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怪物剣士と魔術師のフローラ  作者: 記角麒麟
第一章 魔術師と護衛
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一話

「「一!ニ!三!四!ニ!ニ!三!四!」」


 広い屋内の道場の中。

 まだ朝霧の立ち込める早朝に、その声はよく響いていた。


 道場に居るのは、二人の男女。

 男の方はこの道場主の孫で、出雲神人いずもかみとという。もう片方は、その幼馴染で芦原神奈あしはらかんなという名前だ。


 二人は別に付き合っているわけではないが、こうして毎日、朝の鍛錬を行っている。

 別に付き合っているわけではない、と言ったのは、それは芦原神奈の、出雲神人に対する付き合い方が、まるでそのように見えるから、と言っておこう。


 そろそろと準備運動と型稽古を終えると、互いに礼を交わして、木刀を交差させる。

 稽古試合を始めるのだ。


 これまでの勝敗は、神人が三十勝、神奈が二十五勝で、小さいものも入れると、引き分けが百。神人が四百二十一で、神奈が四百二十。


 若干神人の方が上である。


 二人は礼を終えると、木刀を交えて、試合を開始した。


 先攻は、いつも通り神奈が取った。

 これは、取ったというより、神人がある技術を用いて取らせたものだが、細かいことはいいだろう。


 神人は片手で持った得物を中段に持ち、半身で構える。

 毎回のように神奈は縦に斬り下ろすが、神人は体を瞬時にずらして斬道を避け、すれ違いざまに神奈の篭手に向けて斬りつける。


 初見ではほぼ回避不能なのだが、そこは五百回以上も戦ってきた神奈だ。彼女はそれを読んで、ぐいと体を反らし、攻撃を回避する。

 すかさず空振った彼の開いた頭に斬りつけるが、神人は腰を落として回避、足をすくって神奈を転がす。

 彼女は受け身を取ると、木刀を下段に構えて、上段から迎撃を始める神人の攻撃を受け流す。


 神人の頭が下につく。


 チャンス!


 しかし、次の瞬間。神奈はその動きを止めた。

 首元に木刀の切っ先が突きつけられていることに気がついたからだ。


 神人の得意技、《裏太刀流:逆さ吊り》が決まったのだ。


「よし、これで三十一対二十五だな!」


「あー、あとちょっと速かったらなぁ……」


「あとちょっとって、お前なぁ。今でさえ怪物みたいな剣速なのに、これ以上速くなってどうするんだよ。俺が死ぬわ!」


「だって!そうしないと神人くんに勝てないじゃん!」


 神奈はそう言うと、ムスーと鼻息を荒くしてこちらを睨みつける。


 芦原神奈は、剣速だけは異常に速い。

 以前物理の先生に速度を測ってもらったところ、なんと時速千キロだった。

 ほぼ音速に達しているような速さなのだ。

 どうしてそんなに速いのか、何かコツでもあるのかと、その先生は聞いていたが、んー、わかんない!と呑気なことを言っていたのは、まだ記憶に新しい。


 まあ、そんな彼女の剣速についていける神人の動体視力や反射神経も、言い換えれば化物じみていると言えるのだが。

 そこは本人も気がついていないようである。


















 朝の稽古終わりの朝風呂を終えた二人は、いつも通り朝食を摂ると、学校へ向かう準備を始めた。


 神人と神奈は家がとなり同士なので、そのまま神人の家で朝食を摂る。

 彼の祖父である出雲いずも白蓮衛はくれえは、この時間帯は家に居ない。

 以前どこに居たのか聞いてみたことがあったが、その時は、世のん中にゃ、知らんでええこともよーけぇある。首突っ込まんが吉やて。と、意味深なことを告げていた。

 その日の夜に彼の跡を二人でつけたことがあったが、何故か途中から記憶が無くなっていた。


 爺さん、夜中から朝まで、一体何してるんだろうか?


 以来、彼の夜遊び(?)については口出ししていない。


 神人は手早く準備を進めると、制服に着替えて玄関へと向かった。


「遅い!遅刻するよ、神人くん!」


「はいはい」


 神人はそう適当にあしらうと、神奈を引き連れて広い屋敷のような家に背中を向けた。

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