第11話 人影
第11話 人影
ラー:「あれが目的の惑星か?」
リー:「そのようですね」
ラー:「名前をつけよう」
リー:「名前?そうですね。名前がありませんでしたね」
ラー:「ラー星とつけたいところだが、ファースト・グリーン星で妥協しないか?」
リー:「グリーン号の最初の着陸星ですか。単純ですが、いい名前です」
プロキシマ・ケンタウリは、ケンタウルス座α星を構成する三重連星の1つである。主星をリギルと呼び、第1伴星をトリマンと呼ぶ。第2伴星がプロキシマ・ケンタウリである。リギルとトリマンは太陽と同じ種別の矮星であり、プロキシマ・ケンタウリは赤色矮星である。赤色矮星は太陽より質量の小さい恒星で、プロキシマ・ケンタウリは太陽の約11%の質量を持つ。通常、惑星自体は明るさを持たないので恒星の影になり地球上からの発見は困難とされる。ましてや惑星の元素組成などはほとんどわからない。
着陸の準備をしながらその惑星に近づいたグリーン号であったが、
ラー:「なんだ!これは……」
チロから聞いた知識で木星の10倍ほどあることは知っていた。しかし、この星は主成分が水素のガス惑星であったので着陸は不可能であった。
リー:「おそらく第3伴星になりそこねた星なのでしょうね」
ラー:「名前は取り消しだ。他の惑星を探せ」
脈流通信機Ι型は指向性の波で通信を行うため、レーダーへの応用は困難を極めた。それでも1光年以内なら月くらいの大きさの星なら発見できるレーダーをテストのため装備してきていた。それが今回役に立つかもしれない。
リー:「発見しました。ここから約0.2光年離れたトリマンに地球規模と思われる惑星があります」
ラー:「よし、そこへ行け」
グリーン号は最大速度で2週間要しその惑星に辿りついた。
ラー:「ここなら着陸できる」
ほぼ地球と同じ質量のその惑星には重力制御ジャイロにほとんど負荷をかけずに着陸できた。
ラー:「観測機2機と地上観測車12台で観測を開始するぞ」
リー:「わたしは残ってもう少し他に惑星があるか調べて見ます。あと2惑星くらいあるかもしれません」
確かにリーの言うとおりに地球規模の惑星が2つ見つかった。後にこの3惑星がグリーン・ベースと呼ばれ大宇宙への進出拠点となるのであった。リーが搭乗している天文学者に聞いたところ、推測ではここの3つの恒星系とあの木星型の惑星を含めて、大きな恒星となれず矮星や赤色矮星、巨大な惑星に分かれてしまったと思われるとのことである。大宇宙にハビタブルゾーン(生命の誕生可能領域)が、どの程度存在するかわからないが、ここのように大恒星になりそこねたような恒星系では生命は誕生も生育も不可能のように思えた。
その時、1台の地上観測車から
「人影が見えます。動いています」と報告が入った。