第10話 24番目のアミノ酸
第10話 24番目のアミノ酸
チロの作った24番目のアミノ酸は、人体に対し凶悪な代物であった。そのアミノ酸は、免疫の向上を目的として作られたが、そのアミノ酸を含む有機化合物は攻撃性が強く、自己の細胞までも攻撃するのであった。結果、人体の細胞はその有機化合物以外は死滅することになり今では封印されたアミノ酸となっている。
血液は造血幹細胞を親に持つ。幹細胞は一般的に永久不滅の細胞とされ、その理由は細胞分裂のとき、自己と娘の細胞に分裂するからである。分裂しても自己が残るのであるからいつまでたっても変化しないという意味の永久不滅となる。造血幹細胞は種々の血液に分化する機能を持っている。つまり、娘細胞は必要に応じていく種類もの血液に分化可能なのである。
ここでは白血球とリンパ球について触れたい。リンパ球も白血球の中に存在するが、免疫について考えるとき、一般的には白血球とリンパ球を分けることとなる。何故なら、白血球は先天性の自然免疫であり、リンパ球は後天性の獲得免疫だからである。白血球は生まれながらに免疫機能を持ち、体内に侵入してきた細菌などを攻撃する。リンパ球は細菌に一度侵入されて体内が侵された時に学習し免疫を獲得する。つまり同じ細菌が2度目に侵入してきたときには攻撃できるのである。ならば全て自然免疫であれば都合がよいようだが、自然免疫は自然界に存在する予測可能(誰が予測するのかわからないが)な細菌のみを攻撃できる。つまり、未知の細菌に自然免疫は太刀打ちできないのである。その点、獲得免疫は1度の攻撃で学習し、2度目の攻撃には未知の細菌にも対応できる仕組みになっている。
獲得免疫には問題があり、学習にはプロセスが必要である。プロセスが必要ということは時間が必要ということになるため、学習中に体内が修復不可能なまでに侵されてしまえば、免疫機構は働かないことになる。
さて、免疫機構はどのようにして細菌を見つけているのであろうか。体細胞と異なる細胞または異物に対し攻撃するようであるが、その機序がよくわからないため、この物語では独自に機序を構築したい。原子や電子を初めとした物質はセンサーを持っているものとしたい。この物語の途中でこの世界の最小物質を空間線とした。空間線は両端に+か-の極を持ち、空間線もその極の組み合わせから+(斥力)か-(引力)の属性を持つ。この空間線が接近すると空間線に振動が起こり波動を放つようになる。この波動の集合体を脈と位置づけ集合体の振る舞いを脈流と呼んでいる。物質のセンサーはこの脈を感知する役割を持つ。原子や電子は空間線の集合パターンの産物であるから、波動は複雑に干渉し合って独自の波動パターンを持つことになる。分子や高分子化合物にも同じことがいえて、同じ(完全に同じではなく似た集合パターンとなる)分子は同じ波動パターンを持つ。
このようにして、物質は結合するときやしないときを判断しているのである。例えば、電子は波動パターンによって相手の電荷の+-を知ることになる。この世界における反応のプロセスは相手の情報を知ることから始まり、判断→反応という手順を踏んでいる。ところが、この知る+判断と言うプロセスをプリフェッチする反応が存在する。プリフェッチとは先読み(予測)のことで、この反応を触媒反応と呼んでいる。高分子になればなるほど反応速度は速くなるため、生体では酵素として使われることが多い。
24番目のアミノ酸はこのプリフェッチ速度があまりに速いため、誤動作を起こしたり、過剰反応を起こしたりするので攻撃性が高いとみなされている。