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トリカゴの中  作者: アメリ
1/3

第一話『脳が腐ってく』

---ガタンガタン。


電車に乗るといつも考えることがある。


それは、みんなみんな自分が大事だってこと。


優先席付近で

悪びれもなくスマホをいじっている学生。


足が悪いおばあさんを目の前に堂々と座っている中年男性。


荷物を持ってつり革を握っている妊婦さんに目もくれない人々。


そして・・・それを見ているだけの私。


誰もが自分が大事で自分が一番。


そんなの昔からわかっていた。


それでも悲しくなるのは

なんでだろう・・・。


--------------


本郷なつき、21歳。


私の家は昔から貧乏で、

両親はお金のことでよくケンカしていた。


そして、大好きだった母の不倫、大好きだった父の母への暴力を日々見るようになった。


今思えばこのときから人ってこんなに変わるものなのだと

人を信じることができなくなってきていたのかもしれない。


結局、両親は別れてしまった。


兄は母と実家に残ることに。


私は父の祖母がいる名古屋へ父と一緒に行くことになった。

家族バラバラになってしまったのだ。


行った先には叔父夫婦とその子供もいた。


祖母は、反対したにも関わらず結婚した父の事を

あまり良く思っていないようでその子供の私も

あまり可愛がれることはなかった。


祖父は私が生まれる前に他界しているのでいない。


そんな中私たちは新しい生活をそれぞれスタートさせた。


転校先で友達はすぐにできた。

友達はすごくよくしてくれた。


でも友達の母親達はそれを許してはくれなかった。


転校した先の地域では母親付き合いがとても大事で

母親のいない私は母親達にとって卑しい存在だった。


直接はっきりと言われることはなかったが

友達の家に何人かで遊びに行くと他の子にはおやつが配られたのに

私にはなかった。


楽しそうに友達と友達の親が会話しているのを

一人寂しく友達の部屋でうらやましく聞いていた。


泊まりにいこうものなら

シャワー中にガスを切られたり

夜中に母親達が私や、父や、母の悪口を言ってるのが聞こえてきて

辛くなって夜中に何時間もかけて泣きながら家へ帰った。


はじめてできた恋人も

「親が勉強集中しろってうるさくて・・・」


その翌月に彼女ができていた。


家に帰れば、やってもいないことで叔父夫婦から怒鳴られ

手伝いをすればそうじゃないとよく物を投げつけられた。


父親が帰ってくると何事もなかったかのように

「よく手伝ってくれるんですよ~」と笑みを浮かべて話す。


何が悲しかったかって

それを見てみぬフリして叔父夫婦の子供だけを可愛がっている祖母だった。


私は誰からも愛されてないんだと思い知らされているようだった。


中学を卒業したら絶対にすぐでてってやるんだって心に決めてた。


そして中学卒業後、高校には行かずに

喫茶店や居酒屋、カラオケ屋、ガソリスタンドいろんな仕事を掛け持ちした。


貯めたお金で家をでて一人暮らしをはじめた。


そして何ヶ月か過ぎた頃

バイト先の先輩と付き合うことになった。


その先輩は私の家の事情も知っていて

とてもよくしてくれたし、相談ものってくれた。


ある日、妊娠したことがわかった。


その人も喜んでくれて、すぐに籍をいれた。


私もこれでやっと幸せになれるんだってとっても嬉しかった。


でも違った。


不倫され、でも人間ってこういうものだからって我慢した。


そんな環境下子供を産んだ。


産後すぐに彼の実家にいくしかなかった。


彼は不倫相手のところに頻繁にいくようになった。


彼の実家では祖父母と、彼の父がいる。

祖父は認知症でご飯を食べたことも忘れるしトイレや食事もきちんとできないほどだった。

祖母は、私に家事のすべてを押し付けた。


真冬の寒い時期、

光熱費がもったいないからと食器を洗うのも水、

お風呂も旦那の家族が入ったあとの湯船で洗いなさいといわれシャワーは使えなかった。


産後間もなかった私は旦那の家にきて

1週間もしないうちに多量出血した。


怖くなって、旦那に電話したが出ず、

息子は泣き、下の階からは旦那の祖母がはやくご飯つくってと叫んでいる。


恐怖だった。


この家で息子を置いて死んでしまうのではないかと。


そうしたらこの子は一体どうなるのか・・・。


不安で仕方なかった。


・・・もうここを出ようそう決めた。


籍を入れた時旦那に渡していた私の通帳がある。

それで家を借りて息子と二人で暮らすんだ。


下腹部がズキズキするのに耐え、冷や汗をかきながら

通帳を探した。


「あった・・・。」


やっと見つけた通帳。


その残金は




165円だった。



きっと、旦那が使ってしまったのだろう。


結婚する前からいくつもかけもちして貯めていた私の貯金。


あんなに理想だった彼はもう私の中からいなくなってしまった。


お金もない、病院もいけない、子供もいる。


このままじゃどうにもならないと思った。


父に電話した。


父が貯金をくれた。



それで地獄だったあの家をでることができたんだ。


それまでにたくさん泣いた。

息子も2歳になったある日。


元旦那から電話がきた。


「子供の事で話があるから会えない?」


養育費の件だろうか、それとも今更人権を・・・。


とりあえず私だけの問題じゃないのは確かなので

一度会うことにした。


そこで彼がとった行動は

子供の話し合いなんかじゃなかった。


ただ、やりたかっただけ。


無理やりではあったがまた二人目を妊娠してしまった。


訴えようかとも考えた。

でもこの子たちの父親はこの人であって

この子たちが後々父親は罪人だったんだって思われるのが怖くてやめた。


それに息子がいる以上無理やりされたという

証拠もなかった。


弁護士費用だって用意できない。


もう二度と彼に会わないことを決め二人目を一人で産んだ。


それからというもの

もう誰も信じられなくなった。


違う、信じることをやめたんだ。


なにかある度に疑って

友達なんか利用するものだってずっと思って生きてきてる。


もう誰も絶対に信じない。


絶対、絶対、絶対に。







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