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脈流  作者: 智路
5 銀河の旅人
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第12話 銀河の中央

第12話 銀河の中央

 太陽系の属する銀河系(天の川銀河)は棒渦巻銀河に分類されて形状は円盤型をしている。天の川銀河の半径は4~5万光年で、中央部には銀河バルジと呼ばれる膨らみが存在する。銀河バルジの半径は約7,500光年であり、中央部には超大質量のブラックホールが存在すると思われる。銀河バルジの厚さは約15,000光年で、円盤の周縁部での厚さは約1,000光年となる。天の川銀河は銀河バルジから伸びたいくつかの渦状腕で構成されている。代表的な渦状腕は4つ存在し、太陽系はその1つのオリオン腕に属する。渦状腕は銀河バルジからアーク(円弧)状に伸びており、直線距離では太陽系から銀河バルジまで約22,000光年であるが、このアークを辿ると中心部まで約40,000光年を要する。渦状腕同士の距離は6,000~8,000光年であるが、渦状腕から渦状腕へ移動可能なのかわかっていない。

「おれの名はサンガ。到着を心待ちにしていたよ」

 突然、グリーンの脈流通信機Ι型に声が響いた。

「お前は誰だ。何故ここにいる。武器を捨てておとなしく出て来い」

 ラーはかなり取り乱していた。チロからこの恒星系には生命体はおろか有機物すら存在しないと聞いていたのに、どう考えても誰かのいたずらとも思えないし、脈流に接触すらしてきている。

「チロという名前に覚えはありますか?」

 これに割り込んできたのはアバであった。アバは、この声の持ち主はチロに近い存在であると判断していた。それ以外には考えられない声だったのである。

「ああそうですか。チロさんの眷属でしたか。わたしはチロさんの甥孫になります。つまり、チロさんの対姉弟から2世代目の精神体を所有しています」

「なるほど。しかし、どうしてここへ?」

 現在グリーンの搭乗員の中で冷静に対処できるのはアバだけであった。

「話せば長くなるのですが……」

 長くなっても困るので要約すると、オリオン腕の付け根(銀河バルジの外縁部)に数十の恒星系を従えた帝国国家が存在する。この帝国の有史は20万年ほど前である。ここに生命体を発生させたのは、チロの従兄弟にあたるセイトであった。セイトが発生させた生命体の成長は異常に早かった(比べるものがないからセイトは知らない)。様々な経緯で「これは」と思う生命体が誕生したのが、帝国の祖先である。生命体の成長が異常に早かった理由は銀河中央部に存在する超大質量のブラックホールの影響と思われる。セイトは精神体であるが、銀河バルジの中央部に行ったことがない。行けないのである。おそらく巨大な脈流が存在していてセイトを拒むのだと思われる。数度挑戦したが、その度に混乱を抑えて戻るセイトであった。つまり、超大質量のブラックホールの正体を誰も知らないことになる。

 チロが3世代目の精神体であるからサンガは5世代目となる。このためサンガの過去の記憶は薄い。はっきりと覚えているのは、帝国の起源である20万年ほど前に王位継承権3位の皇子として生まれてからである。本来5世代目であれば、精神体を維持できるはずであるが、何故か肉体を持ってしまった。セイトからはいくつかのことを教えられて帝国へ深く関与することを禁じられていた。帝国は着実に文明を発展させて恒星間航行を成功させた。そのころに国王の性格が変貌してしまった。それまでは温和で賢帝と呼ばれた国王であったが、それ以来、狂王と呼ばれるようになる。国民に過酷なまでの重労働を課し、逆らう者の命は容赦なく奪っていった。この結果巨大な帝国を築くことになる。これに嫌気をさしたサンガはオリオン腕に旅に出た。その途中で人工のものと思われる飛来物体をとらえ接触を試みるためにグリーン号の着陸する惑星で待っていたのである。ちなみにサンガの飛行艇は2人乗りに一人で搭乗していて、その最大出力は10,000emaxで1年に4,000光年を移動できる。巡航出力は3,000ecruで1年に約1,300光年移動可能となる。


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