第16話 黎明期
第16話 黎明期
人類は恒星間航行を成功させたが、後にこの時代を黎明期と呼ぶことになる。ここで、現時点での太陽系と6大大陸、ムー5の構成を述べておきたい。太陽系では冥王星や海王星を含む各惑星にコロニーの建設が進み、移住者は増える一方であった。木星や土星にも巨大な宇宙ステーションが5基ずつ惑星の軌道に乗っている。各惑星の衛星にも進出し、地球上の人口増加問題の解決の目途はたっていた。食料もロボットによる人工農場が完成し、食料不足の心配はなくなっていた。
地球ではユーラシア・アフリカ・北アメリカ・南アメリカ・オーストラリア・南極の6大大陸の大部分の開発を抑制し、むしろ自然復興の方向に向かっていた。ほどなく、ムー5を除いて地球上に居住区は存在しなくなる。全ての人類がコロニーに移住することになるのである。地球は自然保護区となり、各コロニーからの旅行者が利用することとなる。
ムー5のトップは桃九となった。後見人はチロで、相談役はサンガとなる。太陽系の行政は耶律楚材が長となり監督している。技術開発部の長はソクラテスであり、盾構造部の長を兼務している。通信部はリー、動力・エネルギー部はアイン、極座標配置部は利助が長となっている。原子核・元素部の長に抜擢されたのは人類代表候補から人類代表に格上げされたシルバが長となっている。尚、利助は勝智朗とコンビを組んで小規模ながら生物部の長も兼務している。
チロ直轄の秘密部署が存在した。この部署は将来に向けて論理と感性の融合を目指している部署であった。円光は東雲と名を変えていて、円光の最大の功績として仏教は宗教と古代科学の融合論とみなすことができ、今日でも通用する論理展開と感性の橋渡しを行っていることをみつけたことがあげられる。その東雲が長を勤め、桃九、アバ、サエがメンバーであった。桃九とアバは他の部署と兼務となる。
軍隊に似た防衛部隊と士官学校の長はアバである。ラーら超人類200余名は特殊部隊として配属されている。尚、ソクラテスのように技術開発部に配属された超人類も30名を超えていた。
この時、人類で不老率100%を達成し25番目のアミノ酸の施術を受けているのは桃九と東雲だけである。人類代表は10人を超し、その候補は30人を超している。
このように陣容は整ったように見えたが、ここが出発点となり、成果はほとんどあがっていない。チロの中では帝国は敵性国家であるが、人類には知らせていない。天の川銀河の中央付近に人類と同じ存在が帝国を築いてサンガはその特使であると人類には伝えてある。敵性国家の存在は極一部のものしか知らない極秘事項であった。
帝国の侵略があるのか不明であるし、あるとしてもいつなのかわからない。偵察要員としてサンガが適任であるが、偵察要員を送るということは帝国に不必要な刺激を与える可能性があるため、現時点では偵察は行わないことにしていた。
こうして人類の進化、進歩は一歩を踏み出したのであった。現在は2048年である。