第1話 精鋭国家
第1話 精鋭国家
黎明元年は2048年である。それから3年余りが経ち黎明4年(2051年)を迎えようとしていた。ムー5の組織改変は上手くいっているように見え、各部署ではいくつかの成果を挙げていた。帝国からの侵攻も接触すらなかったことにチロは安堵を覚えていた。
ここで主な人物を紹介しておきたい。尚、不老率100%のものは自動的に25番目のアミノ酸の施術を受けている(ほとんど不死化)。また、超人類は全て不老率100%である。
・桃九…ムー5のトップ。数学、情報工学が専門。大量計算に精通している。不老率100%。
・チロ…桃九の後見役。精神体。桃の精の第3世代。
・サンガ…桃九の相談役。桃の精の第5世代であるが、肉体を持つ。
・東雲…論理感性融合局長。旧名円光。仏教に精通している。不老率100%。
・耶律楚材…行政局長。超人類。
・ソクラテス…技術開発本部長。盾構造部長を兼務。超人類。
・ガリレオ…技術開発副本部長。盾構造副部長を兼務。超人類。
・アイン…動力・エネルギー開発部長。不老率82%。
・リー…通信開発部長。不老率57%。
・利助…極座標配置調査部長。生物部長を兼務。不老率75%。
・シルバ…原子核・元素調査部長。不老率46%。
・アバ…防衛局司令官。士官学校校長を兼務。不老率78%。
・ラー…防衛局特殊部隊隊長。200余命の超人類を配下に持つ。超人類。
・勝智朗…精神体。利助とコンビを組む。
・サエ…論理感性融合局メンバー。精神体が見え、会話ができる。不老率71%。
尚、論理感性融合局メンバーはチロ・桃九・アバ・サエに東雲を加えて構成されている。
不老率が30%を超える人類代表は上記以外に7人存在し、各部署の補佐役を務めている。不老率が20%を超える人類代表候補は、42人に達し、不老率が10%を超えるムーの教育機関の生徒は232人にのぼった。
ケンタウルス座α星への恒星間航行を成功させた人類であったが、あれから太陽系の外には出ていない。帝国と接触の可能性があるからで、現在の太陽系は帝国の侵略を防衛するための技術開発や人材発掘に力を注いでいる。チロは技術や人材による精鋭国家を目指しているが、それにはまだほど遠いようである。
チロが桃九とアインに与えたコンピュータに似た機器は、チロルとパルスと名付けられた。しかし、その機器は脈の基本構造を学ぶための教育機器で、その構造は今回の技術開発にはほとんど応用できない。それでも脈の基本は人類の発展に必須であり、人類代表とその候補にチロルとパルスの同型機器が配布された。ただ、学習能力の低い超人類は、ソクラテスとガリレオ以外には配布されていない。
超人類は長寿命(事故等がなければほとんど不死)なため、経験量が豊富である。その経験量により2015年ころまでは、通常の人類を凌駕し、人類の支配権を持っていた。今では技術開発において超人類は人類に及ばなくなっている。ソクラテスやガリレオは超人類の中でも特殊な部類であった。おそらく、23番目のアミノ酸の効果が脳に現れたためと思われる。