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脈流  作者: 智路
5 銀河の旅人
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第15話 地球の盾

第15話 地球の盾

 ムー5でサンガはほとんど桃九と行動を共にしていた。これはチロの配慮であった。とはいえ、チロが桃九の分枝に宿っている時間は短い。結局、サンガと桃九が二人きりとなる時間が増えることになる。尚、チロの配慮とはまだ完全にサンガを信用していないための措置のことである。桃九と一緒ならば何かが起きても問題を最小限に抑えられると考えていた。チロはサンガの一部が洗脳され、時限的あるいはキーワードなどによって悪意ある存在に変貌することを恐れていたのである。

 桃九はそうとは知らず、サンガを慕うことになる。20万年生きてきたサンガの経験と知識、チロに迫るほどの精神の大きさなどに傾倒していった。サンガは桃九にどうでもいいようなことは惜しみもなく教えてくれるが、肝心な箇所になると口を噤んだ。これは桃九自身で答えをみつけなさいということで、サンガは答えへの道筋を示唆することは多かった。1年を経たころ桃九の不老率は100%となり25番目のアミノ酸の施術を受けた。これはサンガの影響が大きかったといえるのである。

 この2、3ヶ月前からサンガはムー5の筆頭講師となっている。その頃にはチロのサンガへの疑惑はほとんど薄れ、ムー5の知識や技術の底上げをしようとする狙いがあった。

 チロは考え方を改めた。いくらサンガを警戒しても問題の本質の一部に過ぎない。問題の本質はセイトと帝国に存在するのである。サンガを筆頭講師としたのもこの本質的問題に備えるためであった。

 チロはセイトと帝国の情報が欲しかった。表面的なことはサンガに聞けばわかるが、セイトと帝国の本当の目的がわからない。チロが帝国に接近することは可能であるが、共鳴によってセイトに気付かれる恐れがあった。チロの恐れるのは、何らかの手段で地球や太陽系が帝国に侵されることであった。

 タンタ176号のエンジンが最大の問題であった。このエンジンは空間線の極の対消滅により推進していた。1対の極の対消滅でタンタ176号規模の飛行艇なら半永久的に宇宙を航行することができる。この極の対消滅は桃の精たちの暗黙の了解として禁忌となっているとチロは思っている。これは神の子への反逆と見做される可能性が高かった。それをセイトはおかしているのである。これに守備的に対抗するためには脈による強力な盾が必要であった。

 脈による強力な盾の開発が最優先事項となったムー5では技術開発部門の組織の改変が行われた。中核となるのは次の5つの部門である。

・通信部…長距離レーダーと精密分析波の開発

・動力・エネルギー部…対消滅炉を超える動力の開発・脈流とエネルギー変換法の開発

・極座標配置部…物質による脈制御の極座標配置の新規発見

・原子核・元素部…脈と物質の境界あるいは関係の研究

・盾構造部…上の4つの部門を統括して具体的な盾の構造構築

これと平行して士官養成学校も設立された。主として指揮系統の確立と判断力の向上が目的とされた。

 チロはこの体制で有事の際、対抗できるとは思っていなかった。20万年の歴史の差があるのである。これらは人類の目的意識の一本化と成長の推進が本当の目的であった。万が一の有事の際、チロはセイトと刺し違えるつもりでいたのである。


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