マス捕り名人を父に持つ奴には敵わない
俺とボスコは扉を開け放つや扉の影にさっと隠れ、銃撃をされた音が鳴ってから勢いよく甲板へと踊り出た。
「だーれが扉を開けた真ん前に正直に立ちますかって。」
そして俺達はミアに銃口を突きつけている男の目の前、甲板の舳先になる場所でにまで一気に走った。
「大事な女の割には動きが遅いねぇ。」
「人質抱いてりゃ、二連弾でも二発撃てないからね。馬鹿正直に動きませんよ。」
「この女を殺されたくなければ、今すぐお前ら船を降りろ。そうしたら、お望み通りこの船は国に帰ってやるよ。いや、もう帰り支度なのかな。」
「悪いなあ。船を動かしているのは俺の手の者だ。君の部下はそこでおチビさんを人質にしている奴だけしか残っていないんじゃないのか?ここで白旗上げてくれれば、捕虜交換時には生きてお国に帰れると思いますけどね。」
「ハハハハ、動かして沖に船を沈めるか。一般人も巻き込むつもりか?フローディアとアグライアは国際問題になるんじゃないのか。」
ドオン。
船尾で何かが爆発した。
船のエンジンが大きな音を立てて止まった音が響いた。
いや、船が壊れる音か?
「ハハハハ、失敗したら終わりなんだよ、全部ね!」
「きゃああ!」
男はミアを抱えると海へと飛び込んだ。
彼の部下も同じようにしてニーナを抱いたまま海へと飛び込んだ。
「畜生!待て!」
二つの水音が響く前に、俺も後を追って飛び込んでいた。
彼らは港に泊めてある漁船らしきものへと泳いでおり、その漁船からは彼らを助けるためかボートが漕ぎだされている。
「畜生!あれに乗られたらミアは連れ去られてしまう!」
俺は必死にクロールをして彼らに追いつこうとしたが、ボスコはとっても泳ぎが上手い上に速かった。
彼はニーナを捕まえる男にサメの様に襲い掛かって水中に沈めると、モタモタ泳いでいた俺の方向へと戦利品を咥えて戻ってきたのだ。
「すごいな。よくやった。」
俺は縛られているニーナの縄を急いで切ってやった。
意識の戻っていたニーナは手が自由になるや俺に抱きついた。
「フォルス様!」
「よしよし、大丈夫だ。ボスコ、ミアも頼む!っていない!」
ざばん!
「わああ!」
ボスコは俺に頼まれる前にミアを捕えていた男を海に沈めていた。
男の銃を掴む手首だけ水面から出ており、男は何かをボスコにされたのか、大きくびくりと動いた手は空へ銃弾を発射した。
ざばん!
今度の水音はミアを咥えたボスコが海面から姿を現わした音だ。
彼は再び真っ直ぐに俺の所に来たので、俺は愛する人の戒めも解いた。
「ああ、愛する人!無事でよかった。」
ミアは俺にしがみ付いて来て、俺は海にざぶんと沈んだ。
俺はニーナも抱えていたのである。
ああ!ニーナとミアが俺のせいで溺れ死んでしまう!
俺の襟元は犬に噛みつかれ、俺は犬によって海面から顔を出させて貰えた。
「あ、あぶ、ありがとう。」
ボスコは今度は俺にしがみ付くニーナの襟元に噛みついて引っ張った。
ニーナは俺のせいで海水を飲んで咽ていたが、ボスコの成すがままになって俺から離れてボスコの首に抱きつき直した。
ボスコはニーナがしがみ付くや、俺とミアを捨てて行った。
「おい!待てよ!」
「う、ふふ。ボスコはニーナしか見ていないのね。二年前もニーナに飛び掛かろうとしたのよ、あの子は。」
「そうなのか。君が狙いじゃ無かったなんて、目が悪い犬なんだな。」
「私も目が悪いわ。あなただったなんて。二年間ずっと想っていたのがあなただったなんて、どうしておっしゃって下さらなかったの?」
「男はね、時間が立つと髭が伸びるんだ。戦地帰りはもしゃもしゃ君で、それで次々と俺は振られてきたんだよ。君は俺がもしゃもしゃ君でもいいかな?」
「わたくしはもしゃもしゃなあなたと、従僕だと思ってたあなたの二人を愛してしまったの!二人だと思っていた時から二人とも大好きになっていたの!」
ミアは俺の首元にしがみ付いて、俺は再び溺れそうになった。
「ええと、続きは海から上がってからだ。幸せで死んでしまったら困る。」
ミアは快い笑い声を立てた。
俺はボスコの泳ぎの上手さを羨ましいと思いながら、もう一度助けに来てくれないかなぁと既に海から上がっているボスコを見つめた。
「さあ、行こうか。」
「どうすれば浮くの?私も泳いでみるわ。」
「いや、俺はボスコに負けたくない。俺にしがみ付いていて。」
ミアはぎゅうと俺に抱きついて来た。
ああ!
俺の胸板にミアの豊満でとても柔らかい良いものが押し潰されている!
俺はミアに溺れて海に沈んだ。




