第12話 地球共和国
第12話 地球共和国
地球共和国を建設したチロは、内政指導のトップに耶律楚材を起用し、監査部、情報部、教育部にも超人類を幾人か起用した。これが人類を陰から支える4トップとなるが、今までのように超人類が人類を支配するという形態をチロは許していない。超人類は長年生きてきた経験を人類に与えるだけとなる。監査部は地球全体の内政の監査結果をチロに報告する。情報部も内政や自然の情報をチロに報告する。教育部は人類の進化のための制度を整備し、有用な人間を育てることを目的としていた。こうして超人類の支配を免れた人類は地球に超人類と並び立つこととなった。
ムー大陸(大陸というより諸島なのだが)の本島であるタ・ムー島には耶律楚材をはじめとした地球の内政機関の中枢がおかれ、サ・ムー島には超人類の住居が点在していた。マ・ムー島には各種の研究施設が存在し、超人類の研究者と教育者が運営を行っていた。本島の情報部や教育部から優れた人類の推薦を受けると、人類はこの島の教育者たちの評価によってこの島で研究することや教育を受けることができた。イ・ムー島にはエネルギーの開発・研究施設が存在し、海底火山を縫うように地下施設が建設されていた。そして、リ・ムー島は宇宙開発の拠点となっていた。
チロは人類が宇宙を知ることが大切だと考え、リ・ムー島では惑星や小天体の調査や開発を行うための準備が着々と進められていた。桃九はマ・ムー島で研究に打ち込んでいるが、利助はチロのお供で方々を出歩くことが多かった。何故なら、受感部の分枝を持つものが今のところ、桃九と利助しか存在しないので、いわば利助はチロと人類の通訳のような役割をはたしている。勝智朗は、人類の中から受感部の分枝を持つものを探していて、これが見つかれば利助は研究に打ち込めることになる。尚、25番目のアミノ酸から生成された酵素遺伝子の投与を受けた人類はまだ存在しない。桃九といえども許されていないのである。円光、サエ、精太郎はマ・ムー島に住んで修行を重ねることになっている。
イ・ムー島では、エネルギーの研究や開発が行われている。チロは当面の目標として太陽系を自由に飛びまわれる宇宙船の製造をあげている。現在の科学技術で太陽系を自由に飛び回ることは困難であり、地球の大気圏を飛び出す宇宙船の製造は1つの大きなプロジェクトとなっている。無人の観測機を火星まで飛ばすための旅程は6ヶ月以上の月日をようし、現在の科学技術での宇宙開発はまだ始まったばかりといえるのかもしれない。使用している燃料は液体酸素や液体水素などいくつかあるが、チロは核融合炉によるエンジンの開発を薦めている。核融合炉によるエンジンならば、火星まで辿りつく為に2~3時間しかようしないという。もっとも離発着の時間が加味されるため実際の時間はもう少しかかるのだが。
核反応施設には、いくつかの問題がある。しかもその問題がどのくらい深刻なのかさえわかっていないものもある。例えば、放射線の害について生物学的、医学的に解明されていることを筆者はほとんど知らない。報道などで取り上げられるのは、統計的な放射線と癌発生の相対関係に基づいた情報で、放射線によって被害を受けた人も被害を与えた人も放射線による影響の実態を知らないのではないかと思われる。確かに、統計によれば因果関係は明らかなようであり、筆者も原子力発電所の稼動には反対の立場をとっている。そして、原爆などはなにをかいわんやというところである。