……見惚れてる……アタシが……可愛い……みんな……見惚れて……」
なんだか頭がぐるぐるして、意識が無くなって、俺はその場に倒れ込んでしまった。
「えっ……!? ちょっと……! ライラちゃん!! 大丈夫!!!???」
◆◆◆
次に気が付いた時、俺は保健室のベッドに横たわっっていた。
「大丈夫? ライラちゃん?」
横ではスピカが心配そうに俺の顔を見つめていた。
「あ……うん……大丈夫……」
「アクタちゃんを助けた後も、ずっとクエストに出てたんだもんね……きっと疲れが溜まってたんだよ……私はここにいてあげるから、しばらく休んでて……」
「でも、スピカは授業が……」
「大丈夫大丈夫! 先生にも言ってあるから! それにこの時間、保健室の先生もいないし……」
「……どうして……そこまでしてくれるの……?」
そう言うと、彼女は目を丸くして、そして笑い出した。
「あははっ……!!」
「な、なんかおかしなこと言った!?」
「いや……アクタちゃんと同じこと言うんだなと思って……!」
「そ、そうなんだ……」
ひとしきり笑った後、彼女は向き直ってまた話し出す。
「ライラちゃんは、私にとって”二人目”の友達だから。だから、助けてあげなきゃって思うんだと思うよ」
「二人目……」
「私、周りの子と比べて才能無いみたいで、いつも見下されちゃってたんだ。私はもうそれが当たり前だと思って、才能無い子は誰にも好きになってもらえないと思って、諦めてたの。でも、そんな中でも対等に接してくれたのがアクタちゃんだった。あの子も特待生だったから、私のことなんか普通気にかけないはずなのに……」
「そうだったんだ……」
「そんなアクタちゃんを助けてくれたのがライラちゃんだった……! だから、ライラちゃんは私の人生で二人目の大切な人……」
「……アタシも、おんなじ感じかも……」
「え?」
「アタシも……今、ちゃんと友達って言えるのはスピカ含めて二人だけかもしれない……」
「……そう」
「だから……改めてよろしく、スピカ……!」
「……うん!」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「はよ更新しろ!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします!
面白かったら星五つ、つまらなかったら星一つ、正直な感想が今後の励みになります!
ブックマークもいただけるとはちゃめちゃに嬉しいです!
何卒よろしくお願いいたします!
この物語はフィクションです。薬物の使用を促進する意図は御座いません。