第12話 多重仮説
第12話 多重仮説
シルバの多重仮説によれば、1個の核子は原子核の内側に1個と外側に最大4個の核子と核力により結合できる。これから原子核の中心に陽子か中性子を1個持ち、一重目には最大4個の核子、二重目には最大4×4=16個の核子、三重目には最大16×4=64個の核子、四重目には最大64×4=256個の核子、五重目には最大256×4=1,024個の核子が存在できることになる。
原子核の中心が中性子の場合、次の2つのいずれかの振る舞いを起こす。1つは電子を放出し陽子となる。通常放出された電子は、陽子を原子核として、その軌道にのることになる。つまり水素と化すのである。電子交換のとき、放出された電子は対になっている陽子と結合し、中性子となる。また、この振る舞いからすると電子交換のとき、陽子側が中性子側の電子を引っ張り込むのでなく、中性子が放出した電子を陽子が捕獲すると考えたほうが、上手く説明がつくようである。いずれにしろこれらのプロセスの詳細を調べるためには、新型の脈流顕微鏡を待つのがいいようである。1つは、中性子の電荷が0であるのでクーロン力が働かないため、近傍で最大の重力を持つ物質に引き寄せられる。このとき、中性子は位置エネルギー(最大の重力を持つ物質との相対位置)を運動エネルギーに変換する。しかし、運動による移動の過程でいくつもの物質の影響を受けて、かならずしも最初に定めた物質に辿りつけるわけではない。
原子核の中心が陽子の場合、振る舞いは単純で近傍の電子を捕獲して水素になるだけである。
尚、ここで原子核の中心を取り巻く核子の位置(何重目にその核子が配置されているか)を重数と呼ぶことにしたい。
核子は、原子核の内側に1個と外側に最大4個の核子核力により結合できるが、外側に結合する核子が増えるに連れて、同じ重数に配置されようとする核子に斥力に似た阻害力を働かせると考えている。これは桃九のアイディアで、原子核は複雑性より安定性を重視すると考えたためである(桃九の持論により内側に物質が入り込むと複雑性が増すことになる)。同じ重数に何個の核子が存在するのかは、この阻害力と原子の形成のプロセスのタイミングが関係すると考えられている。すると、同じ陽子数の原子核でも内部構造の異なる元素が作られることになる。これが同素体と関係していると思われる。しかし、これらの全ては仮説であり、新型の脈流顕微鏡に期待しているところである。
シルバの頭を一番悩ませているのが、陽子-中性子間の電子交換である。核子が2個だけのときは問題とならないが、核子が複数個となったとき、陽子-中性子の対が相当数できることになる。可能性だけを考えれば、中心の中性子の電子が重数の最も高い陽子に移動することもある。また、電子交換は周期性を持っているため波動を作り出す可能性もある。これらの波動が干渉しあい力が増幅することも考えられる。尚、増幅とはエネルギー値は変わらないが、影響を与える力が増える現象である。このとき、力の等価仮説は適用できない。電子交換(弱い相互作用)の力は核力(強い相互作用)の1/1,000,000と見積もられているが、電子交換の数が増え、波動が増幅すると核力にも少なくない影響を及ぼすと考えられる。
いくつもの課題を抱えているが、さらに原子核内の働きが本当にクーロン力以外の力を電子に及ぼしていないか検証が必要である。また、原子核と電子群を1つの集合体として見た場合、創発現象を仮説によって予測することは不可能であるから、創発現象の有無も検証しなければならない。
このように、原子核の構成と機序を決定するためには、いくつもの課題を残し、新型の脈流顕微鏡による実験や観察が待たれることになった。