第7話 アミノ酸とたんぱく質
第7話 アミノ酸とたんぱく質
前話によって筆者の所有する巡回セールスマン問題の解法を放出してしまったことになるが、この解法は数年前に捨てたはずのものであった。何故なら、この解法をプログラミングしようとすると体調に異常をきたして実生活が困難に近くなったためである。それが何故こういうかたちで蘇ったかというときっかけは数ヶ月前に起こった閃きであった。よくよく考えてみると大した閃きでもないのだが、最近までこの世界の一部を語る閃きではないかと思っていたのである。
その閃きとは、完全グラフにおいて点に同数の+と-の属性を与えると点は+-が同数となるが、線においては、-の方が必ず多くなるというものであった。尚、両端が異符号のとき線の属性を-とし、同符号のとき+とした。4点で簡単にテストできてイメージも湧くと思われるので読者の方も興味があれば試してみてはいかがであろうか。
何故点においては同数の符号が、線になると法則性を持って偏ることになるのか考えた時、創発と結びつきが生じたのである。単純なものでもかたちを変えるだけでこのような性質を持つのだから、複雑なものにおいては尚更であろうと考えた。この考えを誰かに言いたくてその手法を考えた結果、こうして小説というかたちで語ることができている。ハードSFは小説ではないとする批判もあるようだが、今のところ誰にも迷惑をかけていないようであるから容赦願いたい。
さて、アミノ酸について筆者は多くの知識を有していない。そこで簡単にネットで調べてみると人体を構成するアミノ酸は20種類存在して、これをα-アミノ酸と呼ぶようである。そして、α-アミノ酸を指すコード群がDNAとなるようである。たんぱく質を構成するアミノ酸は22種類発見されており、α-アミノ酸より2種類多い。たんぱく質を構成しないアミノ酸も数種類発見されているようであるが、この小説ではチロは23番目のアミノ酸から特殊アミノ酸として活用させている。チロは次話以降に再登場するので、ここではアミノ酸とたんぱく質についてもう少し触れたいと思う。アミノ酸からたんぱく質が合成されるとき、その過程で一次構造から四次構造まで変化するようである。人類はこの構造の解明に取り組み始めたばかりのようで完全に真性の情報は得られないのではないかと思っている。
この小説では、一次構造に焦点をあてたいと考えている。1次構造はアミノ酸を複数個繋げたひも状のものだとイメージしているが、繋がるアミノ酸の数の少ないものをペプチド、多いものをポリペプチドと呼ぶようである。しかしながら、ペプチド、ポリペプチド、たんぱく質の間には厳密な境界線はないようである。ついでながら、人類はなんらかの機能を有するたんぱく質の合成には成功していないことを述べておきたい。
ここでα-アミノ酸を複数個繋げたときの組み合わせ数を計算しておきたい。N個繋げるとするとα-アミノ酸は20種類であるから20のN乗数の組み合わせが存在することになる。その膨大な組み合わせ数の中から機能を有するたんぱく質はほんの一握りの数しか発見されていない(突然ながら、ついでを述べておくと酵素もたんぱく質の一種である)。桃九は利助にこの膨大なアミノ酸の組み合わせ数の中から機能を有するたんぱく質を見つけ出すことを求めているのである。これは筆者の取り組みでもあり、おそらくこの小説が完結を迎えてもなんらの進展もないことが予想される。