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脈流  作者: 智路
4 シンクロニシティ
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第7話 概念の取得

第7話 概念の取得

 人の思考には、3つの状態がある。自由状態、空(停止)状態、集中(活発)状態である。通常、これらの状態は遷移してどれかの状態になるのではなく、混在した形で思考の中に存在する。思考が脳と言う物質を介在するとき、これらの状態のどれかを100%にするのは非常に困難(現実的には無理)と言われている。人が努力や修行でどれかを70~80%の状態にすると思考能力は飛躍的に上がる。また、各状態に刺激を与えるように急激に変化させると上がるとも言われている。幹卵器官は神経細胞を新たに生成するが、思考をソフトとするとこれはハード的な器官である。状態変化はソフトの一部であり、思考能力に影響を与える。

 この3つの状態に意識を加えたものが、理性と呼ばれる思考部分となる。感情という働きも別に存在するが、ここでは理性についてだけ述べることとする。自由状態は、意識の働きが弱い思考状態だが、物理的にも精神的にも思考活動は行っている。空状態とは、意識も思考活動も活動を行っていない状態である。集中状態とは、意識に従って思考活動を活発にさせた状態である。

 桃九は先天的に集中状態の割合が高かった。最も苦手だったのは自由状態にすることで、これは必要に迫られて後天的に割合を高めるように努力した。空状態は世間の人並みであった。それが、円光との修行により集中状態の上限を88%、空状態の上限を72%、自由状態を58%まで高めることができるようになっていた(やはり自由状態は苦手のようである)。

 空状態を無意識、他の2つを意識のある状態と表現することもあるが、桃九はこれを瞬時に切り替えることができた。意識がある状態では自由状態と集中状態を瞬時に切り替えることができた。つまり、空状態⇔自由状態⇔集中状態という関係式となり、3つの状態の割合を瞬時に変えることは難しいようであった。どれかの割合を高めることによって他の割合を変化させているようである。円光といえども3つの状態の割合を瞬時に変えることは難しいと思われた。

 修行によって得たのはそれだけでなく、幹卵器官を活発化させることにより神経細胞を新たに生成させることができるようになっていた。これにより部分的に分散的思考ができるようになっている。これをコンピュータに例えると、複数のコンピュータをネットワークで繋ぎ処理を分散化させる技術とCPUのパイプライン処理技術を合わせた技術と同じである。そもそも神経細胞1つ1つは独立して処理を行うため脳は並列処理を得意としている。その入力と出力を制御するのが思考であって、人は誰でもが分散的思考を行っている。桃九の場合は、それを意識的に行えて、神経細胞が増殖する分だけハードの性能も上がっているとみることができる。

 受感部の評価を桃九はまだチロから受けていない。修行によって高まったという評価は受けたが、不老となるに十分なのかはわからなかった。桃九もすでに70歳近くになっている。確かに見かけは若々しく見えるから不老に近いのであろうが、確かなことはチロから聞くまではわからない。

 さて、チロルと格闘状態の桃九であったが、無闇に格闘することを止めた。修行で会得した成果を試すのは今だと思ったのである。桃九は思考状態を自由にして次に空にした。さらに集中状態にしてからチロルに向かった。これを何度も繰り返す中に状態の変化速度が速まってきた。やがて、チロルが何を言っているのか理解できるようになりチロルの持つ概念を得ることができたのであった。


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