四話
「Ich ist hiar to syau……jeez.Ich can omit reever to u satti」
《騒音が聞こえてくると思ったら……まったく。探す手間が省けたよ》
「ヒッ!?」
明確な殺意に当てられたからか。
神人を囲っていた男たちが、悲鳴を上げた。
「U……!Whara ar u hir!?」
《お前……!どうしてこんなところに!?》
盗賊の一人が、目に見えてわかるほどの恐怖を表しながら、そう叫んだ。
同時に、彼らの脳内に、数日前の恐怖の記憶が再生される。
怒り狂ったけたたましい叫び声を上げる、金髪の少女。その周りでは、何もかもが燃え尽きて昇華していく。
怒りのままに放たれた膨大な魔力嵐が、誰かれ構わず焼き尽くす。
それはまるで、地獄がこの世に現れたかのような、そんな錯覚すら覚えさせた。
「Ar's het.U took ar ye question.」
《そんなことはどうでもいい。お前らはただ吾輩の質問に答えるだけでいいからな》
その見た目にそぐわない、高圧的な口調と、そして拒否することを許さない強烈な殺気が、彼らの精神を揺さぶった。
「Hwer ar mich parts?」
《吾輩の両親はどこにいる?》
「I……Ich het! Is's rialy!!」
《し、知らない!本当だ!》
「Hm?」
《それで?》
フローラはキッと彼を睨みつけると、魔力を行使して、その足の骨を砕いた。
「ぐぅあああああっ!?」
砕かれた足が変形して、雑巾のように絞り上げられている。
その様を目にした神人は、あまりの酷さにこみ上げてくる吐き気をなんとか抑えた。
「そ、そこまでしなくてもいいじゃないか!そりゃ、助けてくれようとしていることはありがたいけど……!」
「?Ah.U ar Irese,right?」
《ん?あー。お前は異世界人だな?》
状況を理解していない神人に、フローラは彼のその反応に納得を覚える。
そして、彼女は何度か咳払いすると、うー、あーと声を上げて、神人に話しかけてきた。
「んっん。これでいいか?終わったら後で事情は説明してやる。目を瞑って、羊でも数えていろ」
突然の日本語に、更に頭の中がグチャグチャに混乱する神人。
フローラはそれを他所に、再び先程の言葉で彼らに拷問を始めた。
それからは、阿鼻叫喚の体現であった。
誰もが口を揃えて知らないと口に出すたび、骨が折れ、砕け、筋肉は千切れ、四肢はもげた。
あまりのグロさに、しかし腕を縛られているせいか、否応なくその断末魔の叫びや、その音が耳をつんざいた。
「ちっ。わかったのは別ルートで輸送されたことだけか。そのルートすら、こいつらは知らないと来た」
フローラはそう悪態をつくと、狂って笑い転げている、かつて人間だったその肉塊を、何の躊躇いもなく昇華させた。
何なんだ、この世界は。
一体、何がどうなっているんだ……?
神人は恐怖しきった目で、フローラを見上げた。
こんなことを平然とできるだなんて、普通じゃない。狂っている。
何が、彼女をそんな風に駆り立てるのか。
事情を何も知らない神人には、それが恐ろしくて仕方がなかった。
だが。
フローラはそんな態度の神人を見ると、近くのサーベルを拾い上げて、彼の縄を解いた。
縄を切るその一瞬。神人は見逃さなかった。彼女の頬を伝う、その一筋の涙を。
それを見て、神人は思った。
ああ。
この娘には、そうせざるを得ない状況で、必死に自分を保っていたんだなと。
その影響で、言葉の節々が高圧的に聞こえたのだと。
それと同時に、彼は怒った。
何が、こんな小さな子供をそうさせるのか。
神人はそれを許せないと思った。
そう考えたときから、神人の中から恐怖は感じられなくなっていた。
代わりに生まれたのは、同情だった。
ギュルルルル。
「……///」
ふと、そんな音が聞こえた。
どうやら音の出処は、目の前の彼女のようだ。
「お腹、空いてるのか?」
コクリ、と、顔を紅潮させて頷くフローラ。
「よし、わかった。俺が何か作ってあげるよ!」
神人はそう言うと、ニッと口角を上げて、彼女に微笑んだ。