首都への道
急な知らせは手遅れな不幸の知らせな事が多いが、俺のリーブスの知らせならば、不幸というその暗雲を打ち払う猶予を与えてくれるものだろう。
だからこそ彼に呼ばれたならば、俺は名前を呼ばれた犬のように必死に早馬を走らせなければいけないのだ。
電報の簡単な文面は、最初の文章以外意味が解らなかったが。
「スグモドラレタシ。アガートコウシャクフジンガメンカイキボウ。」
アガート侯爵夫人が俺に一体何の用事だというのであろう。
個人的に面識はないどころか、偏屈で社交界には全く出てこない人なので、人となりどころか風貌さえも謎の人である。
「アガート侯爵には数回ほど挨拶はしたけどねぇ。」
俺が少将になってしまったのは、元帥閣下であるアガート侯爵がご隠退されたことで軍の階級が動いてしまったからである。
よって武勲をあげて出世したわけでない少将の位はあまり好きでない。
いらないのに中将になりたい上司に買えと言われれば、俺は渋々だが買ってやるしか無いではないか。
「買った位にぶーたれることができるなんて、平和だよなあ。死んで二階級特進と比べりゃあ、物凄く幸せな話だ。結婚したら売ろうかな、少将の位。」
俺はカミラに言わせれば芸術的素養も無い荒くれらしいが、きれいで可愛らしいものは大好きだし、日がな一日絵を描いてのんびりしたいという夢は誰にも言ったことは無いがずっと心に抱いている。
画板を持って花盛りの野原に出掛け、美しい妻とピクニックをしながら下手糞な絵を描いて遊ぶ。
俺は外に出ているのに、きっとミアの顔だけを描こうとするだろう。
「だが、俺には絵心が無いんだよねぇ。」
ブルル。
俺のぼやきが煩いという風に唸り声を出したのは、丸一日は俺を乗せて走らされることになるフィッツの愛馬である。
戦場で情報を持って走り回った彼の馬ならば、一分一秒でも早く俺を首都に運び去り、事が済んだ時には風よりも早く俺をミアの元に運んでくれるだろう。
「頼むよ。ネルソン。俺がすぐにミアの所に戻れないと、フィッツがミアを口説き落としてしまうかもしれないんだ。」
そこで俺は自分を馬鹿にしたように笑った。
ミアは心に想い人がいると再会したあの日に言ったではないか。
あの何でも墜としてしまうフィッツに口説き落とされる事も無い恋心なのだとしたら、その恋を捨てて俺へ愛を傾ける事など絶望的に無いだろうに。




