表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脈流  作者: 智路
1 プロローグ
8/114

第7話 勝智朗の朗報

第7話 勝智朗の朗報

 チロとの出会いは桃九に大きな衝撃を与えたのだが、桃九は少し困惑していた。

(真なのか偽なのか。つまりチロを信じるか否かだけど、確かめようもないし。何が問題か考えてみることにするか。チロが頭の中に同居したのは、勝智朗兄のこともあるから特に問題じゃないし、テロメアのことも調べたからいいとして、やはり生命の元の存在が問題になるのか)

 しかし、確かめる術を桃九は持っていなかった。待てよと思ったのは、チロの出現で自分の目的への道筋が幾分脱線したことに気づいたからであった。どちらかと言わなくとも先走り過ぎているのであった。確かに自分は不老の可能性を求めていたが、それは人工のたんぱく質(特に酵素)を合成することで実現させようとしていたのであった。しかし、チロの話が本当ならばそれだけでは不老は難しいことになる。これから何を為すべきかここが思案の岐路となりそうであった。

「桃九、見つけたよ」

「勝兄、何処に行っていたの?随分久し振りだね」

「おや、誰かいるね」

「初めまして。チロと申します」

「チロはね……」

「わたしの紹介は後回しにして勝智朗さんの話を聞きましょう」

「では、早速。京都の高野山にいるのだけど。ちょっと変わっているというか不遇というか……」

「変わっているのはここの皆だよ。で、どんな人?」

「一言でいうと生物学の異端児かな?元は京都大学で教鞭をとっていたのだけど、発表する論文の全てがまるで学会の主流派を否定するような、けなすような内容でとても科学とは呼べない代物でね。論理7分に感性3分の論文でついには学会を締め出された人なのだよ」

「へ~面白いね。でもどうして高野山にいるの?」

「命の源を精神修養で捜しているというのが、本人の意地というか頑なな決意みたいだよ」

「あ、歯車が噛み合った。チロはこのこと知っていたの?」

「いいえ、全く知りませんでした。何かが形成される予兆なのでしょう。予兆ではなく、経過かもしれませんね。脈に入ったのかもしれません」

「脈?」

「そのことは、おいおい説明します。流れはわれらのものかもしれないということですよ」

「わかった。で、勝兄はどうやってその人とコンタクトをとったの?」

「その人も別の精神の受け皿を持っていたのだ。そこで“こんにちは”といったら半分は驚いていたけど、半分は喜んでいたね。研究が大幅に進展するって」

「その人に会える?」

「もちろん、そのために戻ってきたのだから。早速高野山に行く準備をしよう」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ