俺達は走るしかない
数キロ地点で俺はボスコと合流した。
ボスコはどこに彼女達が連れ去られたのか確信しているかのように迷いもなく走っており、俺は馬の足をボスコに合わせた。
「このまま東って事は海か。何者か知らないが、誘拐犯はそこから外国かどこかに逃げるつもりなんだな。」
海賊王だと異名を持つエグマリヌ男爵の領地には、当り前のように港町も存在している。
元々その小さな港町、ストゥルティで始めた海運会社であるのだ。
男爵位を与えられる時、イーオスは与えられる領地がストゥルティに関係のない内陸の場所にあったことで一度は断った。
普通は王から賜るものを拒否した時点で反逆罪にもなりそうなのだが、そこは商売人のイーオスである。
陛下へ異国の貢ぎものを添えて口上をぶちまけたのである。
敵国の船から奪ったとみられる敵の海軍士官殿である。
「あなたのために始めた海運でございます。遠く離れた領地であなたの為に領地の管理で忙殺されてしまいましたら、あなたの領海を守るための行動を起こす事が出来ません。」
その士官が陛下の大事な船を沈めた張本人であれば、陛下がイーオスに足かせとなる領地を与える事を諦めるのは当たり前だ。
さらに、彼がもっと動きやすくなるであろう首都近くでストゥルティを含む領地を与えるのは考えるまでもない事だ。
新たな領地は首都近くであっても農耕にはそれほど適しておらず、この領地を管理していた元の領主は、イーオスが与えられる予定だった領地を交換してもらえると聞いて喜んで領地の交換話に乗った。
その男がイーオスの親友で農業の発展にこそ力を注いでいると聞けば、俺は最初からこの二人が組んでいたと考える。
その男も飛び地となる領地を管理するよりは、隣接する豊かな土地を貰えて管理する方がありがたいのだ。
イーオスの領地について考えているうちに俺達の鼻は強まった潮の香りを感じ取っており、今や俺とボスコの視界には青い海が煌いている。
ミア達がここにいるのだと俺に訴えるようにして、ボスコは俺を見上げてウワワワンと大きく吼えた。
「数日後に万博開催を控えているにもかかわらず、イーオスが何度も首都と領地の往復をしたのは訳があったのだな。」
そう呟いてしまうのは、ストゥルティの港には見覚えのない大きな船が停泊しており、無精髭を生やして小汚くなった親友が俺の姿を見つけたと近づいて来たからである。




