第11話 力とエネルギーの換算
第11話 力とエネルギーの換算
シルバの力の等価仮説によれば、力をエネルギーに換算できることになる。換算に必要な前提条件は対物質に働く力がそれぞれの方程式を満たしたとき(飽和エネルギー状態)となる。
通常、全ての力は、空間線から供給されるエネルギーで満たされている。重力相互作用は運動エネルギーによって変化しやすいが、力の等価仮説によれば、これを位置エネルギーに換算できるはずである。ところが、地球上を基準とすれば値を求めることはできるが、重力相互作用の飽和エネルギー状態の基準値がわからないため、値は局所的かつ相対的(地球上)にしか適用できない。つまり、その物質が宇宙に初めて存在したときの位置がわからなければ正確な値は計算できないことになる。
電磁相互作用も重力相互作用と同じく、力に距離(位置)が関係する。しかし、電磁相互作用は、+-の極に働く力である。つまり、+-の極の基準距離を設定すれば、宇宙全体に適用できる式が成立する。1ジュール(J)は1ニュートンの力で物体を1m動かすエネルギーであるから、基準距離のクーロン力(N)がわかれば、エネルギー値(J)が求められる。
強い相互作用(核力)のエネルギー値(J)は、現在不明である。このエネルギー値(J)を核分裂や核融合の実験で求めることは困難である。核分裂や核融合で得られるエネルギー値(J)は、質量の欠損に依るところが大きく、その質量の欠損から得られるエネルギー値(J)を精度よく測定することが困難であることが理由である。エネルギー値(J)を精度よく測定するためには欠損した質量を精度よく測定しなければならない。確実な実験の方法は核力で結合した対の陽子、中性子、素核子を引き剥がすことが有効と思われるが、現時点でその技術力を持っていない。また、核力の影響範囲が非常に短いため引き剥がした時点で霧散する可能性もある。
弱い相互作用については、陽子-中性子間の電子交換の過程で残った質量をエネルギー値(J)に換算して、弱い力(N)を求めたが、この値の検証はまだ済んでいない。また、力の影響範囲が強い相互作用と同じかもっと短いと考えられていて、そもそも弱い相互作用は物質の存在する空間内で存在の不連続性も指摘されているのである。
このようにシルバの力の等価仮説はいくつもの課題を抱えている。しかし、この仮説が立証されれば4つの力(電磁相互作用、重力相互作用、強い相互作用、弱い相互作用)を1つの力として扱うことができるかもしれない。
仮に上述の課題をクリアできたとしても、エネルギーや力の質の問題が残る。4つの力はそれぞれが異なる質を持っていて、エネルギー値と力の単位(J、N)を統一しているのは、ただ4つの力の大きさの程度を知りたいだけだと思われる。一定の力の程度を知ることができたとき、例えば、電気の力を動力(運動エネルギー)に変換して技術に応用できる。
見方を変えれば、技術がないから実験ができず課題が残ることになる。シルバは画期的な実験装置を構築できる技術者を欲しいと願っていた。おそらく、利助たちも同じ思いを抱いているのであろう。