潜入調査!?
「…今日は潜入調査をしてもらう」
ガルムさんが紙を持ちながら不安そうに話を進める。
「潜入調査?」
ランキング外部活活動は軍を決めて「いじめを無くす」という名目のもので教師に公認だ。
「最近ニュースになってる暴力団に出入りしている生徒が学校の中に居るらしくて、それを調査してほしいと校長に…誰か…やりたい人居る?」
軍を決める情報も言えば教えてくれるが、
その代わりに雑用も厄介なこともよく頼まれるのが欠点だ。
「暴力団って…俺は無理だわ…」
とやが嫌そうな顔をして言う。
「そんな危険なの、教師でなんとかすればいいじゃん」
ユキも嫌そうだ。
「そうしたいのも山々だが…なるべく警察沙汰になる前にどうにか対処を…との事だ。じゃあ、エルか、ヒロか…」
提案するように、ガルムさんが言う。
「ガルムもだな」
「俺はヤダよ…」
ヒロが睨むようにガルムさんを見る。
暴力団って言うけど…
学校では何か問題を起こしたとは聞いたことが無いし、
プールの件はイレギュラーだけどそれ以外はそうなる前に軍を下げるなりして対処している。
そうなるとただの噂か…。
「ボク…やってもいいですよ。」
「はっ?」
一瞬にして空気が凍り付いた。
「ローは論外だね…金髪ツインのただでさえ目立つ髪型してるのに…」
もごたんが目を細目ながら言うのに対して
言い返す言葉に口籠り、フードで顔を隠す様に深く被る。
「そもそも俺様がいること忘れてないよな!」
「偽手もいるから1人じゃない…」
何となく、対抗心が芽生え言う。
「ガルム部長が行った方がいいですって!依頼受けたのも、部長じゃないですか!」
ナユタさんが的確に言う。
「・・・いや、ガルムはヘタレだからさ」
独特なアクセントのある話し方をする声は窓の外から聞こえる。
「なんだ…ここも変わねぇな!!」
ガルムさんが窓に近付くと今度は部室の中から聞こえた。
周りを見渡しても声の主を見付けることはできない。
「わぁぁ!!綺麗な金髪さんだね」
僕の髪に違和感を感じたと思うと、
さっきの声の主がボクのツインテールを触る。
スッと僕のツインテールを触る手付きは
まるで、美容師のようだ。
「あっ、地毛じゃなくて、染めてるのかな?
…っにしてもサラサラで綺麗でいい匂いだ~」
「えっ…あの…」
「なんだお前!離れろ!!」
髪を鼻に押し付けてスンスンと鼻息を立てて匂いを嗅ぎ
変態だと思われる人は頬に髪を擦り付けて言う。
「かわいいね!キレイだね!
こんなに長いと、髪のお手入れは大変でしょ?」
「おい…刃蛇!!今すぐ離れないと怒るからな!!」
ガルムさんが怒鳴ると刃蛇さんはコワイコワイと言いながらガルムさんの隣に立つ。
アルミホイルを髪に融合したような銀色の髪に毛先が尖った謎の髪型をしている。
「あ~!金髪ツインテちゃん!ねぇ、お友達なろうよ!!」
髪の長さは肩につかない程度でパッと見て男性が女性か区別がつかない…
「刃蛇…次は無ねぇぞ…」
ガルムさんは今にも爆発しそうな爆弾のように右手を握り、刃蛇さんを睨み付ける。
「ガ、ガルムさん…その方は?」
「中々の変態だな」
落ち着かせようとテンパりながら言う。
「さすが!!金髪ツインテちゃん!俺の名前は『刃蛇』これでも高等部の3年生!イエイ」
イエイとブイサインをしながら自慢気に話す。
「ここが廃になる前に俺が問題起こしてて、よく使ってたんだよ?」
「問題起こしてて、よく使ってたって…相当の問題児じゃん…」
とやが目を細めて言う。
中等部と高等部の校舎があって高等部はどうなのか知らないけど…
少なくとも中等部では相談室を使うことは年に一度あるかないかぐらいだ。
そんな相談室を使ってたと言うことは…
危険な人物と言ってもいい…。
「なんでそんな問題児がラン外に?」
エルが警戒しながら言う。
「金髪って染めるときに色のムラが出るから難しいのに色のムラが無いけど…自分で染めたの?生え際までキレイに染めてあるし地毛だって一瞬思っちゃったけど、顔は日本人って感じ全開だからさ…」
刃蛇さんはいつの間にか僕の髪を手にとって見ている。
「あっ!『日本人って感じ全開』ってのは良い意味だよ?金髪ツインテちゃんは小顔だし!
う~ん、黒髪も似合いそうな気がするけど青髪も…
いやいや…ここはやっぱり茶髪でショートカットかなぁ」
ジロジロと僕の顔を見ながら髪型を思考する刃蛇さん…
次の行動が予想できない。
「カットモデルはどう!!?」
「うぇあ!!?」
いきなり大声を出されて、
フリーズしていた脳が動き出して変な声が漏れる。
「何…今の声…」
もごたんが笑い転げて、
ぷぷっと声を出さずに吹き出したとや…
「とりあえず二人殴っていいですかね?それか、弁慶の泣き所と言われているスネを全力で蹴りたいのですが…偽手が…」
「俺様も面白かったからいいぞ!」
「偽手は明日からおやつ無し」
「そんにゃ!」
「と、とにかく!僕はカットモデルになんてなりません!!
それと何で問題児の先輩(仮)は、廃相談室にいるんですか!?」
「そーだそーだ!」
猫が威嚇するようにウーと唸り声を出す僕を見て更にもごたんが笑い転げる。
「猫じゃん!!」
「猫耳付けようぜ!!」
ユキも参戦する。
「はいはい…話をずらさない!」
それを止めるガルムさん。
「刃蛇がここにいるのは潜入調査の助っ人で…確かにローが言う通り、問題児だけど、柔道だと黒帯貰ってるぐらい強いから…」
「だから潜入調査に混ざって貰おうってことか…」
エルが納得したようにガルムさんの話を完結させる。
「まぁ、そう言うこと…」
ガルムさんが困ったような顔をして、みんなの顔を伺う。
「俺は金髪ツイテちゃんとがいいな!」
沈黙が続きそうになった所を刃蛇さんが阻止するように僕を指名する。
「ローを危険な所に行かせられるわけな__」
「へぇ、ローちゃんか…」
「聞けよ!!」
ガルムさんがキレ気味で言う。
「じゃあ、ローちゃん貰うね」
刃蛇さんはそう言ってボクの手を掴ち
ボクの体を軽々と持ち上げて肩に乗せる。
「っ!!?」
「なんだこのゴリラ!!離せ!」
潜入調査というより…すでに誘拐事件なような気なする。
そう思いながら長い廊下を移動する。