第11話 +と-の社会
第11話 +と-の社会
前話でチロが多数決は認めないとか小規模な都市を集団の単位とするとか、そして、共和制にせよと言った理由を簡単に説明したい。
1つは多数決を否定した理由であるが、個々人が1票を持っているとき、賛成か反対に投票するものとする。投票者の数をNとし、賛成票をn,反対票をmとする。すると当然ながらN=n+mとなる(棄権票は考えないこととする)。そして、賛成票を集合P={p1,p2,p3…pn}とし、反対票を集合N={n1,n2,n3…nm}としたとき、N×(N-1)/2個の対人関係が一意に存在する。賛成票を+とし、反対票を-とする。賛成票(+)同士、反対票(-)同士のとき、対人関係を+とし、異なる票を投じた者同士の対人関係を-とすると、必ず対人関係-の数が多くなる。対人関係-が多くなると、社会環境が悪化していくと考えたとき、賛成票と反対票の比率がいくつくらいで対人関係の+-が等しくなるか計算してみたい。尚、この考え方はプロローグにある神の子がこの世界に投じた源根子と同じである。
さて、10人の投票者がいて賛成票5反対票5のとき、n=m=5であるから、対人関係+はn×(n-1)/2+m×(m-1)/2より20となる。対人関係-はn×mだから25となり、賛成反対同数のとき対人関係-が多くなる。賛成票6反対票4のときは、対人関係+は21、対人関係-は24となり賛成票を採用すると対人関係は悪化することになる。賛成票7反対票3のときは、対人関係+は24、対人関係-は21となり、ようやく対人関係は+の方が多くなる。
上述の内容はそうであるから多数決はいけないと主張しているのではなく、考え方として点ではなく線を対象に事象を見ていくと点とは異なる結果がでることを示したかっただけである。ここで点は個人の票で線は対人関係としている。今後、この考え方が物語の主要な要素となっていく。尚、チロは多数決の否定派のようである。
また、小規模な都市を集団の単位とするとしたのは、上述の内容は簡単な組み合わせの考え方で、都市を構成する人数を増やすと膨大な対人関係が発生し、社会環境が悪化しやすいとのチロの主張からである。同じように都市が集まって上位の都市を形成するときも少ない都市の集合体にせよとチロは主張している。
共和制にしたのは特別な意味はなく、望む政体は民主的共和制であるから民主主義を否定しているのではない。ましてやこの物語は政治とは無縁のものであるから大切なのは登場人物が活躍できる場を作ることである。ということで、共和制は共に和する政体とし、生活に関する政治には触れないこととする。共に和するのは、人類や超人類、これから登場する進化型人類や新人類となる。彼らは政体の中で専門の部署を持ち、一般の政体中枢とは独立した位置を持つことになる。
この物語の本質は、各種の事象を“組み合わせ”の考え方によって考察していくことである。チロや桃九はその道先案内人として存在しており、これから起きる問題を解決していくことになる。もし、こんなことが起きたらというSF的な観点で問題は発生していくが、筆者の勝手な都合で筆者の興味のある問題を話題とするかもしれないので容赦願いたい。
この章では、現在の人類の一部が進化し超人類と共に部隊を編成する様子を描くことを予定している。第1章と第2章はプロローグ的な話題でこの章は下準備となり、次章から本章となるが、面白い物語であることは保証の限りではない。