第2話 原因不明
第2話 原因不明
冥王星でコロニーの建設に携わっていた人数は1000人に満たなく、新たに事故の調査に加わった人数も数十人であった。つまり、冥王星から1000人ほどの人間が半年の間に消えてしまったことになる。事件の調査の進展はなく、海王星の開発本部では冥王星への入星を禁止することにした。この事件でわかっていることを地球に報告し、地球の上層部の判断を仰ぐことになったのである。
コロニーの建設は太陽系開発機構が行っており、その組織の上層部はリ・ムー島に存在した。この組織は入植部・建設部・資源部・技術部・調査部・総務部にわかれていて、海王星からの報告は総務部に入った。しかし、総務部では問題を解決する部門を持っておらず、問題は調査部に送られることになる。
調査部を率いているのはマルコ・ポーロであった。現在、リ・ムー島に残っているマルコ・ポーロの補佐役はコロンブスしかおらず、マルコ・ポーロはコロンブスに相談することになる。マルコ・ポーロはコロンブスを自室に呼んで、
「この報告を見たか?」
「ああ、さっき見たばかりだが」
「どう思う?」
「1000もの人が消滅するなど大きな事件だな。本来なら、早急に調査隊を送り込むところだが、わからないことが多すぎてリスクが高すぎる」
「そうだな。技術部に見解を求めようと思っている。少しでも多くの情報を得て、2次的な事故を防ぐことにしよう」
こうして問題は技術部にまわされたが、事件の原因に繋がるものは得られなかった。コロニーなど地球外に持ち出した機器や機材には、チップが埋め込まれており、刻々とメカ自身の状態を各拠点を経由しながら技術部に集まることになっている。冥王星では今も建設ロボットが与えられた命令を正常に行っていた。故障のログは1つも送られてきていなかったのだ。ロボットなど人から命令を受けて稼動するメカは、1年の間、人からあらたに命令を受け取らないと停止する機構になっているから、後半年くらいは黙々と稼動しているはずなのである。結局この問題は、マ・ムー島とイ・ムー島に送られることになった。
マ・ムー島は研究と教育の島であり、ソクラテスがその島のトップであった。研究部門のトップはガリレオで教育部門のトップはプラトンであった。ソクラテスはガリレオを呼んでこの問題についての見解を聞いた。
「どのように思うか?」
「はい。この事件の原因は可能性があり過ぎて何も即答できることがありません。各部署に検討することを伝えましょう」
「事は急を要するのだ。1000人の人が行方不明なのだからな」
「では、2週間という期限をもうけましょう」
「まあ、妥当なところかな。マルコ・ポーロにはそう伝えておこう」