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蟲の王に、俺はなる!  作者: グリー
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決意と進化

俺は今、あてもなく歩いていた。


突如現れた巨大な蟲のせいで自宅が破壊されたせいである。

ついさっき分かったことだが、あのカブトムシの幼虫(仮)は夜になったら穴から這い出て来て、そこら中を歩き回るらしい。

今までは夜は葉っぱの上で過ごしていたので気づかなかったが、あの葉っぱが破壊された以上、別のホームを探さなければならない。


近くにはたくさんの葉っぱがあるが、あの蟲を見てしまった以上、そこをまた拠点にするのはできるだけ避けたい。

俺は、死ぬわけにはいかないのだから。

慎重すぎると言われようが、できる限りのリスクをなくしてしまいたかった。


それに、進化の問題もある。

進化をするには一日中あの繭の中に閉じ籠もらなければならないのだ。

それを考えると、尚更適当な場所に住居を構えるわけにはいかなかった。


2時間ほど這って、ようやくまともそうな場所にたどり着いた。ここは川の近くの、苔石が転がっているスペースである。

近くの石を転がして、ちょうど進化個体が三体は入るようなスペースを作り、隙間なく苔石を積んでいって完成させたものだ。

これだってまだ安全とはいえないが、ないよりはマシだろう。中の空洞をここまで大きくしたのは、万が一進化した時にあの進化個体より大きくなってしまい、天井を壊して生き埋めになる。なんてことを避けるためだ。



こうして、静かな場所で一人じっとしていると、さっきの光景を思い出してしまう。

まるで夜になったと錯覚してしまうほどの大きさを持った蟲。

奴はただただ理不尽に俺たちを虐殺していった。

この世界で生きるということは、そんな理不尽に対して常に身を晒さなかねばならない。

あの進化個体だってそうだ。進化して、強くなったところで、さらにさらに強いやつにまるで暇つぶしのように殺されるだけだ。


さっきの光景は、俺にそんな絶望を与えるに十分なインパクトを持っていた。

怖い。ただ、ひたすらに怖い。

俺は元の世界ではただの人間だったんだ!

こんなわけのわからない幼虫なんかじゃなく、ただの高校生だったんだ!

こんな理不尽な世界で、生きていけるはずがないんだ!



そこまで考えて、俺はようやく気づいた。

同時に、こんな風になるまで気づかなかった自分にも嫌気がさす。

この世界で生きてゆく以上、誰もが理不尽にその身を晒される。

例外なく、



そう、若月瑠璃だって例外なく。



それは、だめだ。

たとえ俺が死のうがそれだけは許容できない。

俺はいつも彼女に支えられて来た。

両親が死んで、ヤケになって、そんな時でも彼女はそばにいてくれたんだ。


ああ、俺はなんで気づかなかったんだ。

俺は、強くならなかねばならない。

たとえどんな理不尽があろうとも、彼女を守るための力が俺には必要なんだ!


まだあの蟲に対する恐怖は残っている。あの超巨大生物ですらここの生態系の一部でしかないことには絶望すら通り越し、呆れすら感じる。


だけど、俺は戦ってやる。すべては、愛する彼女のために、あの笑顔の為に!



俺は、蟲の王になってやるよ。



もう、恐怖はなかった。

その決意を胸に、俺の意識は闇に堕ちていった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


気がつくと俺は真っ暗な空間にいた。

まるであの時、転生について説明された時の空間と全く同じだった。金縛りにあったように全く動かなくなっている。


そして、目の前に憎たらしい天使(悪魔)いることも含めて。


「いや〜お久しぶりです♪元気にしていましたか?」


返事をしようとも体が動かない。もっとも口が開いたところで皮肉か、罵詈雑言しか出てこないだろうがな。


「早いですね〜、転生者の中ではあなたが一番早く進化までたどり着きましたよ〜♪」


「では☆これから、あなたには進化先を選んでもらいます!全部で5つ ある進化先から一つ選んでください!」


「1番速くここに来た特典として、進化先を選んだ後に、3つだけ質問を許しましょう☆」


!!、驚いたよ。

この天使(悪魔)は進化まで担当するのか。

いや、今はなによりも質問が大事だ。

うまくすれば瑠璃との再会にグッと近づくかもしれない。


「では、進化先を発表します♪」


「甲殻虫

攻撃力と回復力の両方を兼ね備えた虫!

なによりも5種類の中でトップの防御力!

素早さと魔法については残念ですが生き残るに適した進化先です!」


「毒虫

魔力全振り!

毒を使いこなすうえ、進化すれば魔法を使えるかも?!近接にすごく弱いですがハマれば強いです!」


「隠れ虫

隠密タイプ

気配や自分の色を変えて、油断した敵に強烈な一撃。でもすこし打たれ弱いかも…。」


「蟷螂虫

圧倒的な攻撃力と素早さ!

完全なるアタッカーでありその火力は5種の中でトップ!進化では遠距離でも戦えるかも!?だけど回復力と防御力には注意が必要ですよ!」


「巨大虫

とてつもない回復力とステータス!!

なによりもとんでもなくでかい!特殊なスキルはありませんが、その戦闘力は他の進化先に引けを取りません!…進化についての質問だけは受け付けましょう

どうぞ。」


進化先はだいぶあるらしいな。

なによりもすべて差別化がなされており、下手に選ぶと痛い目を見そうだ


「質問いいか? 人型になれるのはどの種族なんだ?」


「どの種族を選んでも人型になれます☆ですがどのみち今回選んだ種族の特性を持つことになります♪」


「スキルは引き継ぐのか?」


「イエス☆、なので今あるスキルを考慮して選んだ方がいいでしょう」


「進化はこれで終わりなのか?」


「ノン☆、まだまだ続くので、慎重に♪」


よし、大体の進化先は決まった。

俺が今持っている4つのスキル的に、蜘蛛、毒虫は除外していいだろう。ならば残り3つ。

この中から死ににくいのは甲殻虫か巨大虫だろう。

だが、巨大虫は自分より1だけ進化した個体が出ただけで詰んでしまうな。


「俺は、甲殻虫にする」


「はい、この選択は後戻りできません。Bボタンを押しても無駄ですよ?」


なぜ天使がポ○モンの進化キャンセルを知っているのか疑問は尽きないが。


「ああ、構わない」


「かしこまりました〜☆では、進化先も決まったので質問をどうぞ!」


ようやく、質問の時間が回って来たか。

たった三問ほどしかないチャンスだ。無駄な質問だけは避けたい。

今一番知りたいのは瑠璃の居場所と転生した種族だ。

だが、俺の生命線であるユニークスキルの事や、

この、虫という種族についても知りたい。


そして、転生したときから、ずっと気になっていたことがある。これを放っておくと、どうすればいいかわからなくなってしまう。


だが、これらの質問は、なんとかすれば3つにまとめられるかもしれない。


「なら、質問するぞ。若月瑠璃の転生について

詳しく教えてくれ。」


これでどうだ。

2つをまとめたせいではっきりしなくなったし、これがアウトだったら目も当てられないが。


「お答えしましょう☆彼女はなんと!確率にして0.3パーセントを見事引き当て、半悪半人という種族に転生しました♪

今は生後五日の赤ん坊として、大陸北西の国、

グレアム王国に住んでいます!」


半悪半人だと…。とても不安になる響きだが、今の俺にはどうすることもできない。

だが、種族や居場所がわかったのはとんでもないチャンスだ。俺が彼女を探す段階になったとして、

グレアム王国とやらから徐々に探す範囲を広げらば良いのだから。


「次の質問だ。この、虫という種族の特徴。そして

ユニークスキルとはなんなのかを教えてくれ。」


これは…だいぶグレーゾーンだな。1つの質問に2つ聞きたいことがある。

答えてくれるかさえ微妙な質問だが…。


「まず、あなたは魔蟲という種族に転生しました☆

魔蟲の特徴は、圧倒的な生命力と多彩な種類です。

例外を除き、一回の進化ごとに加速度的に強くなります。最大規模の蟲達は、古龍にも引けを取らない程の強さを誇ります。」


「次に、ユニークスキルとは、すべての生物がまれに

獲得しているスキルです。魂の記憶が強く発露した形となり、それ故に前世のことが反映されます。」


ユニークスキルは、魂の発露…。

ユニークスキルについて考えていると、天使(悪魔)と目があった。

奴は俺のと目が合うと、途端に破顔してこう言いのけた。


「あなたに、1つだけいい情報を与えます♪

若月瑠璃のユニークスキルは、あなた達の中で最も強力な物です!なのであなたは、安心して自分の強化に励むといいでしょう☆」


なっ!

瑠璃のユニークスキルについては俺も気になっていた。俺たちの最大のアドバンテージは、ユニークスキルに他ならないのだから。

だが、なぜそんなことをこの天使(悪魔)が教えてくれるのか。

俺のそんな視線に気づいたのか、天使が続けて口を開く。


「それは、私があなた達を気に入っているから

ですよ☆。」


そう言って天使(悪魔)は笑う。

こいつに気に入られるというのが、どんな意味を表すのかわからないが、有益な情報なのには間違いなかった。

これなら、最後の質問に答えてくれるかも知れない。


「なら、これで最後だ。もし、


転生者を殺してしまったらどうなるんだ。」


そう言った瞬間、天使がキョトンとした顔をした。

そこから、先ほど以上に笑顔になって行く。


そう、俺は最初の時からこれが気になっていたんだ。

人型でなければ誰がクラスメイトかはわからない。

なら、知らずに相手を殺してしまうかも知れない。

そうなったら、一体どうなってしまうのか。

だが、天使(悪魔)の答えは非常だった。


「どうにもなりません。ただ、種族に関わらず莫大な経験値が手に入り、ユニークスキルが一段階成長するだけです。」


それは。


つまり。


クラスメイトを殺せば簡単に強くなれる。なれてしまう。

ああ、この世界はどこまで残酷にできているんだ。

なんてくそったれな世界なんだ!

そんな俺の心境を横に、いつもよりも上機嫌の天使(悪魔)が言った。


「質問が終わったのであなたは元の世界に帰ってもらいます。それでは、いい旅を。」


あの時と同じように周囲の壁が光り始める。

俺は間も無く元の世界に飛ばされるのだろう。

薄れ行く意識の中で、俺は天使(悪魔)の声を聞いたような気がした。



「…これだから、あなた達は面白い。今回のことで私はますますあなた達を気に入ってしまいましたよ。」






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