12/25(日)
未だイルミネーションが輝く、駅近くの国道を走っていた。
あと3時間ほどで日付けも変わる。じきに用済みになるのであろう眩い光たちにほくそ笑んだ。
しかし用済みという点では俺も同じだろう。俺はあの世界に必要なだけ留まり、そしてその用を終えたのだ。
あの照明や装飾品たちは捨てられてしまうのだろうか。
丁寧に取り外され小奇麗な段ボールにでも仕舞われ、来年の出番を待つのだろうか。
彼らが産廃処理施設で無残な姿を晒すのを、心から願いたい。
たばこがない事を思い出した俺は、仕事の帰りにいつも寄るコンビニエンスストアにバイクを停めた。
ヘルメットをぶら下げレジへと向かい、その中に納まる見た事のない中年の男性へとたばこの番号を告げる。
いつもの彼女は流石に今日は外しているようだ。当人の実際の居場所など知る訳もないが、自分の見立てが恐らくは正しい事に少し満足しながら再びバイクに跨った。
駐輪場へとバイクを収め、何の気なしに家の目の前の公園へと足が向く。
そう大きくもない公園。遊具もブランコと滑り台の2つと、薄汚れたベンチ。口がこれでもかと金網で塞がれたごみ箱があるだけだった。
木が腐りつつあるベンチに腰かけて、煙草に火をつける。
3年前。12月26日の深夜。
俺はここに倒れていたという。
諸々を済ませ自分の住処を探すにあたり、移ってきたのが此処ならと思い目の前のアパートを選んだ。
時折ここに立ち寄る事もあったが、何かを感じる事は一度もなかった。……今日も。
かつて雷撃を引き寄せた感覚を思い出した俺は軽く左手を挙げ、その空気の冷たさに再びその手をポケットに戻す。
煙草は、もう根元まで灰になり消え失せていた。
年が明けたら引っ越そう。やたらと交通の便が悪いここに住み続ける理由などない。
バイクも二束三文だろうが売ってしまおう。目的がないのであればあちこちに出掛ける理由もない。
仕事もやめてしまおう。あの職種が意味を成す目的はない。
そして静かに消えていこう。生きる目的など、何もない。
手が届く事はない温もり。虚しさで頭がおかしくなってしまいそうだった。
彼女の事を思い出す。その笑顔は、戻りたい世界からただの過去へと、濃いもやがかかっていくようだ。
少し甘えたような声も、少しおどけたような仕草も、柔らかい髪も。
全て俺の妄想だったのだろう。
携帯電話を一度開く。明日のアラームがセットされているのを確認し、俺は目を閉じた。