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脈流  作者: 智路
3 人類の進化
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第10話 人類の和

第10話 人類の和

 チロは、ムー大陸を再浮上させ超人類の拠点とすることを決めた。ムー大陸は日本とミッドウェイ諸島の中間に位置し、総面積は四国の4倍ほどであり、5つの島から構成されていた。ムー大陸は巨大な海底火山の一部であり、本島はタ・ムーと呼ばれた。

 ムー大陸に超人類の全てを呼び集めたチロは、共和制のもとに超人類の結束を求めた。見返りは不死に近い効用を持つ25番目のアミノ酸の投与であった。「チロはわれ等を抹殺つもりではないか」と投与の目的を疑うものも中にはいたが、よくよく考え見るとそんな面倒なことをしなくともチロには超人類を容易く抹殺できるのだからと全ての超人類は結束と投与を受け入れることになった。

 超人類がもっとも恐れるのは、死であった。不老の身であるが故に極度に死を恐れるようになったのだ。通常の人はいずれ死ぬのだからと半ば死を受け入れているのだが、不老の超人類は事故や争いに巻き込まれない限り死は無縁のものだったから、事故や争いを避けるためにも例外を除いて超人類間の結びつきは少なかった。

 それが、突然チロに呼び出されて結束せよと迫られたのだから、半ば死を受け入れるしかない状況となってしまったのかとさえ思う者が多かった。しかし、チロは不死の身体を与えてくれるというから、超人類はチロの目的が何なのかよくわからない状態となってしまったのである。

 超人類は現在347人ほどであるが、チロはこれを組織化したいと思ったのである。超人類が1つに組織化されれば、実質的に支配下にある通常の人類も1つの組織になるはずだと考えたのである。ラーを元首としモーセとチンギス・ハンを含む13人を執行委員とし、全ての決定を合議制によって法と人類の社会体制の整備を始めることになった。多数決による決定は認めず、必ず皆が納得できるような決定をチロは求めていた。そもそも、超人類には金銭を含む物質に対する欲がなく、持っているのは自分の安全を守るといういわば消極的な欲だけであったが、その安全が、チロによってほとんど保証されたのだから、地球における人類の様々な整備は着々と進むことになる(つまり損得勘定を超人類はしないのである)。

 大国は解体されて地球上には小さな都市が林立し、都市は地形上で隣接していなくても集合体を形成していった。集合体はさらに大きな集合体となり最終的には地球上で国家と呼べる存在は1つだけが残った。

 このように陰から人類を支配するのは、超人類たちであったが、近い将来に人類の中から超人類を超える者がでてくることとなる。もっとも、超えるとはチロの望みを叶える可能性のある者という意味においてだが。そもそも、超人類の能力の多くは、人類の科学技術を用いれば実現させることが可能で、ただその力を個人が持っているという意味において超人類の“超”がついているのである。

 ところで、25番目のアミノ酸の説明が十分でなかったと思っている。そのアミノ酸は、いくつかの酵素を生成するために用いられた。1つは細胞分裂の速度を速める酵素であり、1つは新陳代謝を促進させる酵素である。細胞分裂によって娘細胞となった細胞は万能細胞の1種の幹細胞となり、人体の再生を容易にさせた。万能細胞であるからテロメアの影響で娘細胞が変異することもなく、若々しい細胞を得ることになる。トカゲなどの自切の目的とは異なり、新生のための再生といえるのかもしれない。


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