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とにかく突っ込め!

 部隊は二つに分けた。


 力仕事が嫌だと言い張ったので、フィッツ様は密航者を捜す憲兵役にした。

 彼を通常の乗降口に向かわせて騒ぎを起こさせ、俺は貨物室への開口部から兵と一緒に突入したのである。


 とても静かに、敵兵や障害物を倒しながら、だ。


 静かな進撃途中で、俺達は俺の良く知っている女性とボスコに噛まれたらしき傷を持つ若い男の死体を見つけた。

 ベロニカも若い男も額に穴が空いていた。

 そして、ベロニカの頭が火傷の痕で酷い状態だったという事を初めて知った。

 俺は首に巻いてあるスカーフを外すと、ベロニカの頭をそっと包んでやった。


「閣下?あの、お知り合いで?」

「ああ。兄嫁だよ。どうしてこんなことになっているのか知らないが。」


 ベロニカがミアの誘拐に加わったのか、巻き込まれただけなのか。

 しかし彼女の本当の姿の痛ましさに、俺はベロニカがミアを誘拐していたとしても彼女には怒りも憎しみも湧いて出てこなかった。

 ただ、哀れだな、と思うだけだ。


「フィッツに知らせてくれ。これで大義名分が出来たと。俺達は殺人者を追う。伯爵未亡人を殺した犯人を庇い立てするものはアグライア公国に害をなす意思があるものと見なすと騒げ、暴れろ。この船は今からフォルス・アルマトゥーラ少将が接収する。」


 隠密行動はこれで終わりと命じられれば、元はイーオスの兵、彼等は俺のボスコ同然に船内を喜んで暴れ始めた。


 反対に、ボスコは優秀な追跡犬のままで怖いくらいだ。


 俺はボスコの走る後ろをひたすら追いかけながら、恐らくどころか一番偉い奴がいる場所は、偉ぶった奴が居座りたがる船長室だなと当たりはついていた。

 それが正解という風に、船長室迄の通路には敵兵が陣取っているではないか。

 船長室までの狭い通路で俺達は暴れ、船長室の扉の取っ手に手がかかるまであと一歩のところとなった。


「フォルス!」


「ミア!」


 俺はミアの声に船長室に飛び込もうとして、イーオスの兵に抑え込まれた。


「体当たりしては体を壊します。待ってください。扉は俺達が破ります。」


 海賊家業で他船侵略に慣れている男達は、なんと丸太を担いできていたのだ。

「うわあ。」


「それ、扉を破るぞ!」

 紐をつけた丸太を破壊槌にして男達は船長室のドアを破った。


「どうぞ!閣下!」


「ありがとう!」

 わおん!


 俺とボスコは飛ぶようにして破られた扉の中へ入った。

 顔に殴られた痕のあるミアは頭を掴まれており、ニーナは床に転がっている。


「貴様!彼女から離れろ!」


 男は腰に下げていた銃を引き出すとミアの頭に突き付け、彼の部下らしき男はニーナを掴み上げると俺達が入って来たのとは別のドアを開いた。

 彼らは俺等を威嚇しながらその扉から次々に出て行ったが、そこは一般客がふらふらしている通路でもある。


「待て!この野郎!」


 俺とボスコは大事な人を人質に取ったろくでなしを追いかけ、急に船が動いた事で少しバランスを崩した。


 バシュン。


 足元の絨毯で弾丸が弾け、俺はボスコに飛び掛かって次の弾丸を避けた。

「ぎゃあ!」

 流れ弾に誰かが当たった悲鳴だ。


「みんな動くな!流れ弾に当たりたくなければ伏せていろ!」

 俺は大声で叫んだ。

 バタバタと一般客が床に伏せる音が聞こえ、ボスコを抱き締めながら物影に隠れている俺は少々ホッとしながら耳を澄ました。

 恐らくは甲板に出ていくだろうと、俺は敵が廊下を移動していく足音を聞いていたのだ。

 二連式銃を持っている奴と丸腰の俺ではそれなりの距離は必要だ。


 あの銃は近距離じゃ無いと当たらないというものなのだ。


「よし、甲板に出た。俺達も突っ切るぞ!」


 銃をどうして身につけておかなかったと反省しながらボスコと廊下を走り、俺達を狙っている銃口があると知っていながら甲板に出る両開きの扉を開けた。

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