プロローグ~その1~
「いやぁ~・・・今日も道場長、厳しかったなぁ。さて先輩方も風呂入り終わった事だし俺も」
本気日本プロレスに入門して早三ヶ月。
某ライオンマークの国内最大団体の新弟子になれず挫折しかかっていた時に声を掛けてもらったはいいものの、蓋を開ければ某団体の若獅子も裸足で逃げ出す基礎トレーニングと受け身の練習の日々。
同期?
入寮初日に夜逃げしたよ、けどライバルが減ったよ!やったね!!
(でもその分エンドレス雑用が待ってたんだけどね)
「ふ~・・・まぁでもおかげでプロレスラーとしてスタートきれた。でもここで骨埋めるつもりは毛頭ねぇ、待っててくれよ・・・『ボス』‼️すぐにアンタから『ウチに来い』って声掛けて貰えるレベルになってやるぜ‼️(チャポン」
湯船に浸かりつつ先輩方に聞かれたら張り倒されそうな事を言う。
『入りたての小僧が戯言抜かすな!』、『そもそもボスってみのるの事か!?あんなクソ野郎のどこがいいんだ!』、『てめぇから鈴木軍入りたい?頭腐ってんのか!』
あらんかぎりの罵倒が脳裏をよぎる。
俺の目指す場所はそういう所だ。
『鈴木軍』
プロレス界に悪名轟くヒール軍団(当人たちは「やりたい事やってるだけだ!」とヒールだベビーフェイスだと言われるのを嫌がっている)
ボスである『プロレス王』鈴木みのるを筆頭に『愛を捨てた聖帝』タイチ、『疾風のテクニシャン』TAKAみちのく、『英国の若き匠』ザックセイバーjr、『ならず者ルチャドール』エルデスペラード、『ヒールマスター』金丸義信、『THEアメリカンサイコ』ランス・アーチャー、『ブルドッグ二世』デイビー・ボーイ・スミスjr・・・国内外のそうそうたる強者が名を連ね現在は某国内最大団体の『宝』を全て手に入れるべく参戦中なのである。
「俺が入ったらそうだなぁ・・『黒き龍帝!工藤龍牙ぁああ!!』とアナウンスさせよう、そうしよう。コスチュームもタイチさんみたいに黒で染めてさ(ニンマリ」
鈴木軍の面々と共にリングインするのを想像するだけでにやけてしまう。
龍帝じゃ聖帝と被る?同じユニットに帝が二人いるってどーなの??
まあ、細かいこと気にしても仕方ない。
そもそもプロレスラーの通り名、二つ名なんて言っちまったもん勝ちな部分があったり無かったり・・・
「まぁそれもまだまだ先だけどね、さてと風呂上がりの牛乳割りプロテインをキメて(グビグビ)・・・ぷはっ!先輩方の洗濯物、洗っちゃいますかね(ゴシゴシ」
先輩方の練習着を予洗いしつつそんな事を口にする。
そう、この時はまだ思っていた。
この先しっかり練習を積んでデビューをして、前座試合をこなして経験積んで、海外武者修行・・・は会社の懐事情的に無理だろうけど、だったら他の団体に乗り込んで、そもそも自費でメキシコにでも行ってそこで結果出して、帰ってきて行く行くはタイトルに絡むようになって、最終的に鳴り物入りで鈴木軍加入。
そんな日が来ると。
まぁ、実際は来なかったんだよね。
そもそも・・・『この世界にお別れする羽目になっちまった』からね。