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白千と哲学と林檎

作者: 津島



「君は、之は何だと思う?」



美しい銀髪の少年は片手に林檎を持ち少女に問い掛ける


「これ…って言っても林檎でしょう、それ以外の何者でもない、林檎」


遂に頭がどうかしたの?と茶化した様に笑い、抑お前が哲学的な考え方をするなんて珍しいじゃないか。と付け加え


「頭はどうかしてないさ、思った事を君に解いてもらいたいだけ。

先程君は【この物体】を林檎と言ったね?」


「あァ、言った。訂正する事も無い。【それ】は林檎だよ」


「ふぅん…。じゃあ【これ】は林檎と名付けられた梨だったら?」


林檎を手のひらでころころと転がしながら少年は話す。

口から漏れる言葉は魔法の様に少女の身体を縛っていく

足に、胴に、首に、手に、見えない鎖が巻き付いているように硬直する


「否、梨と言う喩えも悪いな。【他の物質】であったら?

若しかしたら林檎も、梨もこの世には存在しないのかも知れない。

林檎と銘打った別の何かであったら?」



「……………何が言いたい?」


少女の背筋にヒヤリとした悪寒が走る

次の少年の一言で自分の運命___生か死か、生きるか死ぬか、生かされるか殺されるか、が決まる様だった。

それ程少年の言葉には謎の重みがあった


「別に。偶にはこういう話でも良いでしょう?」


少年がそう言い終わると同時に真っ赤に熟れた林檎は少女の方目掛けて綺麗な曲線を描き飛んでくる


林檎が少女に当たる刹那、謎の呪縛は解け胸当たりでキャッチする


「おおっ、ナイスキャッチ」


少年はキャッキャと楽しんでいる様子

その様子を見ると少女ははぁ、と呆れた様に溜息をつくとしゃくり、と音を立てて林檎を齧る


「あっ、林檎僕も食べたい」


てててと駆け寄ると少女の林檎を持ってる方の手を掴み、自分の口元に林檎を持ってくるとしゃくりと齧り「ん~!おいし!」と笑う。


「千羽ちゃん、もう食べないの?顔真っ赤だけど」


くすりと微笑み少女の顔を覗き込む。

その顔は悪戯っ子の顔其のもので


「うぅぅぅ五月蝿い!白水が悪い!」


指摘された少女は更に顔を赤面させ、林檎と対して変わらないんじゃないか、と言うぐらい顔は紅く染まり



「何故っ!?もう食べないって事は貰ってもいいんだよね?」


「嗚呼勝手にしろ!」


少女は半ばキレ気味で少年に食べ欠けの林檎を渡す


「えっ、食べ欠け良いの?有難う~」


林檎を受け取った少年は先程少女が齧った所を上書きする様にしゃくりと軽快な音を立てて齧る


「…っ、お前…それ、関節キ…っ?!!」


言葉の続きは口によって塞がれた。

誰の口かと野暮な事は言わないが、関節キス寄り遥かに甘く蕩ける様な口付けを交わした2人であった。





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