フォルスは走る
三日ぶりのミアは眩しいどころでは無かった。
輝けんばかりの白い肌に、ゆったりと今風に結い上げたアッシュブラウンの髪は天使の輪っかもみえるくらいに艶やかで、俺の夢の存在そのものだった。
ああ、ミアはなんて優しく幸せそうに微笑むことが出来る人なのだ。
どんなに不幸でも、彼女はいつも笑顔でいようとする。
俺はそんな彼女の心意気も愛している。
そして、あのスタイルは何だ!
ぶくぶくなんて酷い事を言った奴よ、あれが真実の姿だ、真髄なのだ!
ゆったりとした流行のドレスでありながら、細く妖精のような体付きだと想像できる体つきではないか!
胸以外。
――男の人は胸が大きければよいという人もいますからね。
カミラの失礼な物言いが頭に蘇ったが、今の俺は、はい、いくらでも罵って下さい、と地面にひれ伏そう。
俺の頭の中はハレルヤ万歳斉唱で大騒ぎなのだ。
ああ、俺の愛した人は天使で妖精で女神だった。
ミアは俺の顔を真っ直ぐに見て、俺の素顔に驚いた顔をした。
俺の素顔?
俺は髭もカツラも外していたと気が付いた。
うわあ、とにかく頭を下げて、召使の振りでもして下がろう。
まだ早い。
俺はまだ彼女の愛を獲得していない。
これから花開くミアの為に、俺はまだまだ無害な保護者でいるべきなのだ。
俺に脅えて萎縮してしまったら駄目だろう?
俺は急いで庭の木立の中に身を翻すと、庭から駆け抜けてサンルームとは違う入り口から屋敷に入り込み、サンルーム目掛けて再び駆け出していた。
カツラと髭も装着した。
さあ、無害な婚約者として!いざ征かん!
嫌われて脅えられるよりも、俺は安心できると言われて彼女の横にいたいのだ。
愛など一生獲得できないのかもしれないが。
 




