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脈流  作者: 智路
1 プロローグ
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第8話 高野山

第8話 高野山

 新幹線と在来線を乗り継いで和歌山県に在する高野山に桃九が辿り着いたのは次の日の陽も沈みかけた頃だった。てっきり目的のその人は高野山の繁華街に住まいしていると思っていた桃九の予想は外れて、彼は繁華街から3つほど山を越えたところに住居を構えているようだった。

「勝兄は知っていたの?」

「言わなかった?」

「あら、ここの多くの人たちは随分精神の修練をしているようね。普通の人と比べてだけど。わたしや勝さんのことを気付かれる心配はなさそうね。はっ!あそこにいる人は?」

「円光様ですね。ここのNO.3ですよ」

「何かに気付いているようだわ」

「何者じゃ。悪意は感じられぬが、この世のものでないものがこの付近に居る」

円光はそうお供の者に告げたのだが、お供のものには何も感じられない。

「ここから早く去ったほうがよさそうね」

陽も暮れかけていたのだが、桃九は彼のもとへと歩を進めることにした。自分の住まいも山の奥地であるから、夜目も利くし山行には慣れたものである。

「先に行って、到着を知らせておこうか。何時ころになる?」

 彼を知っているのは勝智朗だけである。

「ゆっくり行くから陽が昇る少し前くらいかな」

 幸い空は晴れていて星々が眩いくらいであった。道を照らすのは半月であったが、桃九にとっては昼も同然の明るさで道に迷う心配はなかった。やがて、薄っすらとあたりが明るくなってきたとき、粗末な小屋が見えてきた。一人の人物が小屋の前で落ち着きのない様子で待っているようだったが、その人が件の彼であると思われる。

「遅い。いつまで待たせる気だ」

桃九は約束の時間に到着したのだが、彼にとっては長い夜であったらしい。

「こちらが、佐々利助さん。で、これが弟の桃九。もう一人いるけどチロさん、こちらにこれる?」

 チロは利助の受け皿を探したのだが、見つからない。

「利助さんの精神の受け皿は本人のものの他に1つしかないようね。勝さん、離れてみて」

 チロは勝智朗と交代で利助の受け皿にのった。

「初めまして、利助さん」

「おお、貴女が……」

 利助は感極まった様子で暫く声にならなかったが、

「早速じゃが、これを見てくれ」

 利助は、そういうとぼろい小屋の裏側に歩いていった。そこには、これが本宅かと思わせる小さいけれど手入れの行き届いた小奇麗な小屋が1つ建っていた。

「これじゃ、これ。細胞分裂を起こさないんじゃ。最初は多核体かとも思ったのじゃが、細胞核の数も少ないし、眺めているとぼ~っとした何か光るものも見えるし」

「生命の元がかなり増幅していますね。利助さんの探求の思いの強さが伝わってくるようです」


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