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前編

「辞めたよ」

「えっ」

「え?何の話?誰が?」

「遼」

「は?!」

「ていうか今月から異動だって。警務課」

「なんで…」

「順風満帆だったのにな。ここにいればさ」

「だろうなあ。なんで突然?」

「分かんねえけど、」

噂じゃ例のあれらしいよ。


*****

リョウ家は由緒正しき名家というやつで、昔から何不自由なく暮らした。母は良家の令嬢で、父は軍部の大尉。幼い頃から教育係がついて、あらゆる知識を叩き込まれた。躾けは厳しかったが、お陰でどこに出ても恥をかかない教養を身につけることができた。

面倒なものだ。

遼家は全員が漏れなく【ギフト】を持っている。男はすべからく軍人となる。遼家といえば軍隊の名門。武力の世界において筆頭であれ。そう教えられてきた。ただ、遺伝というものは、そんなに単純なものではないのだ。突発的にノーマルが生まれることもあるし、【ギフト】には歳をとると消失するタイプのものも存在が明らかにされている。全員が【ギフト】を得ることは不可能だった。

私は、【ギフト】を持たずして生まれた。

「おはようございます」

「おう、おはよう」

「おはよう」

父は言った。私に、与えなければならない、と。彼は絶対的な存在だった。少なくとも、遼家において彼は自他共に認める王であった。勿論、私にとっても。

「遼、午前のパトロールなんだけど」

「あ、自分は午前別件で…」

「ん?…ああ、そうだったな。おい、(リュウ)ー」

父は莫大な富を注ぎ込んで、私に“それ”を“与えた”。侵してはならない禁忌。神から与えられるものを、人が与えてしまって良い訳はないのだ。けれど、もうそんなことは誰も気にしなかった。それ程までに繰り返されてきたことだった。私は何日も深く深く眠った。


「なにっ」

皿やらコップやらが床に投げ出されていた。玄関口まで物が転がってきている。随分暴れたのだろう、見事な散らかり様だ。投げ飛ばされたクッション、倒された椅子、ひっくり返された引き出し。足元に転がっていたジャガイモを拾う。…カビている。

「あ、あんた誰だよ?!」

コルクボードに目を留める。壁の上半分を覆うほどのサイズのそれには、何枚ものメモ用紙が貼られていた。大きさはまちまち、重要度の高いものはピンク、それ以外は白の用紙で。私が提案したものだ。ピンクの用紙、赤いペンで今日の日付、その隣に「訪問日」とある。まあ、見ていなくても仕方ない。

「おはよう」

「おはようって、あの、」

「心配しなくていい。私は君を知っている者だ」

混沌とした部屋の真ん中で怯えている彼に、努めて穏やかな声を出した。手負いの小動物に手を差し伸べるように。そうすればノアは多少落ち着く。

「息を大きく吸って、吐いてごらん。深呼吸して」

すう、はあ。そうそう、いいよ、もう一度。すう、…はあ。

「落ち着いたかい」

「……うん…ごめん」

ノアが気まずそうに私を見た。部屋が湿気て埃臭い。今日はパニックになる日だったか、と私は冷静に彼の呼吸を確認して、窓に近寄った。勝手知ったる動作で開ける。晴れ。

「あのさ、あんた誰」

吊り上がった猫目。悪気の全くない男が、真っさらな音で問うた。

カーテンのかかっていなかった窓からは柔らかな日差しが差し込んでカンバスを照らす。緑色が塗りたくられて、これは、草原かもしれない。絵の具が渇き折角の色彩が褪せてしまっていて、日の当たるところに出しっぱなしにしておいてはだめだよ、と心の中だけで呟いた。

「私はリャオ春栄シュンエイ。この街の警務課の警務官だ」

******



「今日からお前の隣の部屋に住むことになった。お前も広い家で何かと寂しいだろう。仲良くしなさい」

久しぶりに顔を合わせたと思ったら、父はおもむろにそう言った。父の腰骨程度までのところにちょこんとある小さな頭。同い年か、少し年下くらいだろうか。少年が立っていた。手も足も棒のように細く、全体的に痩せぎすで、肌が白い。遼の家には所謂黄色人種の者しかいないので、少年のその白さに私は驚いた。

「ノア・ヨンセン」

父は幼子に言い聞かせるようにゆっくりと彼の名を口にした。ノア・ヨンセン。私は珍しい工芸品でも見るかのようにその少年を見た。日光の遮断された渡り廊下でも尚鈍く光る翠色の瞳は、母が持っている宝石のエメラルドにそっくりだ。瞳がなんて美しいんだろう。それが私が覚えている、彼との一番古い記憶だ。


ノアに会う機会は実際には殆ど無いに等しかった。

私の朝は早い。五時に起きて朝稽古をし、七時に朝食を摂って兵科学校へ行く。五時に帰宅した後は勉強、あるいは習い事がある。この習い事は母の意向だった。母は幼い頃は芸術分野に触れることが豊かな感性を養うのに必要だと考えていたため、三歳の時分から私にピアノ、漢詩、絵画などを習わせた。平日はピアノと漢詩、休日の午後には絵画。なんとなくやめるタイミングが掴めず、なぁなぁで十五になってもどれもまだ習っていた。

「坊ちゃんは筋がよろしいですなあ」

「さすが春東(シュントウ)殿のご子息です」

皆口々に父の名を出す。私は笑顔を作り礼を述べる。血が勝っているからなのか、私の努力あってのことなのか、それでもいくつか賞をもらえるくらいの腕で、部屋には賞状やトロフィーが得意げに並んでいた。

「ありがとうございます。精進致します」

週に何度か廊下ですれ違うくらいだったノアと初めて会話らしき会話をしたのは、信じられないかもしれないが彼が来て二年経った頃。背丈がぐんと伸びていて驚いたことを覚えている。父に紹介された日以来、まじまじと顔を見る機会がなかったので、どんな顔だったのか私は忘れていた。ただ、二年という期間は少年を劇的に変化させるのには十分すぎる時間で。久しぶりに見たノアは、蛹が蝶になるが如く成長していた。私は、彼のぽこりと浮き出た喉仏や、節くれだった指につかの間思いを馳せた。私のほうが少しだけ高かった背丈も、結構な差をつけて越されていたらしい。

「やあ」

特に声をかけようと思ったわけではないが、声が自然と出ていた。

「なんだか、久しぶりだね」

今でも思うのだが、ノアという男は、ヤマネコに似ている。しなやかで気高く、気の強い絶滅危惧種。目の形がまさにネコ科の動物を彷彿とさせる形をしていて、傍から見ると生意気で勝気に見える。

「ああ、」

一階の廊下は、その日分厚いカーテンがかかっていた。理由は覚えていない。午後だった。

「あのさ」

眠たそうな声と、気だるげな表情だった。おまけに猫背。彼が言った。

「暇で死にそうなんだけどさ」


どこから来たのか、ここへ来るまではどうしていたのか。彼の素性に関する諸々の質問に彼はあまり答えようとはしなかった。というか、彼は自分自身のことについて知らなさすぎた。

「海の匂いのする街にいた」。「ずっと暗い所にいたんだ。あまり外に出してもらえなかった…気付いたらあんたの親父さんのところにいたんだ」。

私は眉を顰めた。彼の生い立ちは些か不自然すぎた。

「それはつまり、君はここに来るまで、その、監禁状態だったということ?」

「カンキン?」

「誰かによって不自由な状態で閉じ込められていたってこと」

「?お前、言葉が難しい」

ノアは、まるで自分の過去に興味がないようだった。彼にとって一日はその一日にしかなく、過ぎ去ったものはすべからく過去で、未来など存在せず――その一瞬一瞬が全てであり、毎秒毎秒死んでは生まれるような。部屋の隅で、私はこっそりと唾を飲み込んだ。

「知っていることは?他には?」

「…ええと、コバルト爆薬の調合方法」

「は?」

「色がコバルトブルーだからそう呼ばれているだけで、実際にコバルトが使われているわけではない」

「……」

「あとは、ラビットフットは19ミリ。オートマチック、フルオート。ビックバンは20ミリ、オートマチック、フルオート。この二つはB国」

頭の中を漁っているようだった。時間をかけて、ノアは他国で主に使われている銃器をたどたどしく喋った。虫食いのような情報だったが、それでもそこにリストがあるかのようにはっきりと迷いなかった。

「君、それをどこで?」

「さあ」

(一般人、だよな)

とても軍の人間には見えない。父が連れてきたのだから、何かしら関係はあるのだろうか。いや、それにしても父もあまり構っていないようだ。「そうか」。「うん」。

それから、ノアのことを家の手伝いの者は何故か忌み嫌っていて、私が彼と交流を持つことを快く思っていなかった。いつのことだったか、裏の勝手口のところで彼女たちが話をしているのを小耳に挟んでしまったこともある。

「旦那さまはいつまであれをここに置いておくつもりなのかしら」。

「碌に構わないから放っておいたらお風呂にも入りゃしない」。

 私とノアが顔を合わせるのは週に一、二回。確かに風呂嫌いだった。部屋に来るとき、最初の頃は大抵微かだが異臭を放っていた。

「ノア、失礼だけどすまない、風呂には入っているかい」

「風呂?あれ嫌いなんだよ」

「そういう問題じゃない」

それとなく母に伝えるよう信頼のおける掃除婦に伝えた。「そうでしょうともねえ」。彼女は上手く伝えてくれたらしい。何度か、女たちに引っ張っていかれるところを見た。そのうち促されれば入るようになったが、どうやら使っているのはゲストルームの個浴らしい。母が嫌がったのだろう、きっと。ノアは風呂上りはいつも機嫌が悪く、石鹸の良いにおいがした。

「これ、なんて読むの」

「あし、だよ。…君、読めないのか」

 ノアについて、最も特筆すべきこと。それは記憶力だろう。本当に驚異的だった。一度教えたものは例外なくその一度切りですぐに覚えた。しかも二度と忘れない。彼には読めるものと読めないものにどういうわけかムラがあり、簡単なものでも読めないものの方が多かった。話してくれる話がどことなく虫食いのようだったのも、そのことが理由らしく。簡単な読み書きから、時間があれば教えた。

「今度はこっちを教えてくれよ」

「え、これはまだ早いんじゃないのか。昨日渡した表は全部覚えたのかい」

「覚えた」

初めの頃は本当に基礎的な最低限のものを教えていたのでまぐれもあろうと思っていたが、そのうち漢詩や海外の言語を一時間もしないうちにそらで読めるようになったり、書けるようになったりするとさすがにまぐれでは片付けられなくなってしまった。覚えるスピードも目に見えて速くなっていく。初めて触れた勉学は、そのうち彼の良い暇つぶしになった。とにかく時間だけは余りあるものだから、出会って半年もしないうちに彼は私の自室に入り浸り、本棚の書物を漁るようになった。

「光の三原色は赤、緑、青で構成されている。赤と緑が混ざると黄色、緑と青が混ざると空色、青と赤が混ざると赤紫、三色全て混ざると白になる」

「金属とは、展性・延性に富み金属光沢を帯びる電気及び熱の良導体の総称である。水銀を例外として常温常圧で不透明な固体、液状でも良導体性と光沢性は維持される」

「余に問う、何の意ありてか碧山に棲むと、笑って答えず心自から閑なり…」

初日、子供の教科書すら読むのに苦戦していたなんて考えられない。様々な国の言語を習得し、あらゆるジャンルの本を吸収する。私の部屋には初歩的な医学書も数冊あったが、ノアはそれを絵本でも読むかのような手軽さで乱読し、その全てを隅から隅まで暗記してしまった。但し、暗記しているだけで内容までは理解していなかっただろう。難しい本は途中で飽きて放ってしまうことも多々あった。

その点、中でも彼が気に入っていたのは美術の本だった。絵画に画家のプロフィールや紹介、評論などがついている本で、何度も何度も繰り返し読むのでそんなに好きならと譲ってやった。

「え、ほんとに。いいの」

「ああ」

「へえ…へへ。ありがとう」

文字よりも絵が多いほうが良かったのだろうか。分からない。

「どうしてそんなに覚えがいいんだ」

「さあ…俺って覚えがいいの」

「ああ、…普通じゃない」

「”普通じゃない”…」

 理解しかねる、といった風にノアは首をかしげた。それから、さして気にも留めないといった様にまた美術書に視線を落としてしまう。私は兵学校の宿題を片付けていたところで、ノアはその下、私の椅子の足にもたれるようにして読んでいた。覗き込むと、夜のカフェの絵だった。空に星が瞬いている。ゴッホだ。ノアはとりわけ、ゴッホを好んでいたように思う。

「絵が好きだな」

 集中しているのか、返事はない。優しい色合いの髪の毛が時々揺れる。順調なスピードで成長しているのに、あまり食べていないからか首が頼りないくらい細く、それを私はじっと見つめた。白い皮膚にうっすらと浮かび上がる静脈。なんとなく、ノアの血液は温そうだ。

「…ノア、君、描いてみないか」

 ノアは顔を上げた。

******



「昼食はもう食べたのかい」

 カンバスにべたべたと色を塗りたくっている後ろ姿に声をかける。返答はない。気分がのっている時、彼は当然のように空間を断絶するきらいがあった。もうさして気にはしていないが、如何せん元々ノアは食が細い。食べるという行為に興味がないらしい。興味のないことに彼は悉く無頓着である。

「ノア」

「うるさい」

 一蹴。そうは問屋が卸さない、と私は腕を伸ばした。細い肩にため息が零れそうになる。

「描くのをやめろ」

 ようやくこちらを振り返ったその顔は不満で満たされていた。寝不足なのだろうか、目がうっすらと充血している。

「昼食は摂ったのか」

「あんた、何なんだよ」

 いきなり来てさ、なあもう帰れよ。苛々とした態度をまるで隠そうとせずノアは唸った。どうやら今日はすこぶるタイミングの悪い時に来訪してしまったようだ。それでも、

「帰るわけにはいかない。私は仕事でここに来たんだ」

「知らねえよ。ここは俺ん家なんだろ」

 描きかけのカンバスには、三歳児の落書きのような絵、というより色が、塗りたくられていた。殆ど暴力的な目にいたい橙色。何を描こうとしていたのだろうと思い、私はその疑問を頭の中で打ち消してから、冷蔵庫のある場所まで歩いていく。

「おい」

「牛乳の期限がきているじゃないか。卵…ノア、野菜は摂っているのか」

「おいって」

「ヨーグルト…前に来た時捨てろと言っただろう。捨てるぞ」

「あんたなあ!!!」

 怒声が轟いた。女のような細い体からよくもまあそんな野太い声が出るものだ。私はヨーグルトのパックをそのままゴミ箱へ放り込んだ。

「まじで警察呼ぶぞ。不法侵入した挙句人の家勝手に」

「私は警務課だ。その警察だぞ。何を言ってるんだ。お前の様子を見に来たと言ってるじゃないか」

「人の家の持ちモン勝手に捨てるのは見てるっていうのかよ。おれは見ての通りださっさと帰れ」

 メモに書いてあったやつはもうやった、とノアは忌々しげに言った。描く気が失せたのか絵筆やパレットを傍の机にドンと放り投げ、わざと音を立ててカンバスやイーゼルを片づける。服が汚れていた。三日前に来た時は違う服だったので、着替えてはいるようだが、毎日取り換えているのかは分からない。

「じゃあな、おれは寝る」

「待て、食事を摂れ」

 私の言うことも聞かずに、布団を頭から被ってしまう。

 今日は、たまたま。そうたまたま機嫌が悪かっただけだ。

私は自分に言い聞かせながら掛け布団からはみ出た髪の毛をぼんやりと見つめた。絵を描いているところを邪魔されるのは、昔から嫌いだった。知っている。それでも、この貴重な何時間を私は無駄にしたくない余り、しょっちゅうこんなことを繰り返しては君を怒らせる。

 ここへ来るたびに少し埃っぽくなっている給湯器。コチ、コチ、と時計の音が大きく聞こえる。コチ、コチ。そうだ、記録をつけなければ。

 私は持参した鞄から、バインダーとペンをとりだした。無機質に印刷されたブロック体の羅列に、努めて無機質な気持ちで目を通し、ひとつずつチェックを入れていく。 その淡々とした作業の間にも、ノアの呼吸はぎこちない。

「睡眠はとれているかい」

足の悪い者がそれでも言うことを聞かず歩むような、不規則な呼吸音。

彼は失われた後の方が人間臭い気がする。錯覚だろうか。

私はゆっくり近づいて、そのはみ出た髪に触れた。ノアの身体が僅かに硬くなる。

「…君、風呂に入っていないだろう。べたつくぞ」

ばちん、カツン。コッコッ…。

「帰ってくれよ」

振り払われた手でペンを拾い上げ、私はのろのろと残りのチェックボックスにペン先をあてがった。絹擦れの音がして、ノアの髪先が引っ込んだのが視界の端に入らないよう、細心の注意を払いながら、私は静かに部屋の中を移動した。

******

 


「成績は問題ないようだな」

「はい」

「ではこのまま努力を怠らないように」

「はい」

「春栄」

「何でしょう、父様」

「…いや、もういい。お前は十分やっている。下がりなさい」


結局私の部屋にある本は全部読んでしまい、私が図書館から借りてくる本も悉く読破してしまった。たった一年余りのうちにだ。絵画のほか、私は自身の知っていることを大抵彼に試してみせた。だがとりわけやはり、絵画には面白みを感じたようだった。この頃は兵学校の授業が過密になっていたので私も帰りが遅くなることが増え、ノアのことが心配だったが、そんなものは無用のようで、ノアは私の部屋でひたすら絵を描いていた。絵画類はしかるべき部屋が与えられ、私はそこで通いの師から手ほどきを受けていたが、その部屋へノアを出入りさせるのは少々気が引けた。私の部屋は部屋は三階にあるのに対してノアの部屋は一階の隅にあったし、朝から夜まで手伝いの者が歩き回っている。

彼女たちの目にあまり晒したくなかった。目立つ行動を取って父に私が彼に干渉しすぎていると思われたら厄介だった。父は相変わらず必要な時以外は息子に干渉してこなかったが、それでも私の進むべき道は、生まれてから死ぬまでこの家に、父に管理されているのだ。来年の春には兵学校を卒業し、軍部へ配属されることが暗黙に確定していた頃。私も、ノアも、結局は不自由の身だ。いつか離れるだろうその前に、せめて彼と静かに過ごしたかった。きっと互いに、良い思い出になるだろう。

「最近帰りが遅いね」

 もう夜も更け、風呂は明日にしてもう寝てしまおうと自室に入ると、ノアがいた。ぺたりと床に座り込み、何か読んでいる。髪の毛にピンク色の塗料が付いていた。

「実技試験が近いから」

 訓練も徐々に実戦を意識したものになっていた。最終学年は通してそんなカリキュラムだが、ここ一月は相当体力も気力も削られてきている。卒業試験のひとつである実技試験は割り当てられたスケジュールで通信員から指揮官まで様々なポジョションをテストされるが、長期に渡るそれは我々にとっては就職後の配属に関わるのみならず、命を賭しての一大行事であった。小規模とはいえ、実際の現場で試験を行うからだ。

「ふうん」

さして興味なさそうにノアが声を発した。

「今日は何をしていたんだ」

「別に。描いてた。後は読んでた」

「そうか。見せてくれないか」

 ノアと出会ってからもうすぐ一年。彼の一日は一貫して変わらなかった。起きて、ふらりと私の部屋にやってきて絵を描くか本を読むか。食事のことはよく分からない。彼は私たち家族とは別室で食事を摂っている、はずだ。本人に確認したところ、部屋まで運ばれてくるという。

 ノアの筆遣いは独学が透けて見える程独特で個性的だった。ぺたぺたと何も考えずに塗りたくっているのかと思えば、きちんとひとつの絵になっていることが毎回私は不思議だった。

 ノアは風景画をよく描いた。その殆どが空の絵だった。大きく口を開けたようなぽっかりとしたただっぴろい空間、その下に、ぽつりと一人の人間が佇んでいる絵を、私は時折思い出す。ノアはこの家から出たことがないのに、時たま人物のうつっている絵を描いた。

「これは誰だい」

 私が訊くと、ノアは暫く黙った後、「わからない」と言った。「誰か。知らない人」。

女だか、男だか。帽子をかぶっている。白い服を着ている。

どんな顔をしているだろう。

目を上げると、薄い唇が目に入った。それから白い頬が。寂しそうだとか、悲しそうだとか、そういった表情ではなく。君は何を考えているだろう。何も読み取れない。まるで、透明で分厚い、壁があるように。

「何?」

「…なんでもないよ」

 服の裾をぎゅっと握った。手のひらが少し湿っぽかった。

「あ」

「ん?」

ノアが腰を浮かせた。

「雨だ」

しとしとと細い水の筋が窓に無数に張り付いていた。静かな無表情と、筋の通った鼻、細い顎のライン。

「本当だね」

通り雨かな。きっとすぐに止むさ。

通り雨?

すぐに止んでしまう雨だよ。通り過ぎていく雨。

ふうん?とおりあめ…。

うん。すぐに止むよ。


私たちの間には、ゆっくりと降り積もるような変化はなかった。それはその日、私にとっては突然降り立った出来事だった。でも、もしかしたら私がそれを知る前に、ノアは一人その変化に首をかしげることがあったかもしれない。あるいは、もっと、頭を抱えるようなことが。あったとして、どのくらい前だったのかは分からないけれど。

「ただいま」

 部屋の中がどことなく静かそうだった。

(いないのか…?)

 秋から冬に移行しようとしているこの時期、ここ数日では一番風が冷たい日だった。同級の者の中には季節の変わり目に弱く熱を出して休んでいるものも数名いる。私も気をつけなければならない。ノアが自室にいるのなら、暖房を入れに行こうか。どうせ入れていないのだろう。

 ぎい、と音を立ててドアを押し開く。

 薄暗い部屋で、ノアが背を向けて立っていた。

「ノア、いたのか」

 ただいま。声をかけるが、返事がない。

「ノア?」

 部屋は電気も、暖房も入っていなかった。

「電気くらいつければ良いのに」

ものぐさなんだから。パチン、と音がした後、部屋がぱっと明るくなる。ベッドと机、殺風景な部屋の輪郭がくっきりと現れた。ノアが振り返る。なんだか、ぼうっとした顔をしている気がした。様子が変だ。二秒。沈黙。

「…おかえり」

「ただいま」

冷たい空気が部屋を満たしていた。ふと見ると、窓が少し空いている。カーテンが揺れていて、その向こう、外はもう暗かった。

「何かあった?」

「?。いや?」

別に。薄手のコートを脱ぐ。この部屋と同じくらい冷たい。ノアの肩ごしに、机の上を覗き込んだ。

ひゅっ。

喉から音がした。殴り書きだった。赤や、紫もところどころ。だが全体的にそう、黒の殴り書きだった。異質な絵が、こちらをじっと値踏みしている。

ぞわり。

何かが、こちらを狙って息を殺している。

「どしたの」

「ノア、」

 きょとんとした顔でノアがこちらを覗き込む。髪が一房さらりと額を流れた。いつも通りのノアだ。先程感じた引っかかるような気配は、どこにもない。白い額。

誰だ。

この男は誰だ?

声がする。知っていたか?…いや、何が。

 私は、いつか、こんな日が、彼と私に訪れることを知っていたような気がした。何故。分からないけれど。

2人の間に、ゆっくり降り積もるような変化はなかった。

「ノア」


「ノアはどの絵が好きなんだい」

「どの絵?」

「よく見てるだろう。私の本棚の絵画集やら、図書館の本やら」

 空調の整った部屋で二人、思い思いに過ごしていた。私は机の上に兵学校の宿題を広げており、ノアはその傍らで何をするでもなくぺたりと座りこんでいた。

「あれが好き。ゴッホの、靴の絵」

 かの画家は確かに数点の靴の絵が存在する。ノアは手慣れた様子で私の本棚から一冊の本を取り出した。彼が最も愛読しているゴッホの絵画集だった。

「これとか」

 『一足の靴』。靴ひもがくたびれ、かかとの部分のよれた一足の靴が、寄り添うようにして並んでいる。

「どうしてこれが好きなの」

 問うてみる。

君は何を感じ、何を考え、何を見るのか。質問されると思わなかったのか、ノアは少し考えるそぶりを見せた。ええと。

「たくさん歩いた感じがいい。なんか、使ったっていう、感じとか」

 生きてる感じがして、さみしくて。

 瞳を伏せると睫毛の影ができた。髪の毛と同じ優しいミルクティ色をしていた。彼を形造るものは淡く、私の持たない色素で作られていた。冬の始まりの透き通った日差しが二人を照らす。ノアの目に私が映っている。

「ノア、さみしいのか」

「さみしい…いや、分かんないけど」

 喜怒哀楽の辞書を持たぬノア。換気のために少しだけ開けた窓から冷気が忍び込む。ノアは座りこんだまま動かない。椅子に座るのが面倒なのか、嫌いなのか。というか、私の部屋には勉強机用の一脚しかないが腰かけているところを見たことがない。加えて彼の部屋にはベッド以外のものがない。

ノアはこれからどうなるのだろう、と時々考える。詮無いことだと思うのに、考えてしまう。白い脚は床暖房のお陰でほんのり血色が良いようだ。

「春栄」

かりかり、とシャープペンシルが音を立てている。記号の敷き詰められた表。通信員試験が近い。

「なんだい」

「流れ星ってどうしてあるのか知ってる」

かりかり…かり。

「流れ星?…知らない」

この部屋の中は、いつだって穏やかに静かだ。彼が頭の中の書物を紐解いてくれるのは久し振りな気がする。本にあったままの文体をノアがなぞった。

「流れ星は……大きさが0.1ミリメートルくらいの小さい個体の粒が大気に落下し、空気との摩擦で燃えて光る現象です」

 私は目を少し閉じて、子守歌のように心地よくそれを聴く。声が続く。

「流れ星の光る高さは上空百キロメートル付近で、これは空気が濃くなり始める境目の高さです。この個体の粒は箒星、彗星から来ています。彗星は地球軌道の外側から太陽付近に飛来し、その正体は泥の混じった氷の塊と考えられています。この塊を核と呼びます。核の成分は太陽に近づくと溶けだし、彗星は粒を吐き出しながら飛行します。そのため、彗星の通った後は粒だらけです。この粒の漂う中に地球が公転運動によって突入します。固体の粒は地球の引力によって引き寄せられ、大気に突入して燃え尽き、流れ星になるのです」

 さらに流れ星が次々に見られる流星群は昼でも起こり、目には見えなくてもその実そこには沢山の粒子が地球に降り注いでいるのだとノアは言った。

「見てみたい、流星群。毎年殆ど同じ時期に見えるらしいんだけど」

「流星群か。私も見たことはないな」

「そうなの」

「星の数も期間もまちまちだけれど、一年のうちに何回かあるんだ。ここのあたりは夜の明かりが少ないほうだから、大規模なものなら観測できるかもしれない」

星などに興味を持ったことはなかった。物心ついたときから勉学や鍛錬に明け暮れ、兵学校に入ってからは日々の課題にも追われていた。自分の世界にそのような楽しみを持つという発想がなかった。それでも、ノアが興味を持ったというなら、行ってみたいと、ふと思う。何より、ノアが外の世界に興味を持ったことが嬉しかった。卒業したら、きっと今のように気軽には会えない。この日常を保つことは難しいだろう。そうなるよりも前に、やるべきこともやりたいことも出来るだけ、君に、君とやっておきたい。

(…父様も母様も…許可しないだろうな…)

ノアを外へ連れ出すことは出来ないだろう。叶うなら本物を見せてやりたいがしかし。…ホームプラネタリウムではどうだろうか。 ノアが何かしたいと訴えるのは、初めてのことだった。

「行こうか」

口をついて出た言葉だった。髪の毛をいじっていたノアが、ぱっと顔を上げる。見たことのないものを見るような目がぱちくりとこちらを見た。

「え、出れるの」

翠色がきらきらと揺れている、ように見えて。

「……いつか」

いつか、連れて行くよ。

「うん」

 ノアは疑いなく頷いた。

想像した。ノアと外へ、真っ暗な夜に。大量の星を見に行くことを。とても楽しそうだと思った。初めての流星群で私もノアも歓声を上げて、君は目を今までにないほど見開いて騒ぐ。頼めばノアは天文学の本から知識を引っ張り出して、私に話してくれるだろう。私はそれを真剣に訊く。のんびり二人で歩く。星の降る夜を。楽しそうだ。きっと美しい夜。そうしたらそれを絵に描いて私に見せてくれると嬉しい。

…私は、シャープペンシルを強く握った。

君に会えなくなる。そうか、君に会えなくなるのか。そう思ったらとっさに口をついてしまった。行けないと言えなかった。私は、嘘をついてしまっただろうか。

君に会えなくなる。どうしたことだろう、それは、

(…とても、さみしい)


「よう春栄。調子はどうだい」

 兵学校の廊下で同級生が手を振った。先生に頼まれた資料を職員室まで持って行くところだったので手伝ってくれるように頼んだのに、彼は首をふらりと横に振った。幼稚舎の頃からの友人で、所謂幼馴染だった。

「これから先輩に【ギフト】の扱いをご指導頂くんでね」

「どなたがいらっしゃってるんだ」

 彼は昨年、優秀な成績で卒業された方の名を挙げた。確か軍部でも指折りの精鋭部隊に配属されたと聞いていた。

「それはすごいな。よくしごいてもらえよ」

「言われなくても。春栄は実技、後どれくらいなんだ」

「通信員は終わった。あとは戦闘員と司令官だ」

「へえ。まあお前ならどっちも楽勝だろうけど」

「そんな訳ないだろう。命が懸っているんだ」

 相変らずだな、と友人は笑った。眉間にしわを寄せるところは昔からだ。「じゃあな」。ひらりと身をかわし、廊下を小走りで抜けて行く。ぎっしりと重い紙の束を抱えたまま、私はその背中をぼんやりと見送った。

 友人は炎の【ギフト】を所持していた。火力は中堅クラスだったが、扱いのセンスがあったので班を組んでの実技授業ではまあまあ重宝されていたのだ。卒業試験期間の最中においても各々異能の所持者はそれに磨きをかけることを最後まで怠らないつもりらしかった。

「大変だな」

 異能を持たぬ私には到底計り知れぬことだ。【ギフト】――いわゆる特殊な超能力。兵法の一つとして授業にも組み込まれているくらいの強力な武器の一つだ。最も、【ギフト】自体はこの世界においては珍しいものではなくそこらじゅうにある。たまたま、父も母も親戚も揃って様々な異能を所持している中、私だけはそれを授からなかった。けれど【ギフト】を持たないものはこの学校にも、軍部にも沢山いる。ハンディにはならない。だからこそ我々持たざる者は、日々彼らよりも何倍もの努力と鍛錬を積む必要があるのだ。実際そうしてきたし、今でも成績は彼らに混じって上位に食い込んでいる。持たなかったことを言い訳にしたことは一度もなかった。そのことを、我ながら誇らしく思っている。

 おそらくはノアの超人的な記憶力も、その永久保存といえるくらいの忘れなさも、【ギフト】だろう。【超記憶】自体は極めてレアな能力というわけでもない。が、【ギフト】の所持者には付き物とも言われている代償作用が彼には見られなかった。彼らには超人的な力の代償として、代償作用と言われるマイナス要素がみられることが分かっているのだ。偏頭痛や腹痛などの症状がある者、定期的に性欲が暴走するという者もいる。身体の一部が欠損しているものや、麻痺している者、異能を使用するたびに寿命が縮むなどのヘヴィな代償を抱えている者も。その強度は実にまちまちだ。

 だがノアにはそういった代償作用が、私が見ている限りでは見られなかった。少なくとも今までは。

 

 あの黒い絵を描いてからというもの、彼の様子は日に日に、なんだかおかしくなっている。


「春栄。試験の方はどうなの」

 母が言う。「上々です」。私は答えた。父から、母から、通いの教師たちから叩き込まれた「品性ある笑顔」で。「そう。さすがお父様の息子ね」と控えめにほほ笑む顔に不釣り合いなくらいの濃く紅いルージュ。 部屋に戻ると、ノアが部屋の隅で棒立ちになっていた。

「ノア、どうしたんだい」

返事はない。ここ最近の反応としては平凡だった。

「ノア」

 意識して静かに呼んでみる。クタクタの服。から、うっすらと透けて見える背骨の凹凸。しなやかに湾曲しこそすれ、決して歪んでいないような線分。いくら頑強で硬質な芯よりも、本当はそんな線分のほうが余程強いのだと、思う。そんな人間になれたなら。私は、君ににあわよくばほんの少しでも、真に近づくことが出来たのだろうか。君の、君だけの世界に。

 ぺらぺらな身体で突っ立つノアは紙人形のようだった。床には無秩序に紙が散っている。まるで足跡のように。

私は一枚一枚、かがんで拾い上げた。黒く塗りつぶした絵の他に、赤や紫で粗暴に厚塗りされた絵もあった。最近しているように私はそれらをじっと見つめてみたが、同じくなんのメッセージも読み取ることが出来ない。五枚拾い上げたところでノアのふくらはぎにぶつかった。今日のノアはデニムを履いている。

「ただいま」

 声をかける。静寂が厚ぼったく部屋に詰まり、部屋を濃く満たしている。返事はないが、ノアはそれでも振り返り、こちらを見下ろした。濁りのある翠色が影になる。漂う空気すら無機質さを帯びる彼はどこか造り物めいていて、だのに妙な生気があり、一言で言うならば不気味だった。

「土産を買ってきたよ」

 絵具は、濃い色ほど消費が激しくなり、もう殆ど切れていた。黒や紫、赤や茶のラインが入ったチューブを目の前に並べて見せる。ノアはそれを温度のない目でじっと見た。

「他の色が良かったかい」と訊ねると、「いや」と短く声がある。

「ありがとう」

「うん。気分はどう、今日は何かあった?」

 ここ何日かで立て続けにしている質問を投げる。ノアはついと宙を見るように目を上げ、「何も」と同じ返答を寄こした。私は笑みをつくって「そう」と頷いた。こんなやりとりを、もう何度もしていた。そんなわけないじゃないかと掴みかかりたくなるのを必死で抑えて、浮いたり沈んだりしながら。

「あのさ」

私はそっと肩をこわばらせた。集めた絵を、無意識に握りしめていたが、知らないふりをして。

「あのさ、おれ、もやもやするんだ」

「もやもや?」

「頭の中に、布がかけられてるみたいな、」

 今までになったことがないから分からなんだ。

たどたどしく、けれど私に向けて伝えようとしている。

「だけど、ええと、」

 私は立ち上がった。それでも幾分かノアよりも身長の低い私は心持ち首を上げてノアを見た。その間、彼は視線を私から外したり戻したりしながら、言葉を探していた。

 ノアは頭の中に沢山の言葉を乱雑にストックしていて、つまり、本棚の整頓が不得手なのかもしれない。あるいは、それらを自分の言葉に変換する作業に慣れないのかもしれない。本の文体通りならば、彼はするするとそれを朗読してくれる。天体の話、神話の話、文学の、数学の、医学の、歴史の、膨大な文字数をなぞる唇。

「食われる」

 兵学校に着て行っている高級なジャケットは、不釣り合いなくらい物騒に煙臭い。実技の後ではシャワーを浴びるが洗い残しで煤が結構残り、ノアがそれを凝視してくるものだから洗い残した箇所はすぐに分かる。対して彼はそんなものたちとは無縁なにおいがした。絵具や本や、風や日向や、雨のにおい。

 頭の中を食われる。

「布をかけられて、おれが訳がわからないうちに」

 多分、と何が多分なのかも分かっていないノアが言う。

「春栄」

「なんだい」

 少しだけ開けた窓から、厨房あたりからであろう夕食の香りが漂ってくる。コンソメの香りだ。外はもう真冬で、寒くて、窓を閉めなければ二人とも風邪を引く。君の顔が歪んだ。独り言のような声で。

「なんだか、こわいんだ」

君はきっと、いつだって一人で立っていた。

******

 

判子のインクが薄くなっていたことを忘れていた。

日にかざしてみるとぼんやりと印字を認識できる。事務課に連絡を取らなければならないだろうが生憎まだまだデスクからは離れられそうになかった。

「遼さん」

 後輩が声をかけてくる。

「インク切れですか」

「うん。発注しようと思ってすっかり忘れていた」

 今日は書類の整理が午前一杯ある。そこまでためていた私が悪いといえばそれまでだが果たしてインクはもつだろうか。いや、無謀だ。

「自分一本予備あるっすよ」

 後輩が自分の引き出しを引く。普段寝ぐせのついたままで出勤してきたりする奴だが、どういうわけか彼は物の整理整頓が上手い。机の上のファイルも、もちろん引き出しの中もきれいに整理されている。曰く、整然と物が並ぶ様を見るのが好きなのだそうだ。私にはよく分からない。小分けにされた一画からそれを取り出して、私の前にずいと突き出す。

「はい、どーぞー」

「いいのかい」

「いいすよ。だってそれ、もう持たないでしょ」

 目を細めて彼が言う。確かにそうだと、助かった気持ちで私はそれを受け取った。

「ありがとう。恩に着る」

どういたしまして、と言って彼は自分の仕事に戻っていく。

 軍部と比べるからそう思うのだろうが、この部署は規律が緩い。ヨレたワイシャツを着る者も公的な場以外ではあまり咎められないし、言葉遣いも比較的砕けているように感じる。寝ぐせのついた頭で欠伸をする年配の職員にも最初は軽いショックを受けたものだった。ここに入ったばかりの頃、兵学校の例の幼馴染にそう言ったら「そりゃあそうだろ」と言われた。軍隊は特殊なのだと。一族の男子が隙間なく軍部の人間で構成されている環境にいた私にはその軍の規律こそが普遍的だったわけだが、そうではないということをここに来てから知った。世界は案外広く、あれだけ沢山学んだというのに死角を覗けば知らないことはまだまだ沢山あったのだった。友人は卒業後、炎の【ギフト】の操作技術を買われてかねてから希望していた異能部隊に配属になった。

「実技テストで下から二番目だったんだよ」

 あの頃敷地内で偶然会った際にそう苦言を呈していた彼も、なんとか二年続いている。

 判子の押し終わった書類をまとめ、ファイリングしてから私は席を立った。サッシから日が漏れている。今日は快晴らしい。

「係長。今月分のC級事件、解決したもののリストです」

 一番奥の席で一人、パソコンと格闘していた上司はついと目を上げ、私の手元のファイルを見やると「ああ…」と漏らした。心底嫌そうな顔をしている。「ありがとう」。眉がハの字の笑顔。

 警務課の月末は書類の受理に追われる。特に私の所属している第三警務課―C、B級事件を中心に扱う街のおまわりさん的立ち位置の課だ。関わる事件数は警務課内で一番多い。軽い代わり細々としているのだ―は書類をため込む癖のある者が多いらしく、全体会議の際にはよくお叱りを受ける。特にこの上司は何時まで経ってもパソコンと仲良くなれず、残業になってしまうことも多い。

「係長ー、まだ終わらないんですか」

 ダンボールを抱えた女性職員が通りすがりに声をかける。

「ああ…なんだかまたわけの分からない画面が出てきて…」

「もー、ここクリックしてください」

「それで…どうすればいいの」

「そこ『はい』、次も『はい』、『OK』、で『閉じる』」

「おお、君すごいね」

「こんなん普通ですよ!もう!」

 「係長、俺終わったら後で見てあげてもいいですよ」とどこからか声がかかる。「おいずるいぞ、俺のもやってくれよ」「いやお前は出来るだろうが」。女性職員の笑い声。

 手伝いは無用のようだと思い、私は席を離れる。未受理の方の書類にも判子を押さなければならない。

 ここには厳しい体鍛も懲罰も怒号もないが、代わりにふわふわとした暖かさがある。私が無縁だと思っていた世界。何が起こるか分からない未来。あまり笑わなくなったが、雰囲気は柔らかくなったと既知の友たちは言う。私は、君のいない場所で柔らかくなどなりたくない。幸福だと思うこと自体が罪であるように感じ、ここに君がいないことに耐えがたい寂しさを覚える。時にはくず折れそうになる。君に言ったところで分からないだろう、それもまた悲しい。

 人は時間の流れには逆らえない。それは普遍的なことだろうか。


 待ち合わせ場所に来たいつもの女性は、いつもようにコーヒーをオーダーすると、いつものように指を組み合わせた。今日はストライプのツイードを着ている。月に一度の会合。それが彼女との約束であり、彼女の悲願だった。

「元気にしているの」

 先月会ったばかりなのに、いつもするように彼女は、母は質問した。

「はい」

 それで、仕方なく私も同じように返す。仕事終わりの私の、少し黄ばんだワイシャツを一瞥して母は

「そう」と言う。

「二日前にお父様がお帰りになったの。美味しいワインをお土産に買ってきて下さったのよ」

「そうですか」

 お元気ですか、と訊くのは憚られる気がして、私の返事はいつも素っ気なくなってしまう。何を訊いても失言になる気がして、私は自分がひどく息苦しい場所にいると感じる。

「貴方のお父様もおじい様も皆お酒にはめっぽう強いから、きっと貴方も強いのでしょうね」

「どうでしょう」

 そこへ自らやって来る私たちの滑稽さときたら。

つい数ヶ月前に成人した私はお祝いと称して上司に酒を奢ってもらったことを思い出す。少し舐めただけで気分が悪くなった。上司は笑いながら「こりゃあ下戸だな」と囃した。両親はさぞがっかりするだろう、父に至っては怒り出すだろうから、私は酒については家族に対して秘密主義でいようと思っている。「あら、お酒はまだ?」と少し驚いた母の顔にヒヤリとしながら、冷静な笑みで「仕事が忙しくて」と答えた。このごまかしは長くは続かない。数ヵ月後はどう言おう。

「春栄」

「はい」

「軍部に入る気はないの」

くすんだ緑色のチープなソファに座る母の不自然さ。私が「こう」でもならなければ一生座ることはなかっただろうそのソファに彼女はあまりにも馴染まない。もう何度もここへ来ているのに。私はコーヒーを啜った。母は決して手をつけないコーヒー。量販店の、インスタントの。母の知らない世界の。

「ありません」

 カチャリとマグカップが音を立てる。私が家を出てから母は急に老け込んだ。唇にくっきりと塗られたルージュだけがいつまでも華やかで無理矢理に見え、くるりとカールした睫毛がいつまでも変わらず女を主張したがっている。少なくとも時間の流れに逆らうことは、滑稽なことである、らしい。

 母は重いため息を吐いた。「春栄」。お願いだから、というように私の名を呼ぶ。

「どうしてそう頑ななの」

 あの男がなんだっていうの。

 「貴方が悪いわけじゃないの。だから、そんな風に罪悪感を持つことないのよ。これは、決まっていたことなんだから」

貴方は優しいから。そう言って母は私の頬に触れた。ボタンが描け違っているような違和感に私はムズムズしてしまう。耳を塞ぎ、私を視界に入れぬまま己の話ばかりを正とするこの母に、私はどうにもたまらなくなってしまう。生温い体温。見当違いの言葉達が降り注ぎ、僅かな隙間から私を綻ばせる。そのうち私はゆるゆるとほどけて、一本のひもにでもなってしまうだろう。そうなる前に、私はあの豪奢で脆弱な家を出たのだ。ひもになるわけにはいかなかった。まだ。

「軍部に入る気はありません。決めたことを覆すつもりは、ありません」

 だからもう貴方が出来ることなど何もないのだ。彼女は絶望的に顔を歪め、肩を固くした。上品なストライプのツイード。私の一カ月の給料の倍はするであろう。私は外出着から寝間着に至るまで、上等なブランドもので構成された彼女のクローゼットを思い浮かべた。もう長いこと実物を見ていない。

「こんなことになるなら…」

 母が唸るように呟いた。私は残ったコーヒーを飲み干す。家を出て行くときも母は言った。あの男のせいで、と。

 夕飯を食べる気はしなかった。さっさと風呂に入って横になりたい。

 私は優しくなどない。

******



目が覚めた時の気持ちを何と言ったらいいだろう。いや、そこは確かに無だった。

酷く気だるく、目の前のシーツの皺を私はしばらく凝視していた。無意識に瞬きをしなかったら目が乾き、目をつむってからもう一度開いた。シーツの白さが目に染みた。脚をゆっくりと動かして、自分に体温があることをぼんやりと感じる。何が起こっても、起こらなくても皮膚が温かいことに無感動に驚いた。

 自室のようだ、と思った。どのくらい眠っていたのだろうか。

 起きてはいけない気がした。もしこの部屋を出てしまったら、外へ出てしまったら―。その実、起きなければならなかった気がした。私の意識を掬い上げ、この世界に引き戻したのは私自身であった。

 カーテンから、光が漏れている。日中のようだ。私は意を決して、あるいは何も考えぬよう慎重に無を保って、上体を起こそうとし――、あまりに腕に力が入らぬことに驚いて、そのまま―ベッドから転がり落ちた。

 ドシン、と派手な音が立ち、騒がしい足音の後、ドアが開いた。

「ああ、目が覚めたのですね」

 入ってきたのは、見たことのない初老の男だった。薄い水色のワイシャツに、スラックスを履いている。今考えればこの屋敷の客人にしては安い出で立ちをしていたと思うが、その時の私は唯々頭がぼんやりとしていて、そんなところまで思考が及ばなかった。男は私の傍に寄ると、腕をとって軽く持ち上げ、脈を確認した。

「…良かった。大事ないようですね。長くお眠りになっていたから筋肉が少々鈍っておられるのでしょう」

 脇に腕を差し入れ、私の上体を助け起こす。なるほど、身体は鉛が詰まっているかのように重かった。

「痛むところはありませんか」

「ええ。今打ったところだけです」

「ちょっと失礼」

 男は服を捲り上げて打った箇所を確認した。

「ああ、大丈夫。少し赤くなっていますがじきに消えるでしょう」

「ありがとう、ございます」

 男はにっこりと微笑んだ。目じりにしわが寄って、好ましい笑顔だった。

「お父様にご連絡差し上げて参ります。手すりにつかまって…立てますかな。私がお支え致します」

「お願いします、」

ベッドに腰かけたが、私はそのまま脱力してしまい、どさりとベッドの上に身を横たえることになった。ドアが控えめに音を立てて閉まる。しいんとした静寂の中で、私は考えようとした。だが、依然として頭の中は靄が立ち込め、何も考えられない。記憶の最後はいつだ…。男は長く眠っていたと言った。筋肉が衰えるほどの深い眠り。そういえば、今日は何日だ。

 目を這わせたが、卓上カレンダーは机の上だ。視界に入らない。日の光が濃く、柔らかかった。推察するにおそらく夕刻だろう。男が服を捲った時に気づいたが、服が着替えさせられていた。薄い生地の、病人が着るような前合わせの入院着だ。私の所有着ではないが、サイズはぴったりだった。

 何かを、忘れている気がした。一体、何を―。

「っ」

 全身に電流が走った。

 頭の中に突然浮かんだのは優しい髪色。

どうして。そうだ。どうして今。

 あの壁の、塗りたくられた黒。そう真黒な黒だ。

 私は殆ど反射的にベッドから身を起こそうとし、全く力が入らないことも理解できないままに何度も身を捩った。傍から見れば相当滑稽だっただろう。必死で身を転がして、床に勢いよく落下。強烈な痛みに身体が悲鳴を上げ、ぼんやりしていた思考が更にクリアになる。

「ぐっ…」

 腕をついて身体を引きずった。ちっとも前進しない。沈黙している両脚が憎らしく、もどかしい。

「何をしているんだ春栄」

 頭上から、久方ぶりに聞く声が降った。力を込めようとしても込めきれない拳を、握り締めて私は首を伸ばした。今日は何日だ。こんなになるまで、私はどうして眠っていられた。君を残して。私は。

「父様」

 視界の先に眉間に皺を寄せた父がいた。怪訝な顔でこちらを見下ろしている。

「どうした。安静にしていなさい」

「父様!状況が分かりません。何が一体どうなっているんです!」

「…すまないが、手を貸してくれ」

 私などそこにいないかのように父が後ろを振り返った。入口から、先程の男が顔を出す。父と二人、抱え上げるようにして私を担ぎあげた。床から身体が離れる。脇と腰に、じんとした痛み。

 壁の黒が私の思考を目まぐるしく回転させていた。あの壁の、全てが私を急かしていた。君の目の、霞がかったような翠色が。全てが。

「父様!!嫌だ!!やめろ!!!」

 怖いんだ。

 頭の中に、布がかけられてるみたいな。

 おれが訳がわからないうちに。

 

 食われる。


 そのうち私は訳が分からず興奮し、手足をばたつかせて抵抗してワイシャツの男の頬を二発殴ってしまった。何かチクリとするものを腕に感じ、そこからはゆっくりと降下するように意識を手放した。ブラック・アウト。沈澱していく意識の最後の一滴、ノアのあの瞳が、ぼんやりと見えた気がした。


「春栄」

「なんだい、こんな遅くに」

「眠れない」

「………こっちへ来る?」

「いいの」

「いいよ」

 衣擦れの音。ベッドのスプリングの軋み。

 人一人分の温度。

「よくここまで来れたね。誰にも会わなかった?」

「メイドがいたけどうまく隠れた。あ、明日メシが運ばれてくるときにさ、おれがいなかったら大変か?」

「ちょっとした騒ぎにはなるかもしれないな…」

「……どうでもいいや。春栄は困る?」

「そうだな…それで君と会えなくなったら困る」

「あー……」

「どうでもいい?」

「……いや。それはおれも困る、かも」

「そうか。明日の朝はやくに送っていくよ。私がうまくごまかすから心配ない」

「まじで。良かった」

 春栄。

 なんだい。

 春栄。

 ……なんだい、ノア。

 ……呼んだだけ。


 星の本、また借りてきてよ。流星群の本。

 また説明してやるよ。

 

 流れ星は、大きさが0.1ミリメートルくらいの小さい個体の粒が大気に落下し、空気との摩擦で燃えて光る現象です。

 あれが好き。ゴッホの、靴の絵。

 

 

「酷い有様よねえ」

「やっぱりね、私ゃおかしいって思ってたのよ」

「ありゃ狂人の目だったもんね」

「おお怖い怖い」

 メイドたちが口々に話す。脚に自由がきけばしずしずと空気のように通り過ぎることも出来るが、如何せん車椅子ではそうもいかない。車輪の回る僅かな音にぴくりと反応すると、彼女たちはさっさと自分の仕事に戻った。見事なものだ。

 ノアの部屋の前までくると、中からガタイの良い男たちの作業する姿が見えた。ドアが外されていたので、中の様子は丸見えだ。壁はまるで新品のようにピカピカのクリーム色だった。

 まるで最初から君などいなかったかのように。澄まして新しい。あまりに都合のいい部屋に、私は君の気配を必死で探して目を凝らした。

 なんと言えばいいだろう。泥水の中から抉りあげたようなうめき声だった。深夜三時。獣のようなその声で私は目を覚まし、殆ど反射でベッドから飛び出したのだった。本能が、あらゆる過程を無視して直接私に警告を鳴らす。ノアの部屋の前で使用人の女が腰を抜かして座りこんでいた。息を切らす私をゆっくりと振り返る顔が青ざめている。

「……坊っちゃん…」

 悪魔でも見たかのような顔。息が一瞬止まり、足元からざあっと音を立てて身体が冷えていく。女はそれ以外に何も言わない。身体が固くなり、動かない気がした。動いてはいけないと、私が私に強く訴える。それでも、一歩が出てしまえば、後は急くように足が動いてしまった。

ノア。

君の頭の中の、煩雑な図書館は。

整理がされていないからいつか、崩れて、君が埋もれてしまいやしないかと。押しつぶされてしまうんじゃないかと。

私は。

きっとずっと。

暗闇が薄いのは、夜明けが近かったからか、それともその日の満月が彼の部屋を照らしていたからか。月明かりと薄い靄のかかった空にカーテンはかかっていない。君の部屋にはベッド以外のものがないのだ。私の部屋が、私たちの部屋だったから、それでいいのだと思っていた。

 時間が止まる。一瞬だけの凍結と、すぐさまの融解。自分の目が見開かれるのを、どこか他人事に感じた。

 昏い昏い目。洞穴のような、どこまでも続く虚ろな闇が。それが無機質に開いていた。ノアは靄のようにふらりと立っていた。朝になれば消えてしまいそうな頼りない背骨。ノアはこの世界にはいなかった。つまりどこか遠くに行ってしまった後で、ここにあるのは彼の骸。

 壁一面にぶちまけられた真黒な絵具は、床の方にも垂れていた。その近くに、底の黒いバケツが転がっている。君が描いた中で一番乱暴で、大きな絵。君の亡骸の右手には、それでもゆるく絵筆が握られていた。

「ノ、あ」

 誰にも聞こえなかっただろう。声というものはこんなに頼りなく震えるのか。祈るように私は呟いた。神様、と言ったのかもしれなかった。

 骸は鏡のような淡々とした瞳。それが、私を通り越してどこかへ向けられていた。

いなくなってしまうのか。こんなに、こんなにも突然。

(……"いなくなってしまう"?)

 ぽとり。カタン。

 絵筆が落ちた。それを彼の瞳が追う。ゆっくりと。首が下を向く。さらり、と髪の毛が揺れた。

 瞬間、ぶわっと激しい焦燥感が私を突き動かした。

「いやだ」

 脚が前に出た。勢いづいて君の元へ駆け寄ろうとした。心臓が悲鳴を上げるように脈打ち、痛いくらいに鳴る。次の瞬間、脚がもつれた。

「あっ」

きいいいいいいいいいいいいいいいいん。耳をつんざくような耳鳴り。よろけ、躓いて私は無様に転んだ。酷い頭痛が突如私を襲う。なんだ、これは。米神がすり潰されるように痛い。先程の心臓が、頭に移動してきたみたいに。

「うっ、ぐ……」

床に這いつくばって目をこじ開けた。視線のすぐ目と鼻の先。君の足の指がある。視界がぼやけるほど近く。

「いやだ」

 立ち上がれない。

 君の脚のすぐ横に、絵筆が転がっていた。それを拾い上げ、君に渡さなければならないのだ。それだけが、私にははっきりと分かる。痛みが、思考を晴らしていく。無駄な言い訳は何一つ消えて。真実だけがシンプルに残った。

 私は、私は。こんなところで歩くこともままならないでいるわけにはいかない。いかないんだ君に。君に戻って来てもらわなければ。いかないでくれ。いかないで。お願い。

 お願い、お願いだノア。

 視界がぼやける。人が駆けつけるばたばたとした足音が聞こえた。

 「春栄!」母の甲高い声もする。

 ノア、ノア、ノア。

 君の中から、君を掬いあげられない。

 「いやだ…」

 ノア。


 絵筆の先の白い絵の具が床に点をつくっている。その光景を最後に、私は意識を失った。私は兵学校の試験にトップの成績で合格し療養期間を経て無事卒業、ノアは約半年の間、私の前から消息を絶ったのだった。














 








 











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