表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脈流  作者: 智路
1 プロローグ
5/114

第4話 桃の夢

第4話 桃の夢

「最近、よく同じ夢をみるな」

 夢の内容は、なにかに身体をまさぐられているような感じである。まるで何かを調べているような感じがするのである。それも違う自分が自分を調べているようなのである。

その感覚は幼いときに体験した感覚と少し違うが、桃九は己の身体のいくつかの精神が同居しているのではないかとよく感じたものだ。多重人格という精神疾患があるが、それとは違って同時に頭の中に複数の精神が混交して存在し、会話すらした記憶がある。滅多にひかない風邪をひいたときなど「ちょっと待っていろ」といって直してくれたときもある。最も鮮明な記憶は幼くして亡くなった次兄の勝智朗との会話である。勝智朗は具体的な知識を教えてくれたわけではないが「お前にはできる。明日にはその問題が解決しているはずだ」といって励ましてくれた。すると本当に理解に困っていた問題が嘘のように解けたものだった。征四郎は勝智朗と数年暮らしたことがあって、その印象は自分より遥かに頭の出来がよいというものだった。征四郎は勝智朗に負けまいと問答を仕掛けるのだが、いつもすんなりと納得されて負けた気もしなかったという。

 よく思い出してみると桃九が自暴自棄になっているときも、さりげなく励まして支えてくれていたのは勝智朗だったのかもしれない。その頃の記憶はおぼろにしかないが、勝智朗を感じていたような気がする。生存していた勝智朗を桃九は知らないが、兄が自分の頭の中に同居していると思えば、心強い気がするのであった。しかし、今回の感覚は勝智朗のものとは異なるようである。なにかを暗示しているのかと考えてみてもよくわからない。そのことは忘れたことにしてとりあえず、長兄に医学部と生物関連の学部、獣医学部の増設を具申してみようと思うだけであった。

 長兄に話を持っていくと、

「その話は進んでおる。お前には直接関係ないかもしれないが、医師免許を専門科ごとに認可する法案を国会に持っていく根回しをしているところだ。そうすれば、医師を目指す学生が増えていいことばかりじゃが、医学会がなかなかうんといわない」

 長女の絹子は与党の有力者の元に嫁いでいる。その線から医師免許の見直しをして、例えば産婦人科専門医や小児科専門医の医師免許を取得できるようにしようとしているのであった。だが、これは桃九とはあまり縁のない話のようである。

 桃九は時折、医学生などと会話をするようにしている。これは人材発掘が目的であるが、今のところ目ぼしい人材には出会っていない。桃九は僅かな会話の中に相手の潜在能力を見出す特技を持っていた。故に桃九のアンテナに反応があれば、片腕として有用間違いなしだと思われるが、そう簡単には見つからないようである。

 数日後、桃九に話しかけてくるものがあった。最初はいつもの夢かと思っていたが、自分が起きているのを確認すると夢ではないことがわかった。

「ようやく、探し当てました。わたしの力を継ぐものはあなたです」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ