表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

茅根家と食事

 千夏の部屋で特に何も起こらず約一時間後。

 扉の向こうから声が聞こえた。


「ご飯出来たからおいでー。」


 その声は春の声だった。

 それを聞いた千夏はベッドから立ち、


「それじゃ行こっか。」

「うん。そうだね。」


 悠と千夏はリビングに向かい、テーブルには既に料理が並べられていた。そして、既に座っていた千夏の妹の優子は悠を歓迎してない様子だった。


(なんかめっちゃ睨まれてるんですけど……!?)


 悠は優子から目を逸らし、椅子に座る。

 座ると同時に悠にしか聞こえない大きさで舌打ちをする優子からなるべく離れるように椅子を動かす。


「それじゃあ、いただきます。」


 拓の一声にみんなもそれに合わせて、食べ始める。


「悠君。」

「はい?」


 声をかけて来たのは春だ。

 春は不思議そうに悠をじろじろ見た後、言葉にする。


「どこかで会ったっけ?」

「う………。」


(会ったって言いたい。でも、新垣悠の姿では初めて会ったのは入学式の時なんだ。前世で会ったって言っても、きっと信じてもらえない……)


「初めてお会いしたのは入学式です。それ以前は会って無いと思いますよ?」


 悠は言いたい気持ちを堪え、春の問いを否定する。

 そうすると春は不思議そうに頭をひねる。


「そーだっけー?」

「そうですよ。」


 春に微笑み、自分の言いたい事を隠す。


(雰囲気から感じ取られたのか?いやでも、田中負拓と新垣悠には違いがありすぎる……。じゃあなんで?)


 悠は不思議に思いながらも料理をいただく。


「……美味しい。」


 自然と感想がこぼれる。

 それを聞いた春は嬉しそうに。そして拓はうんうんと頷いていた。



「そう言えば悠君が千夏のあの事をどこで気づいたの?」


(あの事って……悪千夏ちゃんの事か。)


「それは本当にたまたまで……廊下を歩いている時、外で千夏ちゃんが愚痴をこぼしているのが聞こえて。」

「お姉ちゃん、そんな所で愚痴こぼしてたの?」

「その時は……本当に疲れてたの…………。」

「そ、そうだったんだ。」


(それで疲れて愚痴を吐いていた千夏ちゃんをたまたま俺が見てしまったと。これは偶然だったのか、それとも見てしまう運命だったのか……。)



 その後も会話は続き、茅根家の温かさを感じながらも、昼食を食べ終わり、帰る事になった。


「それじゃあ。お邪魔しました。」

「また遊びに来てねー。」

「別に来なく–––––」


 優子が何かを言っているのはわかったが、声が小さく、言葉の全体を把握出来なかった。


「あっ、私送っていくよ。」

「ん。ありがと。」

「悠君。」


 悠が靴を履いていると後ろから拓の声が聞こえ、振り返る。


「はい?」

「千夏をこれからも頼むよ……。」

「––––はい!」


 大きな返事をした後、悠は扉を開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ