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間抜けなもしゃもしゃ君
ニーナのボスコに似ているという酷い言い方にがっくりと来たが、ミアが安心できるのは俺がその姿をしているという所で、俺は自分の失態にようやく気が付いてしまっていた。
フィッツめ。
奴がカツラと付け髭なんか贈ってくるから、俺はまんまとそれを付けたままミアとニーナに、こんばんは、をする羽目になったではないか。
その上、この姿だから怖くない、安心できる、とまで言われてしまったのだ。
俺は彼女と結婚するためにもしゃもしゃ男になっていたが、彼女と結婚するためにももしゃもしゃ男でいなければいけないらしい。
どうしよう。
だが、彼女には恋をした男がいるのだ。
ボスコがニーナの心を掴んだように、ボスコに似てしまったこの外見でミアの心を掴まなければいけないのか。
どうしよう。
俺は一生もしゃもしゃ君で生きていかなければいけないのだろうか。